ねぇ、帰りにアレ見に行こうよ
アレってこないだいってたイルミのこと?
うん、去年も見たけどきれいだったよね
いこういこう
辰雄は留美子の手を取るとそのままポケットに入れた
もう流行らなくなってしまったが
「いまあい」をふたりで見てからずっとそうしている
そうするのが当たり前のように留美子も手を離さない
東急ハンズで探したいものがあるからと
出かけたついでに、ひとつ隣の駅まで足をのばした
まだ正月の三日ということもあり
朝から寒波の風が冷たく、広場に人影は少なかった
公園でも河原の土手でも墓地でも港でも、どこでもいいんだ
と留美子は言った
ふたりで同じ景色を見て、何気ない会話をし
ふざけ合ったり、走ったり、手を握ったり
肩を抱いてふとした瞬間にキスしたり、
そんなことがふたりだけの思い出になっていくんだね
と留美子は言った
そんな時間が全部宝物なんだと辰雄も思った
お月様が出てる!あれはイルミネーションじゃなかったんだね
何万キロも離れたところで光ってるイルミさ
これは魔法の箱、きっと子どもを呼び寄せるから見てて
ほら入ったでしょう♪