僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

あな

2014年11月07日 | ケータイ小説「パトスと…」






小池君は穴を掘るのが得意だった


いつだって穴を掘っていた
砂場で遊ぶときも
芋掘り遠足の時も
先生の話を聞くときも




授業中、算数の先生が怒鳴った
ヒゲだるまが怒ると恐い
顔だけ写真に撮ったならきっと笑って見えるだろう

だが鼻の穴と
チョークの粉を払いながらこすり合わせる指が明らかに切れている感情を表している


「おい小池、オマエ人の話いつも聞いてないな」

みんな凍り付いて小池君の方を見た




「オマエの父ちゃんにこないだ会ったけどな、よぼよぼしてたなぁ、大丈夫か?」

隣の席にいた辰雄は、いつもきれいな穴を掘る小池君の右手が、ぎゅっと握られるのを見た




小池君の穴は芸術的だ
砂は砂なりの硬さで
土は土の硬さで
周りを固めながら掘り進んでいく

今思えば、現在のシールド工法を経験的に体得していたのだろう


辰雄は小池君の掘り出した砂を少し離れた場所に運び山にしていきながら
どうやったらあんなに素敵な穴が掘れるのか少しでも覚えようと
じっと見つめていた



「オマエは何やってもダメだな」

ヒゲだるまがそういった時、小池君の手のひらが何かをすくい取るようにゆっくりと動いた



暑い夏の日
掘り出される砂は湿っていて、ひんやりと冷たかった
小池君は「あった!」と言って辰雄に笑いかけた
「ほんと?」と辰雄は穴をのぞき込んだ



「どうなんだよおい、小池」

ヒゲだるまの唇がまくれ上がった







つづく

























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