おやままさおの部屋

阿蘇の大自然の中でゆっくりのんびりセカンドライフ

森村誠一の『エンドレスピーク』他

2011年01月17日 15時39分23秒 | 日記
久々の体重記録
病院での体重=82.35kgでした!ほんのちょっぴり減ったくらい。
昨日、家で計ると81.6kgでしたので、入院生活での規則正しい食事、禁酒で久々の81台を記録。早く80kgを切ること、これは医者の厳しいミッションなのだ。

気になっていた血圧は病院では平均すると120ー80くらいで落ち着いていた。精神的に動揺しやすいのか、入院した直後は下が106あったので心配したがー

               

森村誠一については以前から好きな作家であり、彼が心血注いで著した『悪魔の飽食』、『続悪魔のー』を読んで陸軍関東軍石井部隊(731部隊)について注目していた。現職時代には高校文化祭の時、自分のクラスで取り組んだテーマ「戦後50年ー戦争と平和展」の中で、この731部隊についても学習し調査したものを発表したし、その後自分の書いた研究論文(『反転の思想ー生命というもの』)のなかでも書いている。

現首相の菅氏が厚生大臣時代に薬害エイズの被害者に対して国の責任者として、謝罪したことでも知られているが、この事件は当時、血友病患者の治療のために、アメリカから非加熱製剤の導入を推し進めた責任者(厚生省エイズ研究班長)というのが阿部英であった。この男は東大の医学部を出ている医者であり、得意な履歴として戦時中海軍軍医大尉として731の人体実験に関わっていたのだ。
しかも、非加熱製剤を取り扱った製薬会社『ミドリ十字』という会社は厚生省からの天下り先であった。そして「ミドリー」を作った初代社長内藤良一が731部隊の防疫研究に当たっていたという。731は戦争でたいへんな過ちを犯している。人体実験の「材料」として中国人、ロシア人、朝鮮人を「マルタ」と称し3000人という実験の犠牲者を出しているのだ。戦争でよくドイツナチスのユダヤ人虐殺の話はよく知られているが、足許にこんな酷い話があることはあまり知られていない。政治、官僚、財界の癒着の典型がここにある。

石井部隊についてはもっと知りたいと思っている。あり得ないような人体実験による研究成果をもって戦後米軍側と秘密裏に交渉して、戦犯を免れ戦後医学会、政界、製薬などの産業界に過去を隠して入り込みトップにのし上がっていった石井をはじめ731の上層部。知りたい、知らなければならない。それが二度と過ちを犯さない第一歩になるはずだ。

さて森村の『エンドレスピークーはるかな嶺』はとても面白かった。ストーリーは戦前風雲急を告げている昭和16年、東京の大学で知り合った5人の若者が槍ヶ岳に登る。その時頂上で記念の石を拾う。その5個の石を戦争が終わっていつか必ず亦槍ヶ岳に帰ってきて一緒に返そうと約束する。この5人の若者が主人公である。日本人の3人の男女とアメリカ人、中国人の五人は戦争で厳しい立場に立たされていくが、それぞれの立場で精一杯に戦争を生き抜いていく。一人は戦闘機乗りの撃墜王、一人は陸軍の空挺部隊の兵士、対米謀略放送のアナウンサー、中国の対日工作員、そして米軍日本語通訳。
一人ひとりの戦争体験が生々しく語られていく。その中で、5人の中の一人の中国人は日本軍に捕まって731送りこまれ、戦争が終わった時、解放されないで残虐な人体実験の隠蔽のために収容されていた捕虜全員殺されてしまう。

そして、アナウンサーも長崎の原爆で被爆。沖縄戦もこの物語の重要な意味を持つ。

冷酷無比、人と人とのつながりを次々に切断していく愚劣な戦争のなかで、5人の友情は色褪せずに時を乗り越えていく。凄く感動する物語である。平和ボケしている今の日本人特に若者にしっかり読んで欲しいと思う。交際交流とかグローバルコミュニケーションもしっかりした歴史認識の基礎の上に築き上げねばならないと思う。

長くなった。住井すゑさんの本からは大事な言葉を抜書きしておこう。

「人間生きていることは法則であり、権利で生きているのではない。」
「権利というと誰かと契約で生きている様な、生きる権利を獲得しているのだからーというふうになって、生きることが小さくなってしまう。」
人間が生きるということは権利ではなく即ち人権という概念で表されるようなものではなく、「宇宙」の法則で生きているのだ。住井さんは実に気宇壮大だ。大き過ぎて近寄りがたいくらいの威厳がある。しかし、こういうほんとうの温かみを持った人間であって、こういう歯に衣着せぬ鋭い時代への風刺いや批評をする文学者がいなくなったことは寂しい。

また長くなってしまった