おやままさおの部屋

阿蘇の大自然の中でゆっくりのんびりセカンドライフ

小説の魅力ー坂岡真と浅田次郎

2013年08月08日 07時18分56秒 | 日記


今朝二日酔いの重い頭ながら習慣で枕元の本を手に取り読んだ。

今、浅田次郎の短編集と他読み始めたばかりの2冊。名前は腐った酒で脳味噌に浮かんでこない

浅田は先日時代物を読んだばかりだが、この短編集は「月のしずく」という書名、さてどうかな?

7篇収められている一番最初の作品が「月のしずく」。今読了した興奮が体に残っている。

原稿用紙何枚くらいの作品なのだろう?100枚?

何だか体の中に温かな血がゆっくりと流れている。世の中の人間の付き合いのしがらみに傷ついたり、傷つけたり、憶測したり、悪口をいってその言葉に酔ったり・・・

稼いだその金をまるで自分の人生そのものと勘違いしていた頃。身分が上がるとついて来る給料にほくそ笑んで、他人に優越感を感じたり、人間がそのものが「よくなった」と思い違いをしていた自分をこの本の主人公「辰つぁん」は根こそぎ引き剥がしてくれる。

「蟻ん子」として下っ端の工場労働者として薄汚れた作業着で働き、学生下宿みたいなポッチャン便所のアパートで暮らしている男の下に銀座のホステスが間違って転がり込んでくる。

腕には60万円もするスイスの高級時計。贅沢が当たり前の女、男につねにチヤホヤされていい気になっている若い女。

愛人に捨てられて自暴自棄になっている女を「蟻ン子」は宝物を扱うみたいに一線をおいて見ている。「抱いていいわよ」と言われても決して手を出そうとはしない。

捨てられた愛人の会社の社長らしい男が買ったという腕時計を「蟻ん子」は対抗するかのごとく行った事もない銀座の和光に買いに行く。有り金全部とサラ金から借りた30万の金を持ってー

60万の何とかという有名ブランドの時計は買えず、5,6千円の安物時計を買って帰る「蟻ん子」。

女はその時計を投げ付ける。ガラス窓を突き破って飛んでいく時計。「馬鹿にしないでよ!!

だけど、そんな理不尽な行いを窓から17夜の月が覗いている。

「参った」二日酔いの頭だからなのか・・・違うな。現代を描いているのに、その世界は古く遠ーい昔の日本を映しだしている。

坂岡の「冬の蝉」は時代物で短編集だったが、どれも似たような設定ではあるのだが浅田と同じく愚直に生きる男の姿を描き出している。