まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

合併と税金

2017-10-02 21:10:50 | M&A
○ 企業間の合併については、当然各国の会社法等で規定していますので、その企業の所在国の会社法の規定によりますね。呼び方もMerger Agreementと言ったり、米国ではPopularなAgreement and Plan of Mergerと言ったり、スペイン・ポルトガル系ではMerger Protocol (合併の正当事由を記載しないといけないので、Protocol and Justification of Mergerの方が、popularでしょうか)と言ったりします。
買収の場合ですが、株主が多い会社のときは、多くの株主と株式譲受契約を何本も結ばないといけない場合もあります。一部の反対株主がいたり法外な価格を要求されたりしたら株式取得もスムーズにできません。反対株主が残存していると経営にも支障をきたします。その場合、新設子会社を作って、その子会社とTarget企業を合併させるTriangular Merger(三角合併で、新設子会社がsurvivingのForwardとその逆のReverseなどあります)の手法により買収を行う場合があります。しかし、重要なことは、勿論買収・合併の目的・意義ですが、合併当事者企業のみならず、合併承認総会で株主の承認をスムーズに取得するには税金問題をクリアーする必要がありますし、合併スキームにも影響します。ということで、今回は合併と税金について記載してみましょう。

○ 企業間の合併で、結構問題になるのは税金ですね。これは日本でも外国でも同じです。
日本での合併の際の課税関係は、①消滅会社の資産・負債が簿価で存続会社に承継できるか、②逆に言いますと存続法人が承継する消滅会社の資産・負債を簿価で承継できるかということと、消滅会社の繰越欠損金の引継ができるかということ、③存続会社の株式を、消滅会社の株式に代わり受け取る消滅会社の株主にみなし配当が計上されるか等ですね。存続会社の株主は、影響はありません。
合併の類型としては、①100%子会社との親子合併、②50%超100%未満の子会社との合併、③第三者と共同事業を営むための合併があります。それぞれ税金の生じない(存続会社が簿価で消滅会社の資産・負債を受入)適格合併と課税関係の生じる非適格合併があります。
詳細は、国税庁のWEBや、監査法人の解説を見ればわかりますね。一般的には、Cash Merger=存続会社の株式を消滅会社の株主に交付する現金合併の場合には、適格合併は認められないですね。
ここでの注意点は、日本では確定決算主義なので財務会計の簿価は、通常税務会計の簿価と同じなのですが、海外では、財務会計の簿価と税務会計の簿価は違う場合があるということですね。

○ 米国企業間の合併でも、やはり課税されるかは大きな問題ですね。特に、株主様の地位の高い米国ですからね。米国では、Internal Revenue CodeのSection 368(a)に該当すれば、組織再編として税金は課税(再編そのものに対する課税)されないようですね。こういった合併は“tax-free” reorganizationと呼ばれています。課税されないというのは、企業再編時の話であり、正確にはtax-freeではなく、(含み益のある場合は通常有利な)課税の繰延Tax-deferralですね(資産が減損しているときはtax-freeの再編を行わない方が良い場合も多い)。
2015年に合併したKraft-Heinzもtax-free合併ですね。Kraftは、Kraft Foodsから分離した上場企業であるKraft Foods Group Inc.ですね。Heinzは、3G CapitalとBerksher Hathawayにより、delisting & went privateされた会社ですね。合併後の会社Kraft Heinzは、旧Kraftの株主が49%を保有、残りの51%をHeinzの株主であった3G CapitalとBerksherが保有しました。3GとBerksherはKraft株主の賛同を得るため、合併にあたって合計100億ドルを追加出資。Kraft株主は$16.5/Shareの特別配当を受け取りました。

Kraft-Heinzの合併で、会社はこんなことを言っていますね。「the subsequent merger and the special cash dividend of $16.50 per share of Kraft common stock received by the holders of record of the issued and outstanding shares of Kraft common stock as of immediately prior to the effective time of the merger (the “special dividend”) relevant to a particular holder and, in particular, may not address U.S. federal income tax considerations applicable to former holders of Kraft common stock subject to special treatment under U.S. Federal income tax law. Former holders of Kraft common stock should also review the discussion under the heading “Material U.S. Federal Income Tax Consequences” in the registration statement filed on Form S-4. The terms “merger” and “subsequent merger” have the respective meanings ascribed to them in the registration statement filed on Form S-4.」

○ 合併には税金はつきものですね。外国では、日本のような確定決算主義を取ってい ない国も多いですね。ですから税務会計は、必ずしも財務会計とはリンクしていません。
IFRSと日本の会計基準の大きな違いは、のれんは償却(amortize)できるかですね。IFRS採用の国では財務会計上は償却できませんが、税金逃れを目的としたものではだめですが、合併に正当事由があれば税務上は暖簾を償却できる場合があります。

やはり、合併を検討する際は、いずれの国でも税金問題は、重要ですね。

Negotiable Instrument (流通証券)

2017-09-13 22:56:46 | 商事法務
○ 前回、米国のNegotiable Instrument (流通証券)の定義として、Uniform Commercial Code Article 3 Negotiable Instrument 104条を引用しました。その(3)の後半に、「but the promise or order may contain (i) an undertaking or power to give, maintain, or protect collateral to secure payment, (ii) an authorization or power to the holder to confess judgment or realize on or dispose of collateral, or (iii) a waiver of the benefit of any law intended for the advantage or protection of an obligor.」という記載があります。つまり、Promissory Noteの保有者の支払いを受ける立場を強化するCollateralを付してもよいとしています。という事で、Secured Promissory Noteがあることを言いました。今回は、これを受けてSecured Promissory Noteと新株予約権証書の流通証券について書いてみましょう。

Secured Promissory Note:日本では約束手形に担保はつけませんね。担保というと日本では土地等の不動産を思い浮かべますが、米国ではそうではないですね。不動産がPromissory Noteの担保になるわけないですよね。では、Secured Promissory NoteのSecurityとは、なんでしょうか?Securityとして多いのは、Accounts Receivableですね。米国の企業はCash Flowを重視しますし、Promissory Noteは短期ですので、回転が速くCash Inする資産なので売掛金が、手形の担保になるんですね。
 Promissory NoteにSecurity Interestの記載をします。GrantとTerminationについてです。
Grant & Termination. To secure the Obligations when due hereunder, the Company hereby grants to the Holder, together with each other holder of a Note, a security interest in all Accounts Receivable of the Company, wherever located, whether now existing or hereafter acquired or arising. Upon the payment in full of the Principal Amount and all accrued interest under all of the Notes, the security interest granted under this Section 2.2 shall automatically terminate and Holder shall promptly execute and deliver to the Company such documents and instruments reasonably requested by the Company as shall be necessary to evidence termination of all security interests given by the Company hereunder.

WARRANT TO PURCHASE XXX.000 SHARES OF COMMON STOCK
例えば、Warrant発行会社がIPOして上場したあとを目途に、発行から5年度に、Warrantを行使すれば新株を取得できる権利を付した新株予約権の流通証券ですね。
この証券の冒頭には、以下のような文言が記載されます。
FOR VALUE RECEIVED, xxxx or his transferees or assigns (the Holder"), is entitled to purchase, subject to the provisions hereof, from XXXX, INC., a Delaware corporation (the "Issuer"), xxxx Thousand x,000) fully paid, validly issued and non-assessable shares of common stock, par value $.0001 per share (the "Common Stock"), of the Issuer (the "Shares"), at a price equal to Fifteen and Three-Fourths Cents ($0.1575) per share. The right to purchase the Shares under this Warrant is exercisable, in whole or in part, at any time prior to 5:00 p.m., Eastern time, on December 10, 2020. The Shares deliverable upon exercise of this Warrant are hereinafter sometimes referred to as the "Warrant Shares" and the exercise price per Share in effect at any time is hereinafter sometimes referred to as the "Exercise Price." This Warrant and all warrants issued upon transfer, division or in substitution thereof are hereinafter sometimes referred to as the "Warrants."

このWarrantの主要条項としては以下等ですね。
1. EXERCISE OF WARRANT. This Warrant may be exercised by presentation and surrender to the Issuer at its principal office, or at the office of its principal stock transfer agent, with the Purchase Form annexed hereto duly executed and accompanied by payment of the Exercise Price for the Warrant Shares.

2. RESERVATION OF SHARES.→発行会社が、授権資本内新株を発行できるように、発行枠を留保しておく条項です。

3. TRANSFER OF WARRANT.→Warrantに表示の条件に従い、全部・一部のWarrantを譲渡できる規定です。

4. その他の一般条項:LOSS OR DESTRUCTION OF WARRANT.、RIGHTS OF THE HOLDER.、SURVIVAL、AMENDMENTS AND WAIVERS、GOVERNING LAW (州法と連邦法の両方が適用)、ENTIRE AGREEMENT ⇒これらの条項を見ると、普通の契約の一般条項ですね。

Promissory Note

2017-09-03 00:43:14 | 商事法務
○ Promissory Note。日本語で言うと約束手形ですね。約束手形というと決まった様式(手形要件)があり、手形法75条で定められた必要的記載事項を記載しないといけません。といっても日本では実際、銀行と銀行取引約定書締結し、当座取引を行わないと銀行協会所定の統一手形用紙は銀行からもらえませんし、振出が出来ないですね。日本では銀行取引停止処分がありますね。しかし、諸外国には銀行取引停止処分はありませんし、厳密に様式が決まっているわけではないですね。厳密に様式が決まっていないPromissory Note ですから、内容もNote毎に違います。従い、外国ではあまり流通性は無いのではないかと思います。

○ 米国のUniform Commercial Code Article 3には、Negotiable Instrument (流通証券)の規定があります。3-104 Negotiable Instrumentの定義は以下ですね。
  "negotiable instrument" means an unconditional promise or order to pay a fixed amount of money, with or without interest or other charges described in the promise or order, if it:
(1) is payable to bearer or to order at the time it is issued or first comes into possession of a holder;
(2) is payable on demand or at a definite time; and
(3) does not state any other undertaking or instruction by the person promising or ordering payment to do any act in addition to the payment of money, but the promise or order may contain (i) an undertaking or power to give, maintain, or protect collateral to secure payment, (ii) an authorization or power to the holder to confess judgment or realize on or dispose of collateral, or (iii) a waiver of the benefit of any law intended for the advantage or protection of an obligor.
Noteというのは、お金の借用証書ですね。今度の改正民法の587-2条では諾成的消費貸借が明文化されましたが、原則は要物契約ですね。従い、Noteの冒頭には、借用金額や日付を記載して、文章の冒頭には「FOR VALUE RECEIVED,」と書きますね。

○ 米国では、結構Noteは利用されているようでね。何しろan unconditional promise or order to pay a fixed amount of moneyですから。Noteには、いろいろ種類があります。
大きく分ければ、①Promissory Note, ②Secured Promissory Note、③ Promissory Note Due on a Specific Date、④Promissory Note Due on Demand、⑤Promissory Note with Balloon Payments、⑥Promissory Note with Installment Payments等ですね。担保付とか分割払いのNoteですね。

○ 米国の州法ではなく、米国企業が利用するNoteには、様々なものがありますね。例えば、Convertible Promissory Noteというのもありますね。実質は中国で事業を行っている会社の香港籍の親会社が、香港証券取引所に上場するときに、上場予定の1年ほど前にCaymanの会社に株式移転をして、このCaymanの会社を上場させるときがあります。Pre-IPOの資金調達で、上場予定の10か月ほど前に、米国の投資家が持っているCayman法人が、例えば$1000万ドルを、上場予定のCayman法人に資金注入します。これに対して上場予定のCaymanの会社が、投資家にConvertible Promissory Noteを発行します。このNoteの主な条件の例は、
1) 支払期日(Maturity Date)は、1年ほど先で、上場予定の2-3か月ほど後に設定
2) 元本について10.0 % p.a.の金利を支払う。
3) Conversionの条件を記載する。
If the closing of the IPO occurs prior to the Maturity Date, then upon the closing of the IPO, all of the outstanding principal amount of this Note (but not any interest accrued) shall be automatically converted into fully paid and non-assessable Investment Securities at a price per share equal to the Conversion Price. 約束手形がIPOのときに上場株券になりますね。金利の支払いも無です。
4) Conversion Priceの優遇: Conversion Price shall mean a per share price equal to 80% of the Per Share IPO Price. でもすぐには売れないですね。そこは多少投資家もリスクを取らないとね。通常半年ぐらいのLock-upが入ります。

○ Convertible Promissory Noteというのは株式にConvertするNoteですね。類似のものにExchangeable Bond(他社株転換社債)というのもありますね。上場予定の会社の株式などを保有するCayman法人が、上場前に投資家に、自分の会社の社債を販売するものです。上場したときに社債が、その会社の保有する株式に転換する訳ですね。

○ 上記のConvertible Promissory Noteは、CONVERTIBLE PROMISSORY NOTE PURCHASE AGREEMENTという投資契約に基づき発行(振出)されますね、またExchangeable Bondも同様に投資契約に基づきます。(昔、日本の証券会社が、Exchangeable Bondを素人の個人投資家に販売して、投資家が損をしましたが、こういった手法は、機関投資家向けですね。)

日本の証券市場は閉鎖的・保守的ですから、こういった手法を使う日本企業は殆どありませんね。海外の証券市場、例えば香港証券取引所等は、中国・香港・Cayman・Bermuda法人等の証券を上場できますから、いろんな手法を用いて投資家を集めることができます。その手法として、 Convertible Promissory NoteとかExchangeable Bondがあるわけですね。

Malaysia新会社法の定款

2017-08-14 21:53:25 | 商事法務
○ Malaysiaの旧会社法(Companies Act 1965)が廃止され、今年1月31日から新会社法(Companies Act 2016)が施行されました。新法では、非公開会社での定時株主総会の廃止可能、書面決議可能、額面株式の廃止、発起人・取締役を2人から1人でもOK、定款(Constitution)の作成義務がなくなりましたね。画期的というか大胆と言いますか、少し現場で混乱があるようですね。

○ 従来の旧法では、基本定款=Memorandum of Association (MoA:会社名、本店所在地=Malaysiaとだけ記載してもOK、目的、有限責任である旨、授権資本、設立時株式引受人等を記載)と付随定款(Articles of Association = AoA)の作成義務があり、AoAについては、1965年法のForth Scheduleをそのまま採用する例が多かったです(MoA + AoA = Memorandum & Articles of Association = M&AA)ですね。

○ 定款作成義務が無くなりましたので、法令に違反しないかぎり何でもできるわけですが、そうかといって、(登記はするにしても)会社名も目的も定款に記載ないというのは、やはり如何かと思いますね。やはり、日本企業がMalaysiaで合弁会社などを設立する場合には、定款作成が必要ですね。当事者で決めた定款自治で会社をコントロールできますね。

○ ではどういった定款を作るべきでしょうか。合弁会社の場合の定款は、結局、i) 合弁会社設立契約の合意事項、ii) 新会社法の一部規定の抜粋とiii)定款の一般的規定より構成することになると思います。一般規定は、2017年1月施行新会社法には明記無いので、旧会社法の雛形から多くの規定を引用することになりますね。i)は、当事者が合意した事項を記載すれば良いですが、ii)については、例えば新会社法340条のPublic company(Berhad)の規定等ですね。
340条Additional Requirement for Public Companiesとして、Annual general meetingの規定を置き、(1)項で以下のように定めています。
Every public company shall hold an annual general meeting in every calendar year in addition to any other meetings held during that period, to transact the following business:
(a)the laying of audited financial statements and the reports of the directors and auditors;
(b)the election of directors in place of those retiring;
(c)the appointment and the fixing of the fee of directors; and
(d)any resolution or other business of which notice is given in accordance with this Act or the Constitution.

iii)については、i) とii)で規定した以外で、以下のような条項が入りますね。
資本金と種類株、先取特権、資本金払込請求、株式の没収、株式の承継、株式の不定額面株式への転換、資本の変更、株式譲渡、株主総会と決議、総会招集手続、取締役、マネジングダイレクター、アソシエイトダイレクター、 取締役の権限と義務、取締役選任手続、秘書役、社印、計算、利益の資本化、清算、 通知、補償(Share Capital and Variation of Rights, Lien, Calls on shares, Forfeiture of Shares, Transmission of Shares, Conversion of shares into stock, Alteration of capital, Transfer of shares, Shareholders Meetings and Resolutions, Proceedings at Shareholders Meetings, Directors, Managing Director, Associate Director, Powers and Duties of Directors, Proceedings of Directors, Secretary, Seal, Accounts, Capitalization of Profit, Winding Up, Notices, Indemnity)

○ 従来の会社の定款(M&AA)は、新会社法の定款(Constitution)とみなされますので、まああまり変わりませんが、定款作成不要の会社法の影響で、ユニークな定款作成も可能になりましたので、徐々に工夫して新しい形の定款を作成する変人?もでてきそうですね。


米国のLLC

2017-08-04 23:33:50 | 商事法務
○ 米国内で合弁会社の形態としてLLC(Limited Liability Company)を選択する例が多いですね。その特徴は、有限責任・持分譲渡制限・存続期間(通常は30年程度ですが、期間を定めない=no specific date of dissolutionと定めることもあります)・業務執行権(Member or manager of a third party)、原則は最低2名以上の構成員、分配制限無し(分配方法は自由に定める事も可能だが原則持分割合)、課税(パススルー課税選択可能)等です。

○ 特に有名なのがPass Through課税で、連邦税に関してLLCではなく、その出資者・構成員に課税する選択権を与えていることですね。これは、チェック・ザ・ボックス規則(Check-the-box Classification Regulations)といわれ、1996年に制定され、1997年1月1日から施行されたアメリカ合衆国の財務省の規則で、連邦税に関して、コーポレーション以外の企業体に対して、企業体そのものを課税主体とする事業体課税か、それとも構成員課税を採るかの選択権を与えるものの一般的呼称ですね。チェック・ザ・ボックス規則のもとでは、CorporationまたはCorporationと見なされる例外的な企業以外の企業体(eligible entity)は、Form 8832という届出をすることによって、Corporationとして課税される企業体、Partnershipとして取り扱われる企業体(Pass through)のいずれかを選択することができます。チェック・ザ・ボックスによる選択をしたからといって、必ずしも州税においても同様の取扱がされることにはならないことに注意すべきですね。

○ 合弁でLLCを設立するためにMember(出資者)間で、Operating Agreementが締結されますね。株式会社の場合の合弁会社設立契約・株主間契約に相当するものですね。Delaware LLC Actでは、定義のところには、"Limited liability company agreement" means any agreement (whether referred to as a limited liability company agreement, operating agreement or otherwise), written, oral or implied, of the member or members as to the affairs of a limited liability company and the conduct of its business.“としています。

○ Operating Agreementは、いろいろなバリエーションがあると思いますが、主な項目は以下ぐらいでしょうか。
1) ORGANIZATIONAL MATTERS: 会社名・所在地・Delaware州内のAgent,目的等を記載します。

2) CAPITAL STRUCTURE & CONTRIBUTIONS: 出資額(現金だけでなく、技術とか特許のexclusive license等の現物出資もありですね)、Memberの出資比率を規定します。追加出資の有無等も規定します。追加の出資者を受け入れる場合の条件(全Memberの承諾等)を入れます。

3) MANAGEMENT:会社をどのように経営するかですが、これが結構自由に設計できますね。Meetings of Members (株式会社なら株主総会ですが)も自由に開催できます。開催しないこともできます。Managing Committee (数人のcommittee memberで組成。Board of Director相当)を設けて経営する場合、あるいはManagerに日常業務執行を任せる場合などいろいろですね。

4) ALLOCATIONS OF NET PROFITS AND NET LOSSES AND DISTRIBUTIONS: 基本はMemberの出資比率に応じて損益をAllocateします。

5) TRANSFER AND ASSIGNMENT OF INTERESTS:持分譲渡の規定ですね。一定期間の持分譲渡禁止の条項等を入れます。

6) その他一般条項・定義など

社外取締役等の報酬は1/10で十分

2017-07-08 08:39:54 | 商事法務
○ 株主総会の季節がおわりました。3月期決算会社の総会が開かれ、議案に中には、「取締役・監査役の報酬額改定の件」と題して、役員の総報酬の増額を諮る議案を可決している例がありますね。会社法施行規則では、公開会社の事業報告の内容を定めています。
121条六では、「各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針を定めているときは、当該方針の決定の方法及びその方針の内容の概要」と規定しています。施行規則では、「各会社役員の報酬等」と規定しているのに、なぜ全員の総報酬額を記載しているのでしょう。これって施行規則違反ではないでしょうか?「各」という意味を誤魔化していますね。

○ 社外役員については規則の124条に規定されています。社外役員については、四ロ・ハに、「取締役会における発言の状況」「当該社外役員の意見により当該株式会社の事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更されたときは、その内容(重要でないものを除く。)」と規定されています。
社外役員の報酬について、不祥事が発覚した富士フィルムホールディングスでは
 社外取締役 2名 19百万円(単純平均 950万円)
 社外監査役 2名 11百万円 (単純平均550万円)
出席状況は、北山取締役13回中12回、井上取締役13回中11回ですね。一回当たり単価 北山さんが79万円、井上さんが86万円ですね。

仮に2時間の取締役会で、発言時間が10分とすると、1分あたり8万円ですね。事前に資料を送付されそれを読んでおいても、肝心の取締役会で発言しなければ、存在価値も資格もありません。それでは、東証の求める2名の記載の、名前貸しの価値しかありません。ろくに発言しない社外取締役も多いようです。報酬ドロボーですね。

発言状況の説明は、「金融機関の経営者としての」「民間放送事業会社の経営者としての」部分だけが異なり、他は同一文章・文言で、「適宜助言を行いました。」⇒なんやねんこれは。1分8万円の価値がありますか?どう考えても不相当な高額です。

「事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更されたときは、その内容」を記載しないといけないのですが、富士フィルムに限らず、そんな内容を記載している例は、殆どありません。

また、「海外子会社に関する不適切な会計処理及び取引に関して、当該事実を認識しておりませんでした」等と記載して、責任は無いですよと言っています。代表取締役なら、自分が知らなくても責任を追及される場合がありますが、東芝の例を見るまでもなく取締役の責任が追及される例はありません。取締役の責任としては、①任務懈怠、②自己取引、③利益相反取引、④職務遂行時の悪意・重大な過失による第三者への損害賠償等ですね。社外取締役では、②③④はあまり考えられないですね。東芝の例でも①で追及されることもなかった。

更に、業務執行を行わない取締役とは責任限定契約を結ぶのが一般的です。非常勤監査役についても同様です。発言もろくにしない、責任も負わない社外取締役、一回の取締役会での発言が10分で、仮に年間12回=2時間。2時間しか働かない社外役員に、平役員の1年間に相当する報酬を払うというのは、如何なものか!
一か月20日以上介護の仕事をして20万円の手取りしかない人と、2時間時間つぶして80万円の不労所得を得る人と、人としてどちらを尊敬できるでしょうか。こんな不公正・不平等なことはありません!!


○ 社外役員は、学者・弁護士・公認会計士・他企業の経営者等が多いですね。りっぱな経歴を持った人をおかざりとして、権威づけのためにしているのでしょうか。こういった人は多忙ですから、事前にろくに資料等きちんと読んでいるか疑問ですね。特に事業の事などわかりません。事業の言葉自体よく理解できない場合が多いでしょう。それに加えてきちんと事前勉強もしませんね。
ろくに働きもしない社外役員を指名しないと東証もやかましいですからね。これは東証等が生んだ新しい利権構造です。働かない人間に、不相当な金額の報酬を与えています。税務署は、企業に寄付金課税をしましょう。もらった役員には、税率の高い贈与税をかけましょう。働いていない社外役員に、不相当な報酬を払うのはやめましょう。1/10で十分です。


米国企業の資本の減少

2017-07-01 23:16:26 | 商事法務
○ 前回、米国企業の配当のところで、資本剰余金からも配当できる旨を言いました。これは別の言い方をすれば、資本の減少ですね。資本金ではなく資本剰余金の減少です。
ニューヨーク会社法・デラウェア会社法の規定を見てみましょう。

○ Delaware General Corporation Law
§ 244. Reduction of capital. (資本の減少)
(a) A corporation, by resolution of its board of directors, may reduce its capital in any of the following ways:(いずれも取締役会決議です)
(1) By reducing or eliminating the capital represented by shares of capital stock which have been retired;(retireですから株式消却してできますと規定)
(2) By applying to an otherwise authorized purchase or redemption of outstanding shares of its capital stock some or all of the capital represented by the shares being purchased or redeemed, or any capital that has not been allocated to any particular class of its capital stock;
(3) By applying to an otherwise authorized conversion or exchange of outstanding shares of its capital stock some or all of the capital represented by the shares being converted or exchanged, or some or all of any capital that has not been allocated to any particular class of its capital stock, or both, to the extent that such capital in the aggregate exceeds the total aggregate par value or the stated capital of any previously unissued shares issuable upon such conversion or exchange; or
(4) By transferring to surplus (i) some or all of the capital not represented by any particular class of its capital stock; (ii) some or all of the capital represented by issued shares of its par value capital stock, which capital is in excess of the aggregate par value of such shares (額面株式の場合は額面超過額をSurplusにすることにより、額面総額までの資本金の減少が可能ですね); or (iii) some of the capital represented by issued shares of its capital stock without par value.
  (無額面株式発行による資本のときは、Surplusにすることにより資本金の減少が可能になります)

(b) (省略:減資後の資産では、債務返済ができないときは減資をしてはいけない旨の規定です)

○ New York Business Corporation Law
§ 516. Reduction of stated capital in certain cases
(a) Except as otherwise provided in the certificate of incorporation, the board may at any time reduce the stated capital of a corporation in any of the following ways:
(a) Except as otherwise provided in the certificate of incorporation, the board may at any time reduce the stated capital of a corporation in any of the following ways:(取締役会決議でいつでも、以下の方法により資本金の減少可能)
(1) by eliminating from stated capital any portion of amounts previously transferred by the board from surplus to stated capital and not allocated to any designated class or series of shares;
(2) by reducing or eliminating any amount of stated capital represented by issued shares having a par value which exceeds the aggregate par value of such shares;
(3) by reducing the amount of stated capital represented by issued shares without par value;  or
(4) by applying to an otherwise authorized purchase, redemption, conversion or exchange of outstanding shares some or all of the stated capital represented by the shares being purchased, redeemed, converted or exchanged, or some or all of any stated capital that has not been allocated to any particular shares, or both.  Notwithstanding the foregoing, if the consideration for the issue of shares without par value was fixed by the shareholders under section 504 (Consideration and payment for shares), the board shall not reduce the stated capital represented by such shares except to the extent, if any, that the board was authorized by the shareholders to allocate any portion of such consideration to surplus.

(b) No reduction of stated capital shall be made under this section unless after such reduction the stated capital exceeds the aggregate preferential amounts payable upon involuntary liquidation upon all issued shares having preferential rights in the assets plus the par value of all other issued shares with par value.
  (preferential amounts payable upon involuntary liquidation等と言っていますね。これは、liquidation preference share等の優先株式が発行されていることを想定しての規定ですね。Liquidation preferenceといっても、出資した金額ではなく、3 x とか4 x の清算時優先株式を発行を求める、がめついVCも多いですからね)

(c) When a reduction of stated capital has been effected under this section, the amount of such reduction shall be disclosed in the next financial statement covering the period in which such reduction is made that is furnished by the corporation to all its shareholders or, if practicable, in the first notice of dividend or share distribution that is furnished to the holders of each class or series of its shares between the date of such reduction and the next such financial statement, and in any event to all its shareholders within six months of the date of such reduction.

○ Par valueを1centとか、1/10 centとかにするときがありますね。しかし、発行価格は$10,000にします。すると資本の99.9%はsurplusになって株主に簡単に配当できます。会社型の投資Fundでよく行われます。Fundですから、投資が回収できれば、その分、実質投資元本である資本金と共に収益を、出資者にこの方式で返しますね。


米国企業の配当

2017-06-18 00:56:51 | 商事法務
○ 日本で配当といえば配当可能利益(利益剰余金)から配当を支払うと理解されていますが、米国ではそうではないですね。また剰余金処分は、日本では通常(法459条の特則を定款で定めた場合などを除く)総会の第一号議案として、株主総会の決議事項ですね。米国では、決算承認・配当は、取締役会で決定されます。今回は、Delaware州法・New York州法等に、どのように定められているのか見てみましょう。

○ 模範事業会社法(MODEL BUSINESS CORPORATION ACT)では、どのように規定されているのでしょうか。
Subchapter D. DISTRIBUTIONS
§ 6.40. DISTRIBUTIONS TO SHAREHOLDERS
(c) No distribution may be made if, after giving it effect:
(1) the corporation would not be able to pay its debts as they become due in the usual course of business; or
(2) the corporation’s total assets would be less than the sum of its total liabilities plus (unless the articles of incorporation permit otherwise) the amount that would be needed, if the corporation were to be dissolved at the time of the distribution, to satisfy the preferential rights upon dissolution of shareholders whose preferential rights are superior to those receiving the distribution.
(1)では、借金返済できないような配当支払いをしてはいけないと規定していますね。Cash Flow思考ですね。Cashが回れば良いということです。(2)は、解散時の話ですからBSをベースに考えていますね。

○Delaware General Corporation Lawの規定は以下です。
§ 170. Dividends; payment; wasting asset corporations.
(a) The directors of every corporation, subject to any restrictions contained in its certificate of incorporation, may declare and pay dividends upon the shares of its capital stock either:
(1) Out of its surplus, as defined in and computed in accordance with §§ 154 and 244 of this title; or (額面株式の場合の額面超過資本剰余金からの支払はOK)
(2) In case there shall be no such surplus, out of its net profits for the fiscal year in which the dividend is declared and/or the preceding fiscal year.
資本剰余金が無くても、(資本勘定の欠損を填補せず)当年度の利益があれば、その利益から配当を支払ってもよいということです。

○New York Business Corporation Law
§ 510. Dividends or other distributions in cash or property
(a) A corporation may declare and pay dividends or make other distributions in cash or its bonds or its property, including the shares or bonds of other corporations, on its outstanding shares, except when currently the corporation is insolvent or would thereby be made insolvent, or when the declaration, payment or distribution would be contrary to any restrictions contained in the certificate of incorporation.

(b) Dividends may be declared or paid and other distributions may be made either (1) out of surplus, so that the net assets of the corporation remaining after such declaration, payment or distribution shall at least equal the amount of its stated capital, or (2) in case there shall be no such surplus, out of its net profits for the fiscal year in which the dividend is declared and/or the preceding fiscal year.

模範事業会社法やDelaware会社法等と同じ考えですね。配当は利益剰余金からという発想は無いですね。

Malaysiaの新会社法

2017-06-03 22:13:50 | 商事法務
○ Malaysiaの新会社法(Companies Act 2016)が2017年1月31日から施行されました。従来は、Companies Act 1965で、1965年の法律であり改正では無理があり、全面的に改正されました。定款作成義務や株主総会開催義務等を廃止しており、結構大胆な会社法ですね。ということで、今回は、その改正内容等について書きましょう。

定款作成義務の廃止:従来、Malaysiaに限らず、イギリス法系の会社法を採用している国では、法律の別表(Schedule)に、一番簡単な定款の例を記載して、これを利用することが一般的でした。Malaysiaでは、基本定款=Memorandum of Association (MoA:会社名、本店所在地=Malaysiaとだけ記載してもOK、目的、有限責任である旨、授権資本、設立時株式引受人等を記載)と付随定款(Articles of Association = AoA)の作成義務があり、AoAについては、1965年法のForth Scheduleをそのまま採用する例が多かったです(MoA + AoA = Memorandum & Articles of Association)。
ところが、2016年法では、定款=Constitution作成義務を廃止しました。勿論、きちんとした定款作成を望む場合には、作成できます。既存会社は、定款を持っていますので、既存定款をConstitutionと見做して定款作成会社とします。しかし、既存定款を配する決議をすれば廃止もできます。
定款のない会社の経営は、株主総会と取締役会決議、及び会社法の規定に従って組織運営されるんですね。
MoAには、会社名等の会社の基本的事項が記載されていましたが、これが廃止されたらかわりに、Super Form (electronic template)が導入されました。このFormは、MyCoID 2016 Portalにアクセスして入手しますね。

定時株主総会開催不要:2016年法290条では、A resolution of the members – of a private company shall be passed either (a) by a written resolution; or (b) at a meeting of the members.と規定されています。
従い、株主総会を開催しなくても書面決議だけでできるわけですね。株主が1人の会社では便利ですね。中国の外商独資企業の場合には、株主会の開催義務が無く、株主決定書だけでできるのと同じような制度ですね。

額面株式の廃止:Malaysiaの会社の株式は、額面RM1.00/shareでしたね。しかし、新法74条では、All shares issued before or upon the commencement of this Act shall have no par or nominal Value.として無額面株としました。

発起人・取締役1人がOK:従来Malaysiaでは、会社設立に際しては発起人が2人で取締役も2人必要でした。Malaysiaでは、形式的に会社を設立するときは、発起人2人が、RM1.00/Shareを2株Subscribeして会社を設立していましたね。所謂RM2会社ですね。この要件が新法では廃止されました。従い、1人の発起人(会社)が、100%子会社を設立の時から作れるようになりました。

○ その他、今回の改正では、従来、裁判所の決定(Court Order)が必要だった減資も、Solvency testを行うことにより可能となりましたね。一方、会社法違反の取締役への制裁は強化され、最高は5年の懲役and/or RM5 millionになっていますね。

合弁契約の重要条項

2017-05-20 21:59:16 | 商事法務
今回は、合弁契約に記載する重要条項についての解説です。

機関・出資比率・役員構成について
・会社の機関として、株主総会、取締役会を設置、その権限等を規定する。また業務執行機関であるCEO/Managing Director等について定める。英法系では会社法遵守チェックのSecretary、インドネシアでは監査役会(Komisaris会)等の規定も入れる。
 
・中国企業との合弁である中外合弁(出資比率に応じた利益配当)・中外合作(契約で利益配当を決める)有限公司には、株主会(股东会=gudonghui)は存在しない(設置出来ないと考えられている)。会社法に加えて中外合弁企業法等が適用される。
 中外合弁企業の最高意思決定機関は董事会。定款変更、資本金増減、合併・分割・終了・解散等は、出席董事全員一致事項(法定ではないが、一般的に、定款で持分譲渡も、全会一致とされている)。中国は、原則許認可主義であり、合併の規定はあるが、監督官庁が許可しなければ出来ない。本店移転も規定上はできるが、(政治的なことをしない限り)実際は出来ない(税務局がよく反対する)ことが多いですね。
 
・株主総会の決議は、普通決議(過半数)と特別決議(国により、2/3以上(日本、インドネシア等)又は3/4以上(インド・マレーシア等)が多い。
 →相手が1/3以上、又は1/4以上持てば拒否権が生じる。
・特別決議事項は、法定(基本定款・付属定款変更、合併、減資、解散決議等)の他に、当事者の契約で定める事ができる(法定事項に加えて、全会一致を求めるReserved Matterを規定する場合が多い)。

・合弁の場合は、取締役の員数も出資比率を反映したものになる。合弁契約では取締役会で、全員一致事項(Reserved Board Matter)を決める事がよくある。⇒取締役会レベルで規定すれば、総会レベルでも結局一緒になる。

・会社設立発起人(個人)&取締役が株式を保有する義務を有する国がある。タイでは発起人(個人)は必ず1株保有しなければならないが、直ぐに出資者(会社)に売却できる。しかし、フィリピンでは取締役個人に保有義務が有り、株式売却したら取締役の職務は終了する。

・出資比率50% - 50% の場合:取締役の人数も同数であり、取締役会・株主総会でdead lock(後述)になったときの規定が必要となる。

・増資・融資・保証:増資・融資・保証は出資比率と同じ比率。資金繰り多忙の企業等は、増資に適時に応じられない場合がある。また親会社ローンは、設備投資に限る等(インド)の規制のある国がある。

・会計年度:インドは4-3月と法定。その他は、1-12月が多い(法定されているところも多い)。定時株主総会開催は決算期後6か月以内が多い(マレーシア等)。→日本側の企業が3月決算の上場企業である場合は、東証に5月上旬に決算短信提出必要なので、そういったことも念頭に置く必要がある。

・取締役:過半数とか2名は居住者であること(フィリピン)。Secretaryは居住フィリピン人・インド人(資格必要)等がある。

Dead Lock条項(弁護士が入れたがる条項。金だけのFundはよく入れたがる。メーカー等の農耕民族の会社は、今までの努力を無にする田圃を突然なくす規定は入れないほうがよい。)
・Russian roulette:合弁相手に、お前の持株全部売るか、わしの持株全部買うかどっちだと通知(売買価格のoffer込)を出して迫るやり方。
・Texas shoot-out:Russian rouletteは、一方当事者が相手方に迫るやり方。この方法は、各当事者が第三者に、相手方保有全株式の現金買取・offerをSealed Bidで提出。そのsealed bids は同時にオープンされて、高い価格を提示した方が、その価格で他方当事者の持株全部を買取。相手方はその売却義務を負う。
・Mexican shoot-out (又は'Dutch auctionともいう):.上記Texas shoot-outの変形。Texas shoot-outは買取価格のofferですが、こちらは売却価格のofferで相手方が買うもの。売却価格の高い方が勝ちで、高い方の売却価格を提示した者が、安い方の売却価格を提示した(負けた)相手方保有の株式を買取り、負けた方に売却義務が生じます。
・その他のアプローチ:Arbitrationに付して第三者に決めてもらう(当事者は従う義務り)。Mediation(調停)を記載する場合もあります。

株式の譲渡制限(株式を譲渡するときは、JVA契約上の地位も譲渡。融資・保証も譲受人が承継)
・Tag-along, Drag-along (Bring-along)条項
Tag-along:原則はMajority Shareholderが、株式を第三者に売却しようとするとき、少数株主にもその売却に参加できる権利を与えないと、Majority Shareholderだけうまく会社を売り飛ばして、少数株主が置き去りにされる危険があるため、少数株主にも売却に参加できる権利を持たせる規定です(日本の会社法にも規定が有りますね)
・Drag Along (Bring along) :上記のTag alongは権利ですが、こちらは義務です。少数株主の売却参加義務ですが、売却する主要株主から見れば、少数株主を道ずれ出来る権利です。主要株主が、持株全部を第三者に売却するとき、少数株主に、同時に売却義務を課す、合弁契約にときどき見受けられる条項です。買収者が100%買収を希望するときに有効ですね。

Lock-up条項
 新会社設立後5年間等、合弁当事者に、子会社等を除き、株式売却を禁止する条項。(合弁した、直ぐに別れたでは話にならない。石の上にも3年)

Pre-Emptive (First- refusal)条項(先買権
 将来事情が替わり、合弁から抜けたい、株式を売却したいという事情が生じた時は、合弁当事者に、その出資比率に応じて売却・先買権がある旨規定。

● JVA当事者の競業避止義務
 合弁当事者が、自ら又は第三者と同じ地域で同種事業をすることを禁止する。合弁契約期間のみが一般的ですね。


新会社の解散
設立後5年間とか、本格操業3年経過しても、赤字解消の見通しがないとか、債務超過のときは、解散する旨規定することもある。

合弁契約の構造 

2017-05-12 19:46:53 | 商事法務
〇 前々回のBlogでは株式による買収契約の構造について説明しました。今回は、合弁契約の構造と盛り込むべき条項の一例です。出資比率・設立国の投資規制・会社法等により少し異なりますね。インドネシアは、オランダ法系ですが、取締役会の上部組織として(あまり機能していませんが)監査役会がありますね。

○ 合弁契約にもいろいろあります。新会社を合弁で設立するが、どちらか一方の既存事業を承継する場合、株式取得を70%にして売主との合弁として継続する場合などですね。日系企業が、いきなり海外で100%買収して経営陣も変更するというのは、やはり難しいので、30%は買収後3年で買い取る。そのCall Option等を入れる、一時的な合弁契約もあります。

〇 合弁契約書(JVA)をdraftして、現地法制の関係もあり、日系(N)のあ(A)る弁護士事務所へ送付したことがあります。そうしたら、やたらと不要なコメントと修正をしてきました。当方でいちいち、解説をつけて元に戻しました。一番おかしな条項は、JVAなのにIndemnity条項を入れてきたことですね。Damages(損害賠償条項)は普通ですが、Indemnityは買収契約には入りますがJVAには普通は入りません。
[通常のindemnificationとcall optionの組み合わせが、アセアン地域では一般的であるため、修正致しました。] ⇒こんなコメントが付いていましたが、これは口から出まかせ嘘ですね。削除してとリクエストしたら、自分の事務所では一般的に入れているとか、顧客の意向を無視して変更しません。ところが、相手に1st draftを出す直前に、いつの間にか削除していました。1st draftを出してからの相手との交渉・修正は、当然その事務所に(FAにも)言わずに(無視して)、自分でやりました。

○ 法律事務所を起用したのは、「起用してやっています」と責任者に言えば、契約書を一行も読まない責任者が安心し、また取締役会も納得するからですね。事業を自分で立ち上げた経験もない弁護士の言うことは、ときとしてピンボケも多いし、必ずしも適切な条項を入れるわけでもないのですね。

≪合弁契約の構造・全体像≫
第1章 総 則
第1条 趣旨・目的
第2条 定義・解釈
第3条 当事者の表明・保証
                 
第2章 新会社       
第4条 新会社の設立・概要
第5条 出資と出資比率
第6条 取締役の員数と指名権等
第7条 監査役の員数と指名権
第8条 会計監査人
第9条 新会社設立条件:当局承認等
第10条 新会社の本契約への参加

第3章 新会社の経営   
第11条  株主総会
第12条  取締役会
第13条 デッドロックの対応
第14条 新会社の経営体制-CEO/CFO, MD、Chairmanと権限等
第15条 剰余金の配当
第16条 株主への報告義務・株主検査権
第17条 本製品の販売 -株主の協力
第18条 原材料の供給 -株主の協力

第4章 工場の建設     
第19条 用地取得・工場の建設予定等-土地は、JV契約締結したら現地合弁Partnerに押えてもらうとか、合弁パートナーの既存工場の遊休地を使うとか決めて記載するケースがあります。土地については、外資系企業にはいろいろ制限がある場合が多いですね。尚、インドでは制限はありません。
第20条 工場の主要設備と生産能力
第21条 工場の建設・設備導入

第5章 株主の協力と義務  
第22条 株主の協力
第23条 株主の会社立上支援 -土地取得・許認可取得・総務・経理・工場建設・人材採用
第24条 資金調達への協力 - 増資・融資・保証等
第25条 株主のその他協力(ライセンス提供等)
第26条 競業避止義務 
                   
第6章 株式の譲渡
第27条 株式の譲渡制限 - 先買権・譲渡株式の評価方法その他

第7章 その他
第28条 対外的発表
第29条 守秘義務
第30条 損害賠償 
第31条 新会社の解散等 
第32条 撤退
第33条 契約の譲渡 
第34条 準拠法
第35条 紛争解決
第36条 契約の費用負担(まあどうでも良い条項だけで、入れている例が多い)
第37条 契約の完全性・変更
第38条 協議事項

合弁契約を締結するときに、契約内容を反映した定款を添付するときもありますが(日本の場合は、定款が簡単なので添付する場合が多いかなあ?)、締結後作成する場合も多いと思います。しかし、そういった定款を作成することを考えない人も多いですね。(定款を、見ない知らない合弁会社経営者も多いですね)



表明保証その他について

2017-04-30 11:10:33 | M&A
○ 前回株式取得・買収契約(=SPA)の構造について書きました。今回は、その契約の中で重要な売主の表明保証やその他注意点等について具体的に2-3の例を挙げて解説しましょう。

 売主の表明・保証例
5.6 (前回のBlogの条文番号) Financial Statements
Set forth on Schedule 5.6 (SPA添付のSchedule)hereto are;
(i) the unaudited balance sheet and profit and loss statements of the Company as at and for the six (6) months ended June. 30, 2017, and
(ii) the audited balance sheet and profit and loss statements of the Company as at and for the year ended Dec. 31, 2016.
All of those financial statements have been prepared in accordance with generally accepted accounting principles (GAAP) applied on a consistent basis throughout the periods indicated and present fairly the financial position of the Company as of the respective dates thereof and the results of its operations for the periods then ended.

Except as reflected in such financial statements or as otherwise referred to in this Agreement or the Schedules hereto, the Company has no material debts, obligations, guaranties of the obligations of others or other liabilities, contingent or otherwise.
→簿外負債は無い旨の保証文言は必須

5.12 Product Warranties
There are no material claims outstanding, pending or, to the best knowledge of the Sellers and the Company, threatened for breach of any express warranty relating to any Products manufactured, sold or delivered by the Company.
→下線部は表明・保証責任の限定要因。「Knowledge qualifier」と言います。弁護士が意地になって拘る文言ですね。実際上は、この条項で訴訟が起こらない限り(起こる可能性は殆どない)、下記の2) or 3)ならあまり気にする必要はない。
1) To the constructive knowledge of Seller=知っておくべき知識と書いても、相手は受けない。
2) To the best knowledge of the Sellers
3) To the knowledge of the Sellers (上の2)との差異は、まあ「気持ち」ですね)
4) To the actual knowledge of Seller
5) To the actual knowledge of A-san, B-san and C-sanとしてきた企業もありますね。←これでは範囲が狭すぎますね。

5.24. Disclosure (入札方式の売却では、記載した表明保証以外は一切責任を負わないという規定が入ってきます。従い、下記のような条項を主張しても、なかなか入りませんね)
The representations and warranties contained in this Agreement and the information contained in the Schedules, in the certificates required to be delivered pursuant hereto and in other written documents furnished to the Buyer in connection with the transactions contemplated hereby are true and correct in all material respects and don’t omit to state any material fact necessary to make the statements contained therein not misleading. All information contained in any document which has been given or confirmed in writing by the Sellers and/or the Company or their directors, employees or advisors to the Buyer or its directors, employees or advisors in the course of the negotiations leading to this Agreement and due diligence investigations carried out by or on behalf of the Buyer was when given, and remains, true and accurate in all material respects and is not misleading whether because of any omission or ambiguity or for any other reason. There is no fact known to the Sellers or the Company which materially adversely affects or in the future may (so far as the Sellers and the Company can now reasonably foresee) materially adversely affect the Business or the condition, properties, assets, operations or prospects of the Company.

No Material Adverse Change /Effect (No MAC or MAE:重要な悪影響の無い事)
契約締結からClosing迄の間に、対象会社にMACが起こればClosingをしないという条項。定量化は難しいですね。Force Majeure (不可抗力)は、契約実行が不可能な事。MAC・MAEは、対象会社の企業価値が著しく毀損される事象が起こる事と一応は、区別できるが、実際は難しいかもしれない。経済状況の相当の悪化はForce MajeureではないがMACになるか?⇒普通はならないと思われます。

 売掛金と棚卸資産(流動資産)
DDでは回収見込みのない売掛金(年齢調べ重要)が入っていないか、また棚卸資産に不良資産(動きの無いもの)が入っていないか要チェックですね。金額と同時に、どういった管理がされているかのチェックも重要ですね。全部はチェックできないのでランダムチェックとなります。棚卸資産と帳簿は一致しないのが常識ですが、大体一致しているのか、かなり違っているのかきちんとチェックしましょう。→帳簿・数字が信用できるかを調査する。帳簿がいい加減なら全部いい加減なので、その場合は買収の中止も考えないとね。

● 税務申告と支払
税額確定時期と納税時期はずれます。後から追徴・加算税が出てくる。補償条項(期間は税務時効まで)でカバーすることになります。

他にもいろいろありますが、弁護士さんの邪魔をするのもこれぐらいにしておきましょう。


株式取得・買収契約(SPA)の構造

2017-04-04 22:57:48 | M&A
○ 今回は、株式取得契約の構造・全体像の話です。これは一例です。定義の後すぐに、2条で株式売買を記載するのが一般的ですが、そのあとは人により記載の順序が違います。表明保証・Closingの前提条件、Closingという順番で書く人もあります。それぞれ書く人のスタイルというがありますのでね。

○ 僕が、draftしたSPAで順序を大幅に変えた弁護士がいました。全く失礼な弁護士ですね。中身はあまり変わらないのにね。その弁護士はRep & Warrantyで、流動資産の回収・売掛金のRep & Warranty Clauseを書いたら、その項目に買掛金を入れてきました。大手弁護士事務所の弁護士で、M&A専門とか書いていましたが、Rep & Warrantyを何のために書いているのか、基本的理解ができていないですね。

○ また、確定価格の売買価格を書こうとしたら、買主である当方を無視して勝手に弁護士に連絡して、契約書の価格条項を変えた、東京駅近辺のブティック型FAがいましたね。月の途中のClosing日現在で、株価の算定を一定の方式で見直して、事後に株価を最終にするとのアイデアですね。これは確かに理論的です。Closing日現在の価格を算定するわけですから。しかし、実務的には100%間違いです。例えば、株主総会の議決権行使をする株主は、総会開催日の株主が理論的です。しかし、そんなことできますか?基準日現在ですね。一般的には、事後調整はShare Purchaseの時はやらない方がいいです。勿論、SPA締結から日時が過ぎて、財政状態がかなり変化したときは別ですけれどもね。

○ では、本題の契約書の構造ですね。重要な事はDDの結果を、closingの前提条件・売主の表明・保証に記載する事ですね。生産設備・生産・販売の状況を詳細把握して、買収後の経営(改善点・相互補完等)もイメージすることですね。

1. 定義と解釈

2. 株式売買
2.1.  株式の売却
2.2.  売買価格・代金支払(価格調整)
2.3.   質権等担保の不存在

3. クロージング実行の前提条件
3.1. 買主の義務履行(代金支払)の前提条件
3.1.1 表明保証の真実・正確性(契約時とClosing時)
3.1.2 規定事項の履行
3.1.3 取締役会等手続等の履行
3.1.4 継続的情報提供等
3.1.5 第三者(銀行等)の同意
3.1.6 取締役の辞表提出(Closingの時)
3.1.7 差止命令の無いこと
3.1.8 許認可取得(Change in Control条項等)
3.1.9   登録・許認可(企業結合)
3.1.10   Transaction Documents(JV契約・取引契約等)
3.1.11 No Material Adverse Change (No MAC)

3.2. 売主の義務履行(株式売却)の前提条件
3.2.1 表明保証の真実・正確性
3.2.2 規定事項の履行
3.2.3 取締役会手続等の履行
3.2.4 差止命令の無いこと

4. クロージング
4.1. クロージング日
4.2. クロージングの手続き(上記3の証明書提出等)
4.3. クロージング後の手続(登記手続等)

5. 売主の事実の表明と保証(DDで調べた結果を反映)
5.1. 対象会社の組織・存在の有効性 
5.2. 資本金・発行済株式と持株比率等
5.3. 売却対象株式の完全な所有権保有.
5.4. 売主は正当な会社で本契約締結権限有
5.5. 第三者(銀行等)の同意の必要性
5.6.  財務諸表は真実正確
5.7. 資産の正当な所有権(担保権はScheduleに記載)
5.8. 不動産の正当な所有権(担保権はScheduleに記載
5.9. 機械・装置の正常稼働
5.10. 売掛金と棚卸資産(流動資産)
5.11. 製品の安全性・品質事故は2年間起こしたこと無
5.12. 製品の品質保証Product Warranties
5.13. 訴訟の有無(ある場合はScheduleに記載)
5.14. 法令順守している。 
5.15. 関係機関の許認可
5.16. 労使関係が正常(争議Scheduleに記載)
5.17. 従業員の厚生年金付保・ビザ取得等
5.18. 銀行等との担保契約一覧をSchdule記載(それ以外無)
5.19. 利害関係者との取引(利益操作?。あればSchedule記載)
5.20. 税務申告と支払(納税義務の履行。当局との争い無し等)
5.21. 火災保険等の付保
5.22. 環境関連許認可(一覧表はScheduleに)
5.23. DD実行日より契約日迄に重要な変更は無い
5.24. 開示情報は真実正確で全ての主な事項を網羅(普通は、売主はこの条項は受けない)

売主の表明保証は、案件ごとに考える。上記は、一般的な事だけ記載しました。

6.買主の事実の表明と保証
 
7.クロージング前後の約諾事項
7.1.  事業の正常な継続
7.2. 売主の約諾事項
7.3. 情報・人へのアクセス保証
7.4. 一定事項の買主への通知
7.5. 従業員引抜禁止
7.6. (一部買収=JVA等の)関連契約の締結(Closing時)
7.7. 現行の親会社サービスの継続

8.競業避止義務(売主の同種・同一事業の禁止)
      
9.補償
9.1. 売主の補償 (税務追徴・従業員訴訟、表明・保証違反の場合の補償。)
9.2. 買主の補償
9.3. 補償の上限(米国では、売却代金の2-3割)/下限有り

10.守秘義務
11.プレスリリース

12.契約解消 (Closing前のみ) Closing後は、補償
13. 紛争解決
14.準拠法(その会社の所在地) 
15.その他(費用・通知・変更・分離性・譲渡禁止等)

Disclosure Schedule ⇒DDでの発見事項を記載。Schedule記載により売主の表明・保証責任違反を免責とする効果があるので注意。契約時で確定。Closing迄にupdateを許容すると、免責追加となる。

まあ、これぐらいでしょうか。




米国の辞任・退職契約書

2017-03-01 22:21:30 | 商事法務
〇 米国在日系企業・現地法人で、長く勤務した米国の経営幹部・従業員が、辞任・退職するときに退職契約はどの程度作成されているのでしょうか?米国企業では、幹部の退職の際には、殆ど締結されているのではないでしょうか?その契約書の中の重要規定は、Stock Optionを持っている人の、付与済(vested)のstock optionは当然として、planに従って付与予定のstock optionとその行使(exercise)をどの様にするかの規定が重要なのですが、日系企業の場合は、仮に親会社の日本企業が上場企業であってもstock optionを、現地法人の現地幹部に与えていないのが普通ではないでしょうか?

〇ということで、stock optionの規定のない、日系現地法人幹部の退職契約書は、どんな内容盛り込めばいいのでしょうか。一例を記載してみましょう。

〇 主な規定は以下ぐらいです。
・退職日:いつ辞めるのかの日ですね。役員の場合は辞任日です。これを記載しないとはじまりませんね。
-これにより、退職日までの給与は、less ordinary and necessary withholding taxes等の条件で払いますよという規定をいれますね。
- また、既に生じた給与Accrued Salary とPaid Time Off(有給休暇分の給与支払額等)も支払いますと約束します。

退職給付:日系企業の場合は、Stock optionが無いので、それに代わり今までの期間の労働の対価として退職一時金等を払う例が多いのかもしれません。
 退職年金については、有名な確定拠出年金である企業型の401kがありますね。59.5才に達すれば引き出せます。これは、退職者個人の年金(なのでportable)で、会社としては個人拠出の金額に、一定限度でmatching contributionを損金処理できますね。

・費用出費のReimbursement
:退職職員が、接待費等の立替をしていたら、それをreimburseする旨の規定も入れます。

健康保険の継続の有無:米国では、退職後18ヶ月、従来の退職者本人+家族の健康保険を継続出来ます。保険料は原則本人負担となります(他社に就職したらその時点で打ち切り)。Comprehensive Budget Reconciliation Act of 1986 ("COBRA")で決まっています。米国では、医療費が高いので、これは退職者にとり助かる制度ですね。

・Employee Covenants: 日本でも、退職時に守秘義務等の誓約書を出す場合がありますね。米国の退職契約書には詳細を入れます。
-守秘義務。Non-solicitation(引抜き禁止)。一定期間のnon-competition。規定違反の場合の救済方法。

・協力義務(退職後、会社として協力が要る場合の協力)やNon-disparagement(悪口防止)。

・Release of Claims(クレームからの解放):この中で退職者のwaiveと会社をreleaseを規定するのは、連邦法であるAge Discrimination in Employment Act ("ADEA")ですね。この規定の中に、「Employee has been given a period of 21 days within which to consider the terms of this Agreement」という規定も入れて、会社が押し付けたものでは無い。退職者の自主判断ですという趣旨の規定も入れます。

・その他、会社の財産PC等の返還。退職者が発明した特許などがあれば、それらの処置の規定も要れます。

〇 上記の規定などが標準ですが、さらに退職者は退職契約の内容を十分理解している、あるいは弁護士と(会社費用で)打ち合わせたうえで締結する事なども入れますね。

まあ、大体これぐらいでしょうか。

のれんは償却資産

2017-02-11 09:29:58 | 商事法務
〇 IFRSやUSGAAPでは、のれん(goodwill)は非償却資産ですね。ところが日本基準では、連結のれんは、まだ20年以内に償却する償却資産(amortization on goodwill)ですね。しかし、米国でも、昔(2002年まで)は、40年以内に規則的に償却しなければならない償却資産でした。
 
米国では、2001年にFinancial Accounting Standards Board (FASB)がstatementを出した結果、2002年に財務会計基準書(SFAS)第142号として「のれんその他の無形資産」を定め、毎期減損テストは行ないますが、のれんの規則的な償却を認めないことにしました。Goodwill Impairment test must be performed on an annual basis at a consistent date each year. This test compares the implied fair market value of goodwill to its carrying amount. (まあ、fairという、いい加減な言葉の基準ですから、企業の恣意で左右されますね)。また国際財務報告基準書(IFRS)でも第3号「企業結合」を2003年に公表して,のれんの規則的償却を認めなくなりました。
Statement on Auditing Standards (監査基準書)SAS No.92 Applicability 47 Impairment Lossesでは以下の様に規定しています。
Regardless of the valuation method used, generally accepted accounting principals might require recognizing in earnings an impairment loss for a decline that is other than temporary.

〇 一方、のれんの中身ですが、IFARS/USGAAPなどでは、顧客リストや商標権等に値段をつけて償却します。企業結合された際に生じる連結暖簾について、PPA(Purchase Price Allocation)として、EBITDA multiple等でエイヤーと決めた価格と時価純資産との差額を、いろいろ屁理屈を考えて償却資産にしますね。日本では、のれんはBreak Downせずに、まとめて償却します。日本の企業では、連結暖簾の償却は、10年が一般的ですが、大きなコンビニ等を買収した商社が、その案件だけ屁理屈をつけて監査法人を巻き込んで20年償却などしていましたね。

〇 私には、どうして価値が減らないのか不思議ですね?コカコーラとかマクドナルドというブランドは一流ののれんですね。しかし、その価値の維持のために毎期継続的に多額の広告宣伝費・販売促進費を使います。これらの費用によりブランドが維持されているのです。放置すれば、当然ブランドは、急激に廃れて価値が落ちます。コカコーラが、10年も広告宣伝をしなければ、街の自動販売機を見て「まだあるんだ」とか「もう消えたと思ってた!」となりませんか。

○ 即ち、多額の費用を使って価値を維持・増進する。でもその部分は自家(自己)創設のれん(Internally generated goodwill)の部分ですね。取得した部分は、右下がりで価値が減価していきます。もし価値が一定なら、取得部分は減価していき、自家創設部分がその分増えるから、結果として価値が維持されている。しかし、自家創設のれん部分は計上しませんから、取得したのれんは価値が減少します。なのにどうして非償却資産とするのでしょう?
自家創設のれんは、計上できませんね。信頼性をもって原価で測定できるような、企業が支配する識別可能な資源ではないことから、資産として認識されていません(IAS38.49)としています。

私に言わせれば、減損テストして減損ロスの金額計上もいい加減だという事です。
減損の金額など合理的に算出できないし、毀損が激しく、どうしても計上せざるを得ない場合に計上する、その場合には、一気に多額の減損損失が計上されますね。オーナー型企業は別ですが、投資を決断した経営者のときは計上せずに、次の時代の経営者の時に減損を出すんじゃないでしょうか?減損が発生するけど、これは前の経営者の「投資の失敗」だったと言って責任を負わなくていいですからね。
これなら、毎期均等額で償却する償却資産とする方がはるかに良いですよね。

のれんを非償却資産とする、納得できる明確な説明を私は聞いたこともないし、本などで読んだこともありません。誰か、僕でも分かるように説明してくれませんか?