まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式譲渡契約と競業避止義務について

2018-09-01 21:04:28 | 商事法務
○ 事業譲渡については、会社法467-470条に規定されていますね。そこには競業避止についての定めはありませんが、商法の時代遅れの16条には、営業譲渡人の競業の禁止として「譲渡人は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の及び隣接市町村内においては、その営業を譲渡した日から二十年間は、同一の営業を行ってはならない。」という規定があります。インターネットで販売できる時代に、この規定はあまり意味が無くなりつつありますが、まあ、美味しい老舗まんじゅう店が、営業譲渡した場合などには、意味がありますね。

○ 事業(営業)譲渡した場合には、商法がありますから競業避止がありますが、老舗まんじゅう店が、事業ではなく、その老舗の株式の全部を売却した時に競業避止義務はあるのでしょうか?事業譲渡という方法と、その事業を行っている会社の株式を譲渡するというのは、単なる方法の違いであって実質は変わらないですね。ですから株式譲渡の場合でも、競業避止義務を認めても良いように思えます。

○ 東京地裁平成22年2月25日判決では株式譲渡で競業避止義務を認めています。裁判所の判断の要約は以下のようです。
・Y氏の行為は、労働者派遣事業の経営に直接関与するものではないとしても、労働者派遣事業の経営を経済的に支援し、A社の業績の低下を招くおそれがある行為であるから、株式譲渡契約において禁止されているA社の競業事業に関連する行為に該当する。したがって、Y氏の行為は、競業避止義務に違反する。
・競業避止義務は、職業選択の自由及び営業の自由を制約するものであるから、その制約の程度が、競業避止条項が設けられた目的等に照らし必要かつ相当な範囲を超える場合には、公序良俗に反し無効となるが、本件の競業避止条項が公序良俗に反し無効であると認めることはできない。
この事例は、Y氏が、株式代金を受領しても、裏で間接的に事業を継続しようとしたのでしょうか?

○ 商法では、「同一の市町村の及び隣接市町村内」で、反対の合意のない限り競業避止の義務を負わせていますが、他府県、日本全国で競業避止を負わせているわけではないですね。一方、独禁法2条9項の不公正な取引方法の拘束条件付取引では、「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」を禁止しています。ですから、株式譲渡契約という契約の時に、競業避止義務を課すのは、拘束条件付き取引ですね。ただ、「不当に」という言葉がありますので、不当とは何かということが問題になると思います。

○ 商法を見ると、他府県なら問題なさそうですね。また、今の時代二十年というのは、世の中が変わっています。長すぎますね。せいぜい5年ぐらいでしょうか?一般的に株式譲渡するときに、あたかも当然のように競業避止を言う人がいますが、日本では緩い規制になっていますね。諸外国では、従業員の勤務中のときは、競業避止義務を負わすことはできますが、退職後の縛りは一切認めない例も多いように見受けられます。

○ また合弁契約を締結した当事者が、合弁会社と同じ事業を当該国では出来ないという条項を入れる例も多いですね。競業避止と独禁法、職業選択の自由及び営業の自由をどのように調和すればいいのか、なかなか回答がありません。

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事業譲渡と事業移設契約書について

2018-08-04 23:21:11 | 商事法務
○ 久々に日本のM&A関連契約についてのコメントです。日本のM&A契約は、最近米国などの影響を受けて、米国の猿まね契約が多いですね。M&A契約ですから売主の表明・保証条項を一杯入れて、契約締結日・クロージング日現在有効であるとか、約諾事項、表明・保証条項違反の場合の補償条項なども記載するようになりました。その中で今回は、事業譲渡契約と事業移設契約について触れてみましょう。ただ、米国の事業譲渡(Business/Asset Transfer Deal)では、譲渡財産(資産・負債)だけではなく、譲渡しない財産を明記しますが、日本ではまだその部分はあまり記載されていないようですね。

事業譲渡については、会社法467条以下に少し規定がありますね。法では「効力発生日」と記載されていますが、その前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならないと記載されていますが、一般的には小規模な事業譲渡が多いですから、当該行為に係る契約の承認は取締役会承認が多いですね。

○ 法では「前日までに」とされていますが、独禁法の規制により、一定規模以上のものは届出受理の日から30日を経過するまでは事業譲受の実行はできません。注意点や、実務を知らない弁護士や法務部員がする間違いは、1)マーケットシェアーの分母をどのようにとらえるかは(例えば、外食の地域フランチャイジー等の場合は、関西地域でとらえるか、大阪府だけでとらえるか、人は毎日同じ種類の料理を食べませんから、洋食か和食か、ラーメン店はどうするか、中華は入るのか等結構難しいです)公取に事前に行って聞かないとわからないですね。2) 届出受理の日というのは、公取に届出書を持込んだ日ではないですね。持込んで公取側では、書類の不備がないかチェックしますので、その場で何時を届出受理の日にするか言ってくれますが、例えば来週の水曜日を受理の日にしますとか教えてくれます。従い、45日ぐらいかかりますね。3) 届出書には、譲渡側・譲受側の種々の書類(契約書の写し、定款、1%以上保有の株主名簿、事業報告書、承認決議の写し等)が必要ですが、時々契約書に譲渡側の責任で届出を行う事等と記載しています。これなど独禁法の趣旨を全く理解していないですね。これは企業結合規制ですから譲受側の義務です。勿論両者が協力しないと作成できませんけれども。

○ たまに事業譲渡契約ではなく、事業移設契約というのがあります。一部事業を他社に移設する契約ですね。譲渡する事業が、譲渡会社の一部の土地・建物・設備を使用しているものの、これを分割譲渡出来ない場合、譲受ける会社側で新規設備を建設する場合もあるのですが、既存の設備を譲り受け、解体移設する場合もあります。当然、土地は持っていけませんの、一般的には製造設備一式、関連知財、移設先での技術支援(設置・試験運転稼働立上げ)、関連契約の地位譲渡等で構成されます。これは事業譲渡ではないので、競業避止義務はないですね。譲渡側に競業避止義務を課すことは、不公正な取引方法の拘束条件付き取引ですので、記載できませんね。でも、設備を売却すれば譲渡側が実際行う筈ないですね。


○ 事業移設契約で、クロージング日を記載している契約があります。移設する設備等をクロージング日に譲渡するのでしょうか?不思議な考え方です。設備は、既に解体されて譲受会社に設置されて、技術支援を受けて稼働できる状態になっています。でも譲渡前日までは譲渡会社の帳簿に記載することになります。所有権が移っていないからですね。相手に引渡すが自分のものですから寄託契約、火災保険付保等も要りますね。事業移設契約というのは、事業を構成しているものをバラバラに解体して、一塊ずつ売却するものですね。従い、財産の譲渡日は、譲渡する財産(貸借対照表の一部)ごとに別々の方がわかりやすいですね。


○ 事業移設契約でも、譲渡会社の財務諸表は真実正確であることの表明・保証を求めている契約もあります。しかし、対象財産だけで良いだけですね。米国のM&Aの表明・保証条項をまねしていますね。

○ ではなぜ、事業移設を事業譲渡と勘違いして契約書を作成するのでしょうか?これは簡単です。事業譲渡というものが何かの基本を理解していないからですね。そもそも「事業」とは何かという事ですね。「事業とは、人・モノ・金・技術を有機一体として機能させ収益(PL的なFlowの考え方)を得るもの」ですね。ですからクロージング日で区切りますが、Flowの収益力は継続する。この収益力が譲受側に移らないと、譲受側としては暖簾代(営業権の対価)としては払えないですね。譲受側は、これを5年均等額償却します。つまり、StockであるBSとFlowである収益力をセットで、通常はその事業に従事している人を移籍・出向の形態で譲渡する。これが事業譲渡です。従い、事業移設契約ではのれんは移転しません。
では暖簾(営業権)とは何かですが、最高裁判例(S51.7.13裁判集民118号267頁)では「他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」と言っています。超過収益力という税法の考え方ですね。「財産的価値」というのは少し不正確ですね。財産とは静止状態であり、flowである収益力が暖簾です。これが組み合わさって事業譲渡となりますが、ばらばらの場合は事業移設契約ですね。

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海外合弁会社等への派遣契約について

2018-07-09 20:23:11 | 商事法務
○ 海外の100%子会社へ従業員を派遣するときは、100%子会社ですので、現地の労働法の枠内(休日の規定など)ですが、かなり自由に派遣・出向契約を締結することができますね。しかし、従業員の出向契約、あるいは経営者を外国企業(派遣国)との合弁会社に派遣するときは、やはり、派遣先の合弁会社、出向元の株主、それと派遣される従業員との3社契約で、種々の取決めをする必要がありますね。では、どういった定めをするか考えてみましょう。

派遣元の会社が派遣する旨、及び派遣期間の規定が必要ですね。取締役の派遣の場合は、合弁会社での総会決議が必要ですね。これは通常は合弁契約に取締役の指名権という形で記載され、それに基づき派遣する契約です。また、総会決議では報酬額の承認も必要ですね。合弁契約にはCEO等の役職の指名権等も記載されますので、取締役会決議なども必要です。派遣の前提として、有効なVisa取得を条件とします。

派遣先・合弁会社での勤務場所、職務・役職・勤務時間・報告先の記載が必要です。役員ではなく従業員としての派遣の場合は、給与・賞与の額とその支払をどうするのか、特に日本人の場合は、毎年の昇給・昇格等を、どのように合弁会社に負担してもらうのかの記載もします。先進国なら、合弁先が出向者の給与を100%負担することも可能ですが、発展途上国の場合は、どうしても出向元の補填などを、日本払給与として出向者の日本の口座に振り込まないといけません。

出向者は、現地で、全世界所得の税務申告が必要になりますので、それをどうするのか、誰がその経費(外部のコンサルタント会社等に作成してもらう費用)を払うのかの記載が必要です。

Fringe Benefitの記載が必要です。即ち、社宅、車(company car。日本人の運転禁止地域では運転手つき)、その他(例えばゴルフ会員権を会社が提供するか等)について規定します。また、健康保険をどうするのか、医療費は誰がどれだけ(帯同家族も含めて)負担するのかを規定します。日本の保険会社の海外旅行傷害保険でカバーするのか、カバーの範囲をどうするのかの規定もします。厚生年金保険は、出向期間中は出向元で負担しないといけないですね。まだまだ、厚生年金保険の相互承認国が少ないですから、出向者も現地の社会保険を付保する義務があるのかないのか等のチェックも必要です。

休日の規定が必要です。合弁先等はその会社の休日・休暇規定があります。新設会社の場合は、そういった規定も作ります。しかし、出向元のルールもあります。特に、Expatriate(出向者)特例も必要ですね。給与でも、Expatriate Allowanceを設けて、合弁先給与体系に+αを加えることもよくあることですね。また、出向者(+家族)には、1年とか2年に1度は、出向元費用で、日本なりに戻して、健康診断を受けてもらうようにしないといけません。出向元の義務ですね。

引越費用負担をどうするのかの規定も必要です。普通は、赴任の時は出向元が負担、帰任の時は出向先合弁会社が負担します。但し、一定の容積(急ぎの飛行機の場合と船の場合)内に制限します。これに関連しますが、赴任・帰任のときに、荷物が到着あるいは出荷後、ホテルに宿泊せざるを得ないですから、その費用は、会社が一定額まで負担すると規定する場合が多いと思います。

⑦ その他、出向契約では規定しませんが、現地で日本人学校の入学金・授業料、あるいはアメリカンスクールの費用は、誰が負担するのか等も、出向元の企業はきちんと決めておかないといけません。非常に高額ですから安月給の日本人出向者へは、やはり出向元の、一定額までの支援が必要です。通常は日本人学校の場合は、経費の全部(又は一定額の個人負担額を超える額)は出向元ですが、アメリカンスクールは高額ですから、一定額迄は出向元負担で、それを超える額は出向者の個人負担になると思います。



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LLC Operating Agreementについて

2018-06-08 23:52:15 | 商事法務
○ LLCについては、IRSの定める一定の要件を満たせば税金をpass throughできるということ、また 現物出資や組織運営を自由設計できるということで、米国で広く普及していますね。今回はpass throughの話ではなく、経営(Operating)契約についてです。LLCの法律では、一般的に取締役をManager、株主をMemberと呼んでいますので、以下でもその用法に従います。

○ LLCを2社以上で設立する場合は、株式会社で言えば(会社設立型の)合弁契約(JVA)ですね。この他に、当然会社ですから定款の作成が必要です。株式会社と同様LLCも1社でも設立できますね。その場合もLLCをどのように組織運営していくかを定めるためにOperating Agreementを、100% Equity Holderとの間で締結します。では、そのOperating Agreementでは、大体何を記載するのでしょうか?

○ まず1)定義ですね。次は、会社ですので、2)その組織概要を記載します。
例えば、FORMATION. The Members have formed a Delaware limited liability company under the laws of the State of Delaware by filing the Certificate with the Delaware Secretary of State and entering into this Agreement, which Agreement shall be deemed effective as of the date the Certificate was so filed.ですね。それに加えて、会社の目的等を記載します。

○ 3) 出資の内容 – 別に現金Cash Contributionのみではなく、権利・知的財産等を現物出資できますので、そういった出資額・財産を記載します。複数の出資者の場合で、Pass through税務を考える場合には、当然、出資者毎の資本勘定(Capital Account for each Member)を設けることも記載することがあります。

○ 4)としては、出資者(Member)の有限責任、追加の出資者を認めるか、認める場合の条件等を記載しますし、また出資者の議決権、出資者総会等について記載します。JVAの株主総会の規定のLLC版ですね。

○ 5) としては、会社の運営について記載します。株式会社で言えば取締役会ですね。LLCですのでManagement Committeeとか、Manager’s Meeting等と言います。
Manager (Committee member)の人数、指名・解任、任期、Committeeの権限、欠員の処理等、年次計画・予算の決定や責任等、会社のOfficerの選定・解職等を記載します。

○ 6)としては、利益分配、損失処理等を記載しますね。

○ 7)会社設立のJVAでは、株主に一定期間の持分売却の禁止規定を置きますが、その後は他方株主へ優先買取権を与え、それでダメなら第三者への売却を認める場合がありますね。LLCのOperating Agreementでも同じですね。あるいはPut OptionやCall Optionを記載する場合もありますね。

○ 8)は会計、記録、Memberへの報告、Memberの検査権限等

○ その他解散・清算とその時の分配、守秘義務、(米国では結構多い)人材引き抜き禁止、表明保証、特定履行、その他の一般条項等の規定が入りますね。
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現物出資契約(Contribution Agreement)について

2018-05-26 00:12:15 | M&A
○ 日本では、現物出資を行うには、原則は裁判所の選任する検査役の調査ですね。外国では、その価値について監査人の証明書等を要求しているところもあるようですが、単なる説明だけでも大丈夫の国もあるようです。現物出資のメリットとして、資産を出資して株式を取得する事ですが、資産の価格と言うのは、人によって判断が違いますし、評価会社を起用しても、誰がその評価会社の報酬・費用を負担するかによっても違いますね。評価会社が、お客さんの意向を忖度するのですね。あるいははっきり言うお客の場合は、低い(あるいは高い)価格の方が良いんだよ等言われると、どうしてもその言葉に影響されますね。勿論、現物出資の受入会社が、現金増資して、そのお金で資産を買えば、同じ結果になるのですけども。

現物出資契約(Contribution Agreement)は、既存企業が、一部部門をspin offして、他社と合弁会社を作る時などに利用できるのですが、日本では検査役の調査などがネックになり、あまり見られませんね。また、国境を超える資産譲渡をして株式・持ち分を取得というのも難しいですね。特に資産が不動産の場合は、動かせませんね。中国では、土地の使用権を現物出資することも昔は結構ありましたが、二束三文の土地にバカ高い価格を付けて現物出資し、日本側には、お金(cash injection)を出させるのもよくありましたね。最も、土地を現物出資して、持分取得ではなく、賃料を20年間支払えという合作という方式もありますね。尚、現物出資=Contribution in kind, 現金出資はCash Contributionで、両方とも実はContribution Agreementなのですが、増資引受等の場合は、株式取得が前面に出ますのでContribution Agreementとは言わないようですね。

○ 今回は、米国で一般的な現物出資(資産・負債)契約の条項、及び日本企業もよく使う、株式・持ち分の適格現物出資(簿価⇒簿価、即ち課税の繰り延べ)などについて述べてみましょう。
1) 米国の現物出資契約で、資産・負債を出資する場合の条項では、Contribution and Assumptionの内容を記載します。そしてExhibitにContributed Assets、Excluded Assets、Assumed Liabilities、出資者がRetainする Liabilitiesを記載します。負債も承継しますので、資産マイナス負債=純資産で、これを株式にして出資者に割り当てるのですね。こう書くと、米国でAsset DealのM&Aをされた人ならすぐわかりますが、これはasset dealの書き方と同じですね。ただ、その対価をお金でもらうのではなくて株式でもらうのですね。

2) Considerationは株式ですね。しかし、お金と株式の組み合わせも時々あります。

3) Closing & Closing Dateを決めます。現物出資の実行日ですね。
身内の企業間の現物出資契約なら、上記に少し一般条項を加えておけばいいのですが、あまり親しくない企業の場合には、通常のM&Aと同じ条項が入りますね。即ち、以下です。

4) 資産提供者(売主)のRep & Warranty ですね。20-30項目ぐらいを記載します。契約締結日&Closing現在、真実正確という条項ですね。

5) 買主のRep & Warrantyも当然入ります。

6) 資産と負債を譲渡するということは、それらを使って事業を継続して行うということです。従い、従業員の雇用契約を承継することもあります。ということは、年金をどうする、その他のBenefitはどうするかも決めないといけません。これが大変なんですね。ということは、asset dealで、従業員を承継するのと同じなのですね。

7) Rep & Warrantyが入れば、当然Indemnification条項が入ります。またClosing DateまでのCovenants等も入りますね。

適格現物出資では、既存の子会社の株式等を、新設の地域統括会社等に移しますね。この際の要注意は、中国等の子会社の持分を新設の傘型(投資)公司に移す場合ですね。中国では、ご承知の通り対象会社の持分が増えておれば、10%のキャピタルゲイン課税が発生します。そのキャピタルゲイン課税をなくし、簿価⇒簿価で譲渡できる特例が、中国でもあるのですが、流石守銭奴の国の中国ですから、この課税の特例を利用するには、種々の書類の作成、税務局への提出・承認が必要ですね。相変わらず、中国は手続きが、米国などの3-5倍かかりますね。
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日本の風土と実態を無視したガバナンス改革

2018-04-30 08:11:37 | 企業一般
〇 日本の会社法は、ドイツ会社法を参考にして制定され、これに戦後GHQの指令に基づきアメリカの制度(授権資本制度等)を一部導入しました。いつの時代にも企業不祥事があり1990代には、監査役の任期を2年から3年・4年と、まったく小手先の意味のない変更をしたりしていました。2000年代に入り米国が自国のガバナンスを金の力(米国系Fund等の機関投資家)で世界中に輸出し始めました。

ということで、猿真似日本の法制審議会会社法制部会では、H13年に米国では証券取引所ルールである委員会等設置会社制度(今では「等」がなくなり、現在では指名委員会等設置会社と名称変更)を導入しましたが、東芝の例を見ても今一つ機能していません。ということで、またまた付け刃の監査等委員会設置会社という制度を設けましたね。

日本の会社の実態を把握せずに、思想も・理念もなく、小手先の変更です。法制審議会の委員は日本の会社の実態を踏まえた哲学というものがないのではないでしょうか。

〇 米国の上場企業では、毎年取締役を選任します。取締役会の過半数は社外取締役です。委員会も、日本の制度では報酬・指名・監査委員会(過半数が社外取締役。米国では全員社外)と硬直的ですが、別に他の委員会を組成しても良いですね。米国では、取締役の内1名がCEOで執行責任者となる例がおおいですが、原則officerは執行役であり取締役ではないですね。意思決定と執行は、きちんと分離されています。ところが、日本の監査役会設置会社では意思決定と執行役は分離されていません。

〇ドイツでは、株主総会は監査役会のメンバーを選任しますしかし、監査役会には労働者の代表を大企業では半分、中企業では1/3入れなければならないですね。共同決定法ですね。そして、取締役の選任・解任は監査役会が決めます取締役会が業務の意思決定と執行を行います。日本の会社は、ご承知の通り取締役会が意思決定を行い、取締役兼執行役が業務の執行を行います。ドイツの監査役会は、取締役の業務執行について同意権を留保できます。昔、三菱自動車へ出資を決めたベンツの監査役会が、同意できないということで、つぶれて、やむなく三菱グループが三菱自動車に出資しましたが、隠ぺい体質が変わらず(雪印も)ついに日産傘下に下りました。

〇 私は、取締役会と監査役会に労働者代表を入れるのが、日本としては良いのではないかと思っています。社長の覚えめでたい人だけで固めた取締役会では、社長の発言が一番重たいですね。確かに、うるさい社外取締役を入れれば、取締役会も少しは活性化する効用があるかもしれません(H26年改正では社外取締役導入の義務化は延期されました)、しかし所詮社外取締役は、お飾りであり、ほとんど発言もしない人に不相当な報酬を払っています。日本の企業社会の経営陣の流動性は、米国と比べて非常に少ない。経営陣は内部昇格が多い。監査役も監査役会の同意を得る必要があるとはいえ、結局社長・会長の意向を踏まえて指名され、形式的に総会で選任される。法制審議会等は、こういった実態を踏まえて、取締役会を活性化させるにはどうすればよいのかという議論よりも、外国の制度はどうなっているかを見て、その猿真似をする体質です。監査等委員である取締役の指名も結局現在の経営陣ですね(任期は2年で解任は特別決議という、相変わらずのこて先遊び)。監査役は、労働者・従業員・組合側が選任するとすれば良いのではないでしょうか。社長になれなかったといっても、社長などは上司の引き立てと巡り合わせと運なんですね。優秀な人でも冷や飯を食っている人も多くいます。こういう人を監査役にすると、取締役会も活性化すると思います。

〇法制審議会では社外取締役の機能を以下のように考えているようです。
1) 経営効率向上の助言:経営効率って何?あほかいな、そんなもん向上などするかいな。
2) 経営全般の監督機能:裏で不祥事はされるのです。取締役になれなかった社員を入れた方が、いろいろ社長ルートと違うルートで社内の動きの情報がはいりますね。
3) 利益相反の監督機能。
以上3つの機能は、企業の実態を知らない人が、社外取締役導入論を正当化するために考えた作文ですね。

○ 社外取締役の実態については、以下が多いのではないでしょうか。
1) 必ずしも独立取締役ではない。ビジネス・事業に関連する取引先の役員等が多い。
2) 必ずしも毎回出席しない。
3) 事前の配布資料もきちんと読まないし、読んでいる時間も無い。
4) 社外取締役になった企業の実態を十分理解していない。
5) 取締役会に出席しても、殆ど発言しない。お付き合いの一種の参加ですから。
6) 取締役会は、既に決まっていることを、形式的に承認する機関となっており、十分な議論もされないし、社外取締役がどれだけ議事内容を理解しているのか疑問もあります。また不祥事は、陰でされるので、オフィシャルな取締役会で発覚などあり得ないですね。法制審議会会社法制部会の皆さんは、部会員をやめたら、社外取締役の声がかかります。一人3-4社かけもちすれば、年間2-3千万円の、ほぼ不労所得が得られますね。こんな人を社外役員に指名してはいけません。

〇社外取締役の報酬
年12-13回の取締役会。社外取締役の報酬は不当に高いです。自分の働きと発言・機能に照らして、これほどぼろい収入はありません。年1000万円とすれば、1回で80万円、一回の取締役会の発言が5分とすると1分16万円。なかには殆ど発言しない社外取締役もいます。もうドロボーですね。
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M&A Closing時等の注意事項

2018-03-02 23:38:12 | M&A
○ 株式買収のClosingの手続き及び注意事項です。
Closing DateにClosingを実行、即ち買主が代金を支払う前提条件(Conditions Precedent to Obligation of the Buyer)は、SPAに記載しますね。主な条件としては以下です。1) Accuracy of Representations and Warranties, 2) Performance by the Sellers(Closingまでに一定の事項を売主側が行う事項の実行), 3) Corporate Proceedings(株式譲渡・役員変更等の手続き), 4) No Injunction, 5) (実行に必要な)Approvals and Consents(の取得)、6) (必要な株主異動等の) Registration、7) Transaction Documents (株式一部取得の場合の合弁契約、原料供給、継続販売契約等締結)、8) No Material Adverse Effectぐらいですね。
この中で落とし穴になりがちなのが1) 売主の表明・保証(Rep. & Warranty)ですね。契約締結時及びClosing Date現在有効(契約締結からClosingまでずっと有効と記載する人もいる)としますね。2) Performance by the Sellersと8) No Material Adverse Effect ぐらいでしょうか。それとClosing後、暫く立って(1-2年ぐらいのときもある)、買収会社の役員が、「何かおかしい」として、indemnificationの対象とする事項ですね。

○上記の内、2) Performance by the Sellers や5)Approvals and Consentsは、比較的買主に見えますね。許認可が不備の場合には、それを取得し証明書等を買主に提出します。そうでないと、買主もお金が払えませんね。私が関与した案件では、従業員の一部が有効な労働Visaがなかったので、closingまでに全員解雇という条件もありました。Operationに支障を生じますしね、売主も大変ですが、お金をもらう以上、きれいにして経営を渡す必要がありますね。

○ Closing Dateには、売主側が、株券・証明書その他種々の書類を買主側に交付、これに対して代金を支払う事により行われます。例えば、SPAに以下のように規定します(実例をかなり簡略化し変更しています)。
On the Closing Date, the Sellers shall deliver to the Buyer:

(a) original share certificates representing the Sale Shares, duly endorsed to transfer to the Buyer

(b) certified true copies of the resolutions passed by the Board (i) approve the transactions contemplated by this Agreement;(ii) approve the resignation of the existing directors with effect from the Closing Date;(iii) approve the Company’s entry into Transaction Documents.この他に、登記所への登記等を記載することもあります。

(c) certified true copy of the resolution passed by shareholders of the Company (i) approving the amendments to the 定款, (ii) appointing the persons nominated by the Buyer as directors of the Company with effect from the Closing Date and (iii) approving the transactions contemplated by this Agreement.

(d) duly executed resignation letters of the existing directors of the Company stating their resignation as directors of the Company with effect from the Closing Date.

(e) certificate signed by the Sellers issued in favor of the Buyer confirming the following:(i) no event, change or any development that has resulted in or is likely to result in a Material Adverse Effect has occurred on or prior to the Closing Date.(ii) to the best knowledge of the Sellers, the warranties provided by the Sellers remain true, accurate and correct in any respect as at the Closing Date;(iii) no Insolvency Event has occurred in respect of the Sellers.(iv) none of the covenants, obligations and undertakings of the Sellers hereunder have been breached in any respect (Covenants = closing前に給与を上げたりしない等いろんなCovenantsを入れます)

(f) copies of such other approvals required to be obtained by the Sellers or the Company.

○ この中で注意すべき点は以下ですね。
Closing Dateまでは、売主側の経営であり、その後買主側の経営陣が買収企業に派遣されますが、買収企業の内部の事は、その会社に入って半年・1年しないとよくわからないのが普通です。
また、米国などはclosingまでは、当事者間で協調的行為・情報交換を制限するgun jumping規制もあります。

1) Disclosure Scheduleで、ライセンスがpendingとか更新手続き中と記載あるものを、Closing直前に再度チェックしない。これは注意深いFAや法律事務所ならきちんとする事ですが、実際はそんなきちんとしたFA等はいません。

2) Material Adverse Effectが起こっているかどうかは、売主側の判断が入る部分で、台風が来て工場がつぶれた等誰でもわかること以外は、売主側がきちんと言わない。特に、環境規制等を守っていなくても操業自体に支障をきたさないときは、売主はそんなことを買主には言わないということです

3) M&AのDDでチェックしても、細かいことまでわかりません。チェックしたと言っても、縁の下のごみ、箪笥の裏まで調べられません。なんとなく隠している、不適正経理処理等のことは、買収側の人がその企業に行ってから半年から1年ぐらいたって、どうもおかしいとにおいがするものです。特に、現地語もわからない、言葉もろくにしゃべれない日本人が行って見つけられるもの(微妙なものが多い)は限られますね。

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コンサルタントの起用

2018-02-22 20:46:37 | 企業一般
○ ビジネスを行っていると、自社リソースだけでは不十分、また新規分野、プロジェクトやM&Aなどの場合は専門家も不足ということで、都度専門家をコンサルタントして起用し、調査レポート等を入手することがあります。中には、コンサルタントに丸投げして、そのアドバイス通り行おうとする役員もいますね。自分の頭で考えない、コンサルタントのコメントや調査は一つの参考として利用するのが良いのですが、コンサルタントに稟議書の一部まで書かせて、コンサルタントのコメントを自分の意見のように言うアホ経営者もいますね。

○ コンサルタントは専門家とか思っている人が多いですね。専門家でもなんでもありません。ただ、日本のコンサルタントは、一般的に一生懸命やりますから、また業務着手にあたり依頼主等からいろいろ情報収集しますから、すぐに依頼主の知識レベルに行きます。私も昔コンサルタントをしたときに、有名なコンサルタントからコツを聞きました。
彼は、お客からいろいろ聞きだし、2週間でお客のレベルに達する事と言っていました。
つまり、コンサルタントは専門家ではありません。

○ 例えば市場調査など、各種データを集めてきれいに見やすくまとめて調査報告書を作成してくれます。しかし、ここに大きな間違いと誤解があります。コンサルタントは、普通の人より多少データの集め方やパワーポイントの作成が上手いかもしれませんが、一定の分野の調査レポートでは、その分野の知見があるわけでもないですね。証券アナリストのように、特定の業界・会社を常時チェックしているわけでもないですね。要するに、ポイントは、一生懸命やってくれるかどうかということ、即ち自分でも一生懸命やれば、同じようなことはできるのですね。

○ コンサルタントを起用する場合には、提案書等をみて、それなりにやってくれそうなら、自分では時間もないので、お願いすることになります。するとコンサルタントから契約書のドラフトが送ってきます。コンサルタントの契約の特徴は、

1) 善管注意義務を負って調査報告書を作成しますが、それ以外には一切責任を負わないと明記しているのが一般です。コンサルタントが責任を負わないのは当たり前でわかっているのですが、はっきり契約書に、これ以外は一切の保証は行わないと記載してと言われると違和感を覚えますね。昔、ATカニとかエビとか言う会社が、これからの商社像について、何億円ももらって会社改造のレポートを書きました。結論として、これからは、日本の商社もエンロンのような、Hybrid商社を目指すべきだという報告書を出したら、その直後にエンロンの不正・でたらめが表に出ました。調査会社の報告書というのは、その程度のものだし、責任も負いません。

2) 故意・重過失以外は損害賠償額の最大額は、受領した報酬額を限度とするという規定が入ります。まあ、これは仕方がないですね、ソフトウェア開発等の契約と同じですね。

3) コンサルタントの契約書では、その内容の一部を将来の類似の調査依頼に使えるように著作権は、コンサル会社に帰属すると明記する場合も多いですね。調査報告書の完成・交付時点で、著作権はお金を払う顧客に移転するというのが原則なのですが、まあ別に、将来類似のコンサルを受注した時のために、一部ぐらいなら流用しても良いのですが、はっきり権利はコンサル会社にありと明記する場合があります。がめついですね。権利は自分、責任・保証は負わない、お金はしっかり払えというのが一般的ですね。

○ 調査報告書は、依頼した人・部署の一部の人が読んだり利用したら、それでファイルしてしまってしまう例が多いですね。2度と日の目を見ないですね。しかしコンサルタントなら、一部を利用する機会がありますね。コンサルタントに著作権等の権利を認めるときは、その内容の一部を利用して他社から収益を得ることができますので、著作権の帰属をコンサル会社に認めるときは、必ず値切りましょう。30%ぐらい値引き要求だしては如何でしょうか。

○ M&A等の場合もコンサルタント(FA=Financial Advisor)を起用します。米国のInvestment BankやFAと同じ、米国かぶれの理屈をこねます。Fairness Opinion等も発行します。自分で経済計算しておいて、それはFairです等とよく言えたものですね。それで追加の金をとります。また、最近ではStock DealでもPPA(Purchase Price Adjustment =価格の事後調整)の条項を入れたがります。
EBITDAのmultipleと、それが適正であるかのようなDCFの数字を作って、顧客に提示します。また米国などでは、それがFAのやり方の共通言語ですから、止むを得ない場合もあるのですが、買収価格など「えいやー」で決まるのに、DA締結日からclosingまでのcash flow等をもとに、買収価格を調整する条項を入れたがります。

Closing Dateをもって、買収価格をfinalにするというのは理論的には正しいです。しかし、実務的には150%誤りです。
-えいやーで決めた価格に+/-の厳密計算して意味があるのですか?砂上に楼閣を築く考え方です。
-事後調整など、双方がいろいろ主張してスムーズに行く筈ないのが、ビジネスの常識です。
-株主総会の決議は、総会開催日の株主が議決権を行使するのが理論的ですが、世の中ではそんなことやっていませんね(米国でもrecord dateです)
GCA等に丸投げして、アドバイスしてもらって、その通りに弁護士がSPAを作成、Closing後3か月内にPPAを行うことになっていた案件が、9か月もかかってSPAの価格調整方式では行わず、両者の主張を足し算して割2、別途SPAの該当規定の部分の変更契約書を作ってやったという例を聞いたことがあります。

○ 更に、ClosingのConditions precedentにきちんと記載せずSPAのScheduleに、pending・申請中のライセンス等を、Closingの時にライセンス取得済みかどうかチェックせず、買主に多額の買収資金を払わせた例もあります。後からConditions precedentが満たされていなかったことが判明した事例ですね。勿論アドバイザーは一切責任を負いません。Closing後に買主は駐在員を派遣します。それまでは売主側の経営陣の経営です。売主は、closing時点で、再度rep & warrantyが満たされている証明書を発行しますが、ほんとに満たされているか、ここがBuyer’s repの結構キーポイントのチェック事項なのに、きちんと裏付けがあるかなどチェックしません。満たしているよと書いている書類を、形式的に渡せば売主はxx億円という買収金額がもらえるわけで、売主・買主のFAも高い報酬を手にしますね。

○ コンサルタントやアドバイザー等の言う事は、単なる参考にする、またうまく使いこなすことが重要です。任せるのではなく、「任せて任せず」ということ、起用する側は自分の頭でよく考えるという基本に従うことがお勧めですね。
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子会社への親子ローンとDES

2018-02-10 00:16:05 | 企業一般
○ 事業拡大の為に、インド等の新興国に子会社等を設立して、製造拠点を設立、製品販売に乗り出さざるを得ない状況ですね。海外で子会社を設立しても人材不足などもありますが、当然予定通り事業が立ち上がることなどありえません。ということで、事業が黒字になれば返済も可能になると考え(希望的に想像して)親子ローンを供与(インドの場合は中銀規制のECB loan)を行います。

○ ところが、これまた予定通り返せないことが生じます。先日インド関連のセミナーに行ったら、日系企業は、何年ぐらいで黒字になっていますかという質問があり、まあ数年~7年ぐらいでしょうかという回答がありました。事業計画では、普通事業開始から3年目黒字、5年で累積損失一掃という希望を書いて、社内決裁を取ります。事業に困難はつきものですから、仕方ないですが、ローンでは金利負担もありますし為替リスクもあります。やはりEquityの方が、子会社にとっては楽ですね。返済しなくてもいいですから。また日系企業では、Capital Costを算出して、一定以上のReturnを求めている企業は、多分殆どないでしょうからね。

○ 子会社の立場から言えば、借金に返済の追われるより、Equityにして、落ち着いてビジネスに専念できる方が良いですね。

○ というわけで、親子ローンをEquityにする、あるいはせざるを得ない場合もありますね。まあ、最初から多分ローン返済は無理かもというときは、Convertible Bondを低金利で子会社に発行してもらうという方法もありますが、普通株ではなく、優先株だと柔軟性ある設計ができますね。優先株の場合の利点を挙げてみましょう。

1) 株式ですから、基本利益が無ければ配当しなくても良いですね。米国などの無額面優先株だと資本剰余金等も配当できますが、配当可能利益の規制のある国もありますので、実際配当を行う時には、子会社所在の国の会社法等の規制を守る必要がありますけれども。

2) 利益がでれば償還できる償還株式=Redeemable Stockの発行も、各国の会社法で認められておれば可能ですね。

3) その他、 累積的・非累積的(non-cumulative)とか、普通株配当を行う場合にその配当に参加できる参加的・非参加的( non-participating)な優先株式もあります。

4) 米国のVenture Capital等は、がめついですから、残余財産優先(liquidation preference)の優先株もありますが、4x (times)つまり普通株株主よりも4倍も多くの残余財産分配可能な条件で投資することもありますね。

5) Convertible to common stockもできますね。即ち一定の事項があれば、優先株を普通株にも転換できる株式も発行できるというとこですね。

○ 優先株を親子で発行する場合でも、親子間で優先株発行の契約を結ぶ。そういった優先株を会社として発行するためには、その内容を定款に記載する必要があります。即ち株主総会の承認が必要ですね。でも、最近は株主総会も書面だけでできる、あるいはInternet TV等で開催すれば有効とする会社法の国が増えてきましたので、だんだんやりやすくなりましたね。

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日本企業のインドでの税務申告

2018-01-20 00:09:40 | 企業一般
〇 経済産業省が公表している「新興国における課税問題の事例」として問題の多い国として、税務署職員にノルマを課し、現場も恣意的に解釈して税金を取りに来る中国が一番になっていますが、次に多いのはインドですね。インドでは、移転価格やPE問題も注意しないといけないのですが、税務の執行・手続きの問題として、例えばインドの合弁子会社等の企業から源泉徴収の対象となる支払いを受ける場合、PAN(Permanent Account Number)を取得しなければ租税条約が適用されず、インド国内法の源泉税率が適用される。PANを取得すると、PEの有無にかかわらずインドでの税務申告が、日本企業側に義務づけられ負担が大きいと解説しています。

〇 インドの人口は、13.9億の中国に次ぎ、約13.2億人ぐらいになったといわれています。経済成長率も2016年は7.1%であり、これに魅力を感じた日本企業が、現地に子会社・合弁会社を設立し事業の拡大を考えていますね。日本のインド大使館も領事館も、インドの各州の投資振興部局も外資導入に積極的で、地方も含めて各地で投資セミナーを開催しています。昔、中国でも「熱烈歓迎=いらしゃい いらしゃい」していましたね。中国投資がうまくいかず、撤退しようにも簡単に撤退できず、残余財産の日本への送金許可もおりず、いったんお金を中国にいれると利益配当は別として、多額の解雇保証金とか散々吸い取られますが、インドではまだ進出企業も多くないですから撤退の数としては少ないようです。インドは、進出機運としては、20年前の中国ですね。甘い誘致・投資勧誘に乗って、1年で工場作るぞといき込んでも、まあ実際は倍の2年かかるのが普通ですね。インドに進出すれば当然現地の子会社も苦労しますが、日本の親会社側もこれに付き合わされます。上記の通り、日本企業側でもインドの税務当局への税務申告が発生します。具体的な例として、例えば現地合弁企業に技術支援を行い、その支援料を現地企業が、日本の親会社に支払うとき、租税条約に則り10%の軽減税率の源泉税を現地で納めますが、そのためには日本企業側でインド税務当局の税務登録番号であるPANを取得し、また税務申告をしなければなりません。

〇 PANは企業だけでなく、その税務申告書に署名する人(インド内企業は取締役ですが)、外国企業の場合には、担当の課長などでもOKですが、その人のPANも取得しないといけません。更に、申告書の署名は電子署名ですから、それの取得即ちDSC(Digital Signature Certificate)も取得が必要です(DSCは、2年ごと更新)。このPANとDSCを取得の上、毎年、日本企業がインドの税務当局に税務申告書を作成・提出します。
といっても日本企業がインドの税務申告書を記載できるわけでもなく、現地の監査法人の税務部門などと契約して申告書を作成してもらうことになります。


〇 インドの財務会計年度及び税務会計年度は、4-3月です。日本のような確定決算主義ではないです。インド国内企業は、当然BS,PLなどの明細を申告書に記載します。日本(外国)企業のインド税務局への申告書も同じ申告用紙ですが、インドと例えば日本の親会社間の取引の明細・益金・源泉税の明細(TDS)等の部分だけが記載する内容になります。勿論、日本の親会社がどんな会社か、役員明細・住所、親会社の子会社一覧なども記載事項となります。

インド子会社は3月決算で、親会社の税務申告は、勅許会計士の証明書を取得する場合は11月末が期限です。結論を先に言いますと、作成し提出(インターネット提出で申告書はXBLで行います)する必要のある書類は以下です。
・3CEB(勅許会計士証明書)-税務申告書提出前に提出
・税務申告書作成・提出
・TP Memo (移転価格レポート)作成―このMemoは、当局への提出は不要ですが、作成して備置しておくことが、インド税法上の義務です。この書類は、別に11月までに作成しておく必要はないです。


〇 税務申告書類作成の流れは以下です。

3月 現地合弁会社の決算期
9月 9月頃までに、前年4月から当年3月までの、インド会社との取引(資本取引の明   細を含む)の全てをリストアップしておく。また、現地での源泉税納入(3か月単位)の際に作成するTDS(日本側はこれで税額控除を受ける)も整理しておく。そのうえで現地の監査法人の税務部門に、税務申告書作成依頼をして、そこと契約締結する。
9~10月  リストアップした資料と関係書類を、現地のへ送付。それを見て現地税務事務受託会社との間で、やり取りを行う。

11月 申告書、3CEB(会計士証明書)のDRAFTをチェック&内容を確認する。⇒現地税務当局に電子書類を提出(紙の書類での提出はできません。全て電子書類提出です)
11月以降 TP Memoを作成し、備置しておく。

尚、書類の保管期間は9年間です。


その他の必要書類は、日本側の企業が日本の企業であり、日印租税条約の対象である旨を証明するために、日本の税務当局から居住者証明書を取得して送る必要もありますね。


まあ、それぐらいでしょうか。
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米国拝金主義の終焉を願って

2017-12-23 10:38:53 | 企業一般
○ Johnson & Johnson(J&J)のOur Credo(わが信条)
J&Jは、Our Credoで、企業責任を定めています。
・第一の責任は、お客様(医師・看護師・患者等)に対する責任。
・第二の責任は、J&Jの社員に対する責任。
・第三の責任は、社会に対する責任。
・そして、最後の責任として株主に対して、健全な利益を生む、即ちこれによって配当を支払う事を上げています。米国企業にも拘わらずJ&Jは、健全な考え方をしていますね。日本でも、近江商人の考え方に「三方よし」、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」を挙げています。

○会社は株主のもの?
米国では会社は株主のものと考えている人が多いです。違いますね。
1) 米国では機関投資家に加えて、個人株主も多いし、従業員・役員等のESOPやその他のstock optionもあります。日本も米国の機関投資家等が投資しています。一方日本企業の従業員も持株会がありますが、1-2万円/月の拠出では、1単元株取得するのにも時間がかかります。従業員の自社株保有は、ほんの少しですね。
機関投資家とそれを取り巻く金融業界は、当然企業は株主のものという傲慢な主張です。
しかし、株式・株主権の中心は、議決に参加できる、配当を受けとることができるということであり、会社法に会社は株主のものという規定はありません。
株式を持っている人は株主ですね。では「株式とは、株主の会社に対する社員としての地位を細分化したものであり、通常の債権とは異なる。」即ち特殊な債権ととらえています(いろんな考え方があります。株式社員権説。社員権否定説。株式債権説。株式会社財団説等があります)株式を、物権である所有権という見方はしていません。
金を持って(従い力が強い)いる人の勝手な屁理屈です。

2) BSの借方を見ると、流動資産、即ちお客様に提供する商品、提供した後の売掛金、商品を作るための原材料が記載され、固定資産は、こういった商品を生産するための資産が表示されます。貸方は、買掛金や借入等が記載され、資産マイナス負債が資本ですね。
資本金・資本剰余金は株主が拠出したものですね。しかし利益剰余金は株主が出したものでしょうか?これは、従業員の努力・汗が生み出したものです。株主が汗をかきましたでしょうか?かいていませんね。自分の努力で得たものでもないのに、株主資本だとか言っていますね。これは、奴隷が稼いだものは、自分のものと言っているのと同じではないでしょうか?米国の株主は、泥棒でしょうか?

・米国で勉強した優秀?なMBA取得者が、自分の頭で考えることなく、企業は株主のものと言っていますね。猿まね・受け売りはやめてほしいですね?

・ドイツでは、共同決定法があります。大きな規模の会社では、取締役会の上部に監査役会があり、監査役の半分は労働者の代表です(小さな会社では1/3)。株主と労働者は平等です。健全な考え方ですね。

○ でたらめな企業価値計算
企業価値の計算で資本コスト(WACC)を算出しますね。
WACC=D/(D+E)x(1-Tc)x負債コスト+E/(D+E)x株主資本コスト

全く馬鹿げた計算方法ですね。負債コストと株主資本コストの考え方の前提が全く違います。即ち1+A=15%という言い方ですね。数字とアルファベットを足して、どうして計算できるのでしょう?
a)負債コスト:
・負債は債権・債務です。返済は法律上の義務です。
・ 金利が5%なら、5%の金利・収益を得ます。
・ 期待収益ではありません。支払不能にならない限り、確実に収益を得られます。
・ 現実のキャッシュフローです。返済期日に、金利・元本が返ってきます。

b) 株主資本コスト
・株主資本は、理論上は株主資本(利益剰余金が入っているのでおかしいのですが)ですが、これは清算しない限り配分されません。日本では剰余金分配規制があります。資本金や準備金は分配出来ません。(米国では、Cash flowに影響しない場合・無額面株の場合は、あまり配当規制はありません。)
・現実のcash flowではありません。Cash flowという観点から言えば、投資金額と配当です。Capital gainは、会社と株主の関係ではありませんので考慮できません。
・配当は、経営陣の裁量・判断が働きます。総会で株主提案で可決されない限り、株主の期待通りに配当する義務はありません。

〇投資銀行の身勝手理論
・米国の投資銀行等を仲介者としてM&Aを行う場合、投資銀行等がFairness Opinion を出します。自分でやっておいて、自分でFairnessですとどうして言えるのですか?日本でも、米国のやり方の猿まねをしているGCA等のM&A仲介会社等がFairness Opinionを、がっぽり金をとって作成します。なぜ、こういった誤魔化しの不健全な考え方が蔓延するのでしょうか?

・日本も昔は、米国猿まね社会ではなかったのですが、米国が金の力で世界を支配しましたので、これに洗脳された知識人と言われる人が、米国流がいかにも優れた考え方であるという風潮を作りましたね。

・米国の大手企業が節税で、パナマ・租税回避地で税金逃れをしています。BEPSの動きもあります。企業の使命は、お客様・社会への貢献です。税金逃れをすることが社会への貢献でしょうか?こういう企業への投資は、やめてもらいたいですね。機関投資家も、儲かる企業ならどこでもよいという反社会的な考え方はやめて、これからは健全な利益を上げ、税金も支払い、環境等にfriendlyな企業への投資をしないといけないのではないでしょうか?これからは「世間良し」社会への貢献を忘れた企業は長く存続できない世の中になるのではないでしょうか。

○ドイツのシュミット元首相は、もう20-30年ほど前に(福島清彦著 ヨーロッパ型資本主義(講談社現代新書)から引用)「間違ったアメリカ流の新しいイデオロギーがある。その一つが「株主の価値」である」「株主のための価値極大化が推進されると、会社の顧客、同僚、会社の従業員に対する責任がとれないという危険があることを確認しておかなければならない」「いずれにしても、二つの基本的な認識を見失ってはならない。第一に、社会で進行する超高齢化時代にあっては、超福祉国家を作ることはできないこと、第二に、「勤労する貧困者」という新しい下層階級を出現させてはならないことである」

J&Jでは、会社の顧客、同僚、会社の従業員に対する責任を優先しています。日本も、米国の猿まねから、そろそろ脱却する考えを持つ人が増えてほしいですね。
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米国子会社役員の雇用契約書

2017-12-08 23:45:29 | 商事法務
○ 最近は、米国子会社の役員を日本からの出向者ではなく、現地で雇用して、それなりの貢献をしている現地の人にお願いする例が増えています。日本人より現地事情に通じ事業を伸ばしている人にとっては当然の処遇ですね。これからも増えると思います。
日本人出向者と同じ処遇では、当然満足してもらえません。日本人を異なる点は、1)業績評価をできるだけ客観的にすることと、2) 貢献度合いに比例したperformance bonusを毎年支給すること、それと1年ごとにperformanceを評価して、毎年雇用契約を更新することでしょうか。親の日本企業が上場企業なら、phantom stock option等の手法を使って株式報酬とすることも可能ではないかと思いますが、そういった報酬体系にしている日本企業は無いのではないかと思います。
ここでは、一般的な米国企業役員の雇用契約書の例を見てみましょう。米国企業なら、ほぼstock optionの条項が入るのですが、これを入れないがPerformance Bonusは支給するという前提で、一般的な雇用契約書の条項とはどういったものかを書いてみましょう。

○ 一般的なEmployment Agreementの条項は以下です。
1. Term.:期間ですね。2-3年でも良いのですが、毎年Performanceのreviewをするなら1年間です。但し、performance bonusは、1年の結果が出た後の評価ですから、単純に期間1-12月というわけには行きません。少なくとも経営成績の結果がでないとわからない条項は、その結果のbonus支払完了迄は、雇用契約は有効として記載しても良いですね。

2. Employment.:基本条項ですね。Position and Duties等の記載をします。

3. Compensation and Other Employment Terms. :報酬
(a) Base Salary.:年俸でも月次でもどちらでもいいですね。年俸で記載したケースは12等分して毎月支払うとします。また、subject to applicable withholdingsの記載も必要ですね。

(b) Bonus. (Performance Bonus or Bonus Plan) : この部分が役員の業績評価の部分ですね。 Target Bonusとして、目標達成の際にはBase Salaryの50% を払うとします。年俸$20万ドルなら、それに加えて$10万ドルということですね。
業績評価期間=Fiscal Yearが1-12月なら、その結果がauditedで判明する翌年3月末までに支払うと規定します。
達成すべき目標は、年度目標を話し合って決めます。現地経営者は、低い目標を出してきますので、話し合いを通じてこれを上げていきますが、それに更に+アルファを加えて利益目標等を設定するのが通常だと思います。The grant of a bonus is discretionary and subject to the conditions set forth in the plans approved by the Company. という記載もするのでが、実際はdiscretionaryという訳には行かないですね。
日本でもBonus支給は、支給日の在籍を条件にする場合が多いでしょう。従いEmployee must be an active employee in good standing on the payment date to be eligible to receive a bonus payment. という条件を入れるときもあります。翌年3月までの支払と規定しても、11月までの業績で目標達成が確実やその他の合理的理由があれば12月中に支払うときもあります。
また、事情がありfor Good Reasonなら、prorated (if and as applicable) based on the partial achievement (if any) through the termination dateということで支払う場合もあります。

(c )その他の条件は、(1) Vacation. (paid vacation)とか Unused vacation time shall be forfeited and shall not carry over to the next year.などもきちんと決めます。(2) Employee Benefits. 確定給付Defined Benefit Planや確定拠出Defined Contribution Plan(DC) =401k planの事を記載します。401kは、設計は会社がしますが、米国では個人の年金掛け金拠出が基本で、それにmatching contributionを会社がする制度ですから、日本の会社の401kとは大きく異なります。ですから、DCのことを言及するのは、会社の制度としてのDCと会社のmatching contributionのことを記載するということですね。年金以外のBenefitの件も記載しますし、家族へのbenefitも記載します。
  その他の記載事項は、(3) Business Expense Reimbursement.や(4) Key Man Insurance Policy.のことも記載することが多いでしょう。

4. Termination; 雇用契約終了時の報酬を規定します。
  雇用契約の終了の条項です。終了事由で重要な概念はGood Reason (正当事由)とCause(解雇原因)です。そのため下記のような定義を必ず入れますね。またSeveranceの定義を入れるときもありますね。
(a) Termination upon Death or Disability.も記載します。Disability.の定義を普通は記載します。
(b) (正当事由がなく)解雇原因のある場合の雇用終了の場合の報酬は、Base Salary.のみとする。
(c) (解雇原因がなく)正当事由のある場合の雇用終了の場合の報酬は、Base Salaryに加えてaccrued benefits (performance bonus等)の額も加えた額とする。

(i) "Good Reason" の定義
この雇用契約に基づく会社側の重要な契約違反、不法行為をするような会社の命令、役員の明確な事前書面同意のない降格・減給を伴う職務変更等

(ii) "Cause" の定義
当該役員の、犯罪の起訴(交通事故は除くケースが多い)、忠実義務違反、横領、詐欺、会社の重要義務の意図的懈怠、不正行為、法令違反等を列挙します。


5.その他の誓約事項:退職した場合のNon-recruitment, Non-solicitation, Non-competition and Non-disparagement Covenantsの規定も入れます。

6. その他の一般条項:Non-disclosure of Trade Secrets and Confidential Information、 Ownership of Protected Works、Rights to Materials and Return of Materials、 Compliance with Policies and Laws、税金の責任等、その他契約の一般条項

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合弁事業の立上げ

2017-11-24 23:01:14 | 商事法務
○合弁相手と合弁会社(JV)設立に合意すれば、JV会社を設立しますね。JV契約で合意した内容で定款(現地語)を作成するとともに、必要な許認可・届出を行います(JV契約の別紙に定款を添付して、確定するときもあります)。国によっては、例えばインドネシアなどのようにBKPMに承認申請して「外国投資企業設立登録証」の発行を受けて定款(登録証記載の事業内容を目的とする)を作成し、定款を含む会社設立証書を作成し公証を受けます。公証を受けた日が会社設立日になりますね。
それに続いて税務の登録(納税者番号取得)・VAT登録、銀行口座開設、その他一連の手続きがあります。

○一連の手続きが終わると、合弁で製造拠点・工場を作る場合、まず土地の確保が必要ですが、外資系企業については、土地取得に制限がある国が多いですね。また中国・ベトナムのように、所有権ではなく、使用権・借地権のみというのもあります。インドネシアでは土地の所有権はインドネシア国民のみですので、土地上での事業権・建築権・利用権等を設定しなければなりません。タイやフィリピン等も外資系企業には制限があります。しかし、インドのように、外資系企業でも所有権が取得できる国もあります。
一般的に、土地の確保は時間がかかりますし、きちんとした調査が必要です。権利関係のみならず、土地の履歴、過去の使用状況、水回り、水質調査、環境規制等調査事項が一杯あります。

土地の確保と同時並行的に、土地lay out, zoning, civil engineering, 工場設計、エンジニアリング会社・建設会社への契約・発注等、役所関係の手続きがあります。ここで重要なことは、まず予定通り工事が進行しない事です。十分余裕を持たせることが必要です。予想外の事項も起こります。インドの場合は、1年で工場を竣工させると計画しても、普通は2年かかりますね。設備機器納入・設置業者との交渉・契約も、こういった遅れも考慮して締結しましょう。

○JV会社のオフィスは、JV相手のオフィスを賃借する場合も多いですね。オフィス賃借契約、Internet環境等もJV相手の協力を得ます。最初は、人もいませんので、総務(建物建設許認可申請を含む)・経理をJV相手にお願いするManagement Service契約を結びます。

○その他の契約としては、技術支援・ライセンス契約、原料供給契約、販売契約、親子ローンの提供契約(最初は資本金で賄いますが、追って結ぶ場合もありますね。その準備ですね。)、駐在員のアパート賃借契約、出向契約等ですね。

-技術支援・ライセンス契約の注意点としては、JV会社のRoyaltyの支払は、1) 租税条約で優遇された源泉税(例えば10%に軽減されています)をJV会社が差し引いて、株主(技術支援元)に送金すること、2) JV会社は、税務当局から源泉税の納税証明書を入手(都度入手できるところもありますが、3ヶ月に一度しか出さない税務署等もあります)して技術支援元に送付して、技術支援元で税額控除を受けること、3)Royaltyと技術支援の際の経費(飛行機代、ホテル代、交通費等)を混ぜない事。経費は、Royaltyの支払請求書とは別に請求書を発行すること。経費は、立替金請求書で処理する事ですね。もし、Royaltyと経費を一つの請求書で請求すると、その金額から源泉税を引いて送金することになりますので、ややこしくなりますね。

-工場ができ製品の製造が可能な状態になる前提で、将来の原材料・製品販売のために、Offtake AgreementがJV会社と株主(その子会社)等と締結される場合があります。工場で生産された製品全ての引取の契約の際には、引取価格(そのFormula)等、継続的に少しの利益が出せる値決めが重要ですね。仮にJV会社に、多くの利益が出るようでしたら配当金で株主に戻せばいいことですね。

-新設JV会社に、すぐにお金を貸してくれる銀行は無いですから、親子ローンのためのLoan Agreementや、JV会社と株主間で保証委託契約を締結して、株主から銀行に保証書の差入をお願いする、その代りJVから株主に保証料を払う旨の契約を締結する場合もよくありますね。親子ローンや保証委託は、当然出資比率に応じてSeverallyに締結します。ここで、実際上問題になるというか、避けられない問題があります。それは、株主には当然信用力の差がありますので、銀行貸出のために保証状を出しても、銀行からJV会社への貸出金利に差が生じることが起こります。まあ、これは仕方がないでしょうね。そういったところと組んでJV会社を始めたのですからね。

〇 インドは、インド企業と取引のある外国企業にも、インド税務当局への所得の申告が必要ですね。インドは、この規制がしっかりしているといいますか、いい加減にしてくれと言いますか、その後も手間がかかります。DIN(Director Identification No.)をインド企業省から事前に取らないと、インド企業の取締役になれません。DSC(Digital Signature Certificate)の取得も必要です。インドの税務申告では、会社も税務申告書に署名する人のPAN(Permanent Account No.)&DSCの取得も必要ですね。JV契約を締結しただけでは、何も始められないですね。
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中国独禁法の執行強化

2017-11-03 00:09:45 | 商事法務
○ 中国の独禁法は、2008年に施行されまだ10年も経っておりませんが、日本の企業でも課徴金を課されている例も種々あり注意が必要ですね。同法では、競争者との水平的な反競争的協定、メーカと販売者との垂直的な反競争的協定、支配的地位の濫用、反競争的合併等を禁じています。更に、再販売価格の維持の禁止、市場支配的地位を有する企業の価格設定、ダンピング、排他的取引、差別・取引拒否と不公平な取引条件要求(優越的地位の乱用)等を禁じていますね。

○ 中国独禁法13条では、水平的反競争協定の締結することを禁じています。価格協定、生産・販売制限、市場分割、新技術等の購入制限、共同ボイコット等を定めていますが、更に特徴的なことに「国務院独占禁止法執行機関が認定するその他の独占的協定。」というのもあります。ガイドラインもきちんとしていないようです。これだと、恣意的運用が可能ですね。現に摘発事例を見ると、米国、ドイツ、日本、フランス、台湾等の企業がやり玉に挙がっています。中国国内企業では、酒や粉ミルク等の再販価格維持の重要産業ではない企業の「やりすぎ」を摘発している程度ですね。やはり狙い目は、儲けている外国企業ですね。また、組立型産業、典型的には基本設計ができたあとの詳細設計で下請企業と一緒に詳細設計の検討会を行う談合体質の自動車業界ですね。自動車業界の摘発事例では、米国が有名ですね。米国では価格協定は、実際に競争を制限しているか否かを認定するまでもなく全て違法(per se illegal)で刑事罰ですね。ただ再販売価格維持行為(resale price maintenance = RPM)については、合理の原則(rule of reason)により判断され、競争制限的で無い場合は違法では無いという米国最高裁判決はでています。米国では、日本人で米国の刑務所に収監されている人が20人ぐらいいるとされています。

○ 中国の独禁法執行機関は、日本の公取と違い、3つに分かれています。国家工商行政管理総局(SAIC)は、非価格関連の反競争的協定・支配的地位の濫用・権限の濫用等を担当し、国家発展改革委員会(NDRC)は、価格関連の反競争的協定・支配的地位の濫用・、権限の濫用等を担当、中国商務部(MOFCOM)が合併規制等を担当します。つまり、日本等は一般の省庁から独立した独立行政委員会である公正取引委員会やFTCが担当するのですが、中国はまさに担当部局が担当しているところより、当然政策・担当部局の方針に従って運営されているわけですね。ですから、独立性など無い、即ち政策に沿って行われる、これが恣意的運用される原因ですね。また、非価格関連と価格関連が分かれていますが、実際の事例では、これら明確に分かれることはなく両方の要素があるため、例えば、SAICが非価格関連から調べても、ついでに?価格関連も権限を越権して調査しているようですね。

○ 課徴金(罰金)最高額は、通信用半導体の独占企業、米国クアルコムですね。ダントツの約61億元(x17円1000億円)ですね。2番目はMercedesの3.5億元です。これは車の再販売価格維持を理由としています。3番目には日本企業登場です。自動車のワイヤーハーネス等のメーカの住友電気工業で2.9億元です。そのあとは常連の矢崎、デンソー等が続きます。ただ、この調査では、日立に2014.3への抜き打ち調査で、イモずる式で判明したもので、日立は調査に全面的に協力してリニエンシー制度が適用され、免責罰金0ですね。続いて2014.8には日系ベアリングメーカ4社が狙われ、日本精工に1.7億元等の罰金を科しています。

○ クアルコムがダントツで高い罰金を科されたのは、不当な価格設定(失効済の特許にもRoyaltyを課した。クロスライセンスを否定して自分の特許のみにRoyaltyを課した。)、抱き合わせライセンス契約を締結、また不公正な販売条件を課した等の、やりたい放題をしたからですね。

○ ここ数年、中国は独禁法の執行強化を図っています。当然、事業者が海外で中国向けの価格協定・顧客分割を協議しても適用される域外適用(効果が及ぶ国の独禁法が適用効果主義)もされます。従来、独禁法は米国・EUの独禁規制が厳しいとの常識に加えて、中国が要注意国になりましね。
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三角合併による米国企業の買収

2017-10-13 23:17:52 | M&A
○ 日本でも三角合併ができるようになりました。三角合併とは、子会社と合併対象会社間の吸収合併のうち、消滅会社の株主に対して存続会社の親会社(親会社の国籍は日本以外でもOK)の株式や金銭を交付する合併をいいますね。また、合併に反対する株主には、株式買取請求権(Appraisal Right)が与えられます。日本における三角合併第1号はシティグループによる日興コーディアルグループの買収ですね。その後、何件かあるようです。

○ 今回の話は、米国企業の買収を、米国に合併のための目的会社(Vehicle)を(買収対象会社と同じ州・会社法で)設立し、その会社と対象企業とを合併させることにより買収する方法についてです。日本企業でも、今は粉飾・上場廃止・救済合併されたアクセスが、Palmsource Inc.という会社を買収するときに、APOLLO MERGER SUB, INC.という買収目的会社を設立し、Palmsourceを存続会社として、即ち逆三角合併(Reverse Triangular Merger)という手法で買収しましたね。買収の為に設立した会社が存続会社(Surviving Company)になる場合は、普通の三角合併(Forward Triangular Merger)ですね。

○ 米国では、この買収目的会社に親会社の自己株式を現物出資する形式で設立されるのが一般的です。ペーパー会社で、資産は親会社の株式のみが多いですね。消滅会社の株主は、存続会社の株式を受け取るのが普通ですが、Forwardの三角合併の場合は、消滅会社の株主は、現物出資された親会社の株式(上場株券)を受け取ります。形式的にみると株式交換と同じですね。しかし、Forward三角合併では、Target Companyは、合併により消滅してしまいます。

三角合併が好まれる理由としては、①買収対象企業を100%買収できる点ですね。即ち、合併反対株主の保有株を、強制的に買収する側の親会社の株式と交換させることができるからですね。合併反対株主といちいち交渉する手間が無くなるというか、そんなことやってられません。また合併反対株主が、ごねてその株主だけに、有利な条件を出すわけには行かないからですね。同一条件でないと公平性・株主平等が無くなります。
100%買収でないと、少数株主権を行使されて、経営の邪魔をされると、経営にも差支えが出てきます。②米国企業にとり、買収目的会社を設立して合併する他の理由としては、自分(親会社)と合併する場合は、親会社の合併承認株主総会での承認が必要ですが、そんなこともしておられないですね。買収目的会社の100%株主は、親会社ですから、手続きが格段に簡便です。また、子会社を合併させることで、Legal Liabilitiesを軽減することもある程度可能になりますね。ただ、子会社合併の承認は、親会社の取締役会だけで決定できないケースも、親会社が上場企業の場合には規制によりあるようです。

逆三角合併もよく行われますね。合併のVehicleとしての子会社を作っておきながら、合併の際に、この子会社を消滅会社にします。なぜでしょうか?これにはいろいろな理由が考えられますね。消滅会社の資産・負債・契約関係は、法律上は承継されるといっても、存続会社は、消滅会社の資産・負債を時価評価して受入記帳をしないといけません。Vehicleなら資産も単純なので、この受入記帳も非常に簡単ですね。それと種々の契約(ライセンス契約等も含む)で、合併の場合には、「契約解除することができる」という条項が入っている場合もあります。また合併だと言っても、消滅会社保有の許認可の承継には手続きが必要な場合があります。その場合、今までの会社が存続会社なら、相手方・当局も契約解除に動かない、許認可の承継手続が不要な場合もあります。しかし、何と言っても便利というか、新設会社ではすぐに出来ないことがあります。それは従業員関係の福利厚生ですね。例えば、IRC401kの確定拠出年金制度です。この制度は、会社が設計して年金受託運営会社と契約、運用の種類・選択等の従業員への説明会開催、会社のMatching Contribution(これが税法上損金処理できる)も説明する必要があります。こういった年金制度立ち上げには、普通は1年かかります。合併Vehicleの会社には、この制度がありません。従い、逆三角合併の方が良いのですね。
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