まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

エクイティ・デット・スワップの利用

2008-06-20 17:12:53 | 企業投資

     デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap=DES」)ではありません。エクイティ・デット・スワップ(Equity Debt Swap=”EDS”とする)ですね。即ち、債務の株式化ではなく、株式の債務化ですね。今度の会社法で出来るようになりました。では、どのような場合に利用できるのか考えて見ましょう。

○ EDSの前に、まずDESを見てみましょう。日本でも負債過多で業績が悪く金利返済に苦しんでいた企業の財務リストラで何件か実行されましたね。現物出資の規制に関する207で、検査役調査が不要の場合を規定した9項の第5に、以下のように規定しています。「現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第199条1項3号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合:当該金銭債権についての現物出資財産の価額」。つまり金銭債権を券面額以下で出資する場合には調査不要としているが、弁済期が到来しているものに限るという制約を課しています。券面額を越える場合は、検査役の調査がいるわけですね。

-         券面額を調査不要の場合の最大額にするというのは金銭債権評価の客観性という点ではわかりやすいですね。(立案担当者は、評価の適正性について問題が生じないからと言う言い方をされているようですが。適正性というのがいまいちよく分かりませんが)

-         また、弁済期の到来について、会社側で期限の利益を任意で放棄する事で、この要件を満たすことは可能であると、立案担当者は言っているようです(商事法務1741号26頁。相澤哲・豊田祐子「株式」に記載されているらしいです)。但し、期限の利益放棄について善管注意義務違反にならないか検討が必要との事です。これについて、学者の一部では規定が無意味になるとか(更に有利発行規制の存在・検査役調査の存在意義という根本問題にまで言及される人もいますが:東大藤田教授)という理由で、反対論もあるようですけれども、期限の利益の放棄は、一方で金利の節約、企業の差し迫った状況、タイミングの重要性等もあり、経営判断事項であり当事者がOKすれば、既存株主も助かりますから、別に認めても良いのではと思います(学者は会社がおかしくなっても責任取ってくれませんね)。

     では、次にEDSについてですね。会社法1071項では、発行済株式全部の内容として、①譲渡制限、②取得請求権付株式、③取得条項付株式として定めることが出来るとしています。そして2項では、その株式の内容を定款で定めなければならないとしています。

-          2項二号(取得請求権付株式)ロでは定款に規定する内容として、以下の規定があります。「イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類(第六百八十一条第一号に規定する種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法」

-          ハでは新株予約権、ニではイとロの足し算である新株予約権付社債、ホでは、これら以外の財産、即ち他社株式・他社の社債・現金その他の財産(=財産ですから、金の延べ棒、ダイヤモンド、商品券、最近高騰しているガソリン券?でもいいかもね)、の場合に、その内容を定款で定めましょうと規定しています。

-          2項三号では、取得条項付株式について、上記と同じ定めをしています。

     それでは、どういった場合にこのEquity Debt Swap(EDS)が必要となるのでしょうか? DESが、負債過多の会社ですから、その逆ですね。即ち資本過多の会社ですね。

-利用の一例を挙げましょう。 銀行からの融資は担保などいろいろ条件が付きますし、また金利も高いです。ベンチャー企業等開業後2-3年は、銀行はお金を貸してくれません。キチンとしたファンドからしっかりEquityで資金を集めて、事業が軌道に乗るまで、Equityベースの財務構造を持ちましょう。事業が成長軌道に乗れば、運転資金等の短期借入は銀行からも借りられるようになります。そのときまだ過大資本の場合なら、資本の一部を社債の長期借入金にしましょう。IPOが射程距離になってきたら、ファンドは、この社債とEquityを組み合わせて、パッケージでVCに一部売却して出資金の回収をしましょう。持株比率を下げましょう。そうしないと上場しても株式は簡単に売れません。VCには、社債と株式を購入してもらうわけですね。社債がついてますからダウンサイドリスクを押さえて、株式で上値をねらえます。株価を少し高めに設定する事も可能かもしれません。こういった場合に、Equity Debt Swapが使えますね。

社債だけではなく、新株予約権とか新株予約権付社債等の利用も考えられますね。