まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

事業全部の譲受の規定等

2008-10-07 17:46:17 | 商事法務

     企業の組織再編の一つである事業譲渡等については、会社法第二編株式会社第7章467から470条にまとめられていますね。基本的には、旧商法の規定を継承しています。変更点としては、事後設立(成立後2年以内にその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、譲受財産の対価が譲受会社の純資産の1/5を超えない場合を除く。)で裁判所の選任する検査役の調査に代えて、平成2年の商法改悪前の総会特別決議に戻したこと、及び事業譲渡等をする企業が効力発生日の20日前までに通知・公告する義務が規定されたぐらいでしょうか。 

     しかし、変更を忘れたと言いますか、おかしいと分かりながら修正されなかった規定がありますね。46713号の「他の会社の事業の全部の譲受け」の場合における、譲受会社側での総会特別決議による承認の規定ですね。(旧商法24513)即ち、事業全部の譲受の場合は、譲受会社の規模との相対比較において、譲受事業がどんなに小さくても総会特別決議が必要となるという不合理がありますね。例えば純資産額が20億円の譲受会社が、資産総額50億円の会社で2つの事業を行っている会社から1つの事業を25億円で譲受する場合は、譲受会社では特別決議不要ですが、1億円でもそれが事業の全部であれば総会決議が必要となります。但し、譲受会社の純資産額の20%以下の場合には特別決議不要としていますが。

     事業譲渡の場合は、譲渡会社は一定規模以上の譲渡の場合=全部又は重要な一部の譲渡のときは特別決議が必要ですね。分割の場合と異なり、①債権者保護手続きが不要ですが、②個別の資産譲渡手続きが必要ですね。株主の多い譲受会社の場合は、総会決議をするもの手間ですね。でも、まあ、100%子会社を作ってそこを受け皿にすれば、総会決議なんか簡単ですけどね。他の手続きとしては、一定規模以上の場合は、譲受会社は公正取引委員会に、「事業等の譲受けの届出」(独禁法16)が必要ですね。30日の待機期間が求められていますが、実際は45日ぐらい必要です。届出書提出日は提出日であり、届出日ではありません(通常は翌週ぐらい)ので、急ぎの場合は理由を説明して30日の短縮を依頼することになりますね。

     会社法では、総資産や純資産を基準にして、総会特別決議が必要か、あるいは取締役会決議だけでOKかを定めています。この考え方も欠陥がありますね。商社の様に、資産規模に比して売上が多い会社と、メーカの様に売上対比で資産規模が大きな会社もあります。また、会社へのインパクトという点では、資産規模もさることながらキャッシュフローに大きな影響があります。従業員の多い会社のように、事業を買収してもすぐに多額の給与支払いが発生する会社もあります。会社法には、キャッシュフローで動いている動的な会社の実態を反映した条項がありませんね(米国の会社法、例えば模範事業会社法には、キャッシュフローを重視した規定がありますけど)。純資産という計算上の金額は、会社のキャッシュフローを全く反映していません。

     吸収分割を選ぶか、事業譲渡・譲受を選ぶかですが、事業譲渡の場合は、譲渡資産・負債を明確に出来ます。譲渡のときにスクリーンにかけられますので、簿外負債がついてくることがありません。一方吸収分割でも、不動産等は別途登記手続きなども発生します。事業譲受の場合、売掛金・買掛金等の流動資産・負債の承継があまりなければ、個別譲渡手続きは面倒で大変だということもありません。どちらの場合も、取引先にはきちんと挨拶・通知をしないといけませんしね。また、いずれの場合でも経理の人・人事の人の手間はあまり変わりません。経理の人は、全ての受入資産・負債の受入記帳が必要です。人事の人は、受入れた人の給与事務、社会保険(健康保険・厚生年金保険)・労働保険(雇用保険・労災保険)、企業年金等の退職給付(算定基準を引きつぐ場合、引き継がなくても新規に加入)事務、その他の事務(給与台帳、労働者名簿、通勤費支給)等を行わなければなりません。

     だいぶ話がそれました。それたついでに更に言えば、M&Aでは、案件の着手・契約までが表に出ますが、これの実行には多くの裏方?の人の協力がないとできませんし、再編・統合後のスムーズな事業遂行が出来ません。M&Aは、実行に5%の労力を、その後の経営に95%の労力を割くべきですね。

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