まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

おかしな種類株式の規定の仕方

2009-01-01 15:44:41 | 株式関連

     種類株式についての規定が会社法第二編株式会社第二章株式第一節総則の108条に規定されています。これを受けて第四節第三款・第四款(166-173)等にも規定されています。おかしな規定の仕方です。

108①各号に種類株式を規定しています。

-      I,II,IIIは、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権行使条件付株式で、内容に差を設けることができるとしています。株式の内容ですから、内容が異なれば異なる種類だと言えますけど、他の内容と組み合わせもできますね、例えば、配当優先株にしても取得請求権等をつけて普通株への転換条項等も付けることもできます。IIIの議決権行使条件付株式を、議決権制限株式として、株主総会の全部または一部の事項について議決権を行使することができない株式であると学者等が定義しています(神田会社法7P74)。条文では「株主総会において議決権を行使することができる事項」と規定しています。「できる」と「できない」は、この場合はコインの表裏なのでそれでも良いのかもしれませんが、ちょっとひっかかります。議決権制限の制限という言葉が良くないのかもしれません。例えば、「この種類株式の株主は、309②の特別決議事項(+特殊決議)については、議決権を有する」と定めると行使できる事項を定めた事になりますね。

-          IVは、譲渡制限株式です。これは、株式の属性であり、単独で成り立ちえません。これを種類株式の一つとして構成するのは、全くおかしな話です。

-          V,VIは、取得請求権付株式、取得条項付株式ですね。これは、株式の種類と言っても、株式の内容と言ってもいいですね。従来は償還株式と言ったものですね。償還株式とか償還請求権付株式となぜ言わなかったのでしょうか。従来は、強制償還株式、義務償還株式、任意償還株式と言っていたものですね。変な用語です。

取得請求権付株式というのは、株主から見たときに会社に取得請求できる権利が付されたものですね。一方、取得条項付というのは、会社から見たときに取得できる株式ですね。V,VIでは、会社側、株主側と見方が異なります。

取得して自己株式として消却する場合、あるいは、株式の取得と引き換えに他の財産(主として他の種類の株式)に転換する旨の規定をします。株式の内容として上記のI,II,IIIの内容・性質を持たせることもできます。例えば、優先配当の優先株式を普通配当・普通の議決権を有する普通株式に転換できる場合等ですね。従来は、転換株式とか転換予約権付株式と言っていたものですね。

取得して自己株式にしても、株式の種類は変わりませんね。消却すればなくなります。転換という、一種の変身する内容を持つものもあります。

引き換えに交付する財産ということで、例えば普通株式に転換しない場合もありますので、転換株式というわかりやすいコンセプトを無くしてしまいましたね。分かりにくくしています。

-          VIIは、全部取得条項付種類株式ですね。100%減資をやりやすくするために設けられた制度趣旨とは異なり、現実的には、SPCを組成して、少数株主を排除して、その100%完全子会社化する方法として利用されていますね。

-          IIXは、拒否権付株式ですね。まあ、あっても良いかもしれませんが、IIIの議決権行使条件付株式の内容として定めることもできると思いますね。

-          IXは、取締役・監査役選解任権付株式ですね。IIIの議決権行使条件付株式の内容の一種として規定すれば足りますね。委員会設置会社及び公開会社は、この種類の株式は発行できないですけどね。

     種類株式の規定は、性質・内容、コンセプトの違い、従来の考え方との一貫性等を無視して、主な種類の株式及び株式の異なる内容を「ごちゃまぜ」にした規定です。この規定の仕方は、「なんやねん!」ですね。I&IIは、株主の権利としては自益権です。IIIは共益権という視点での規定です。IVは属性です。V,VI&VIIは、株式の種類です。IIX&IXは、IIIの議決権行使条件付株式の内容の一つです。全くおかしな規定の仕方です。もっと、考え方に筋の通った規定に変更すべきですね。その切り口としては、以下ぐらいでしょうか、この切り口に、付随的属性として譲渡制限付きか否かということではないかと思います。

1)      剰余金の配当、

2)      残余財産の分配

3)      議決権行使の範囲と内容、

4)      償還株式か否か、どちら側がその請求ができるのか

5)      転換権付きか否かと、何に転換されるのか

もうちょっとすっきりした規定に出来なかったのですかね。