○ 会社計算規則(H18.2.7法務省令13号)第三編計算関係書類第二章貸借対照表等第76条(純資産の部の区分)IV&V項では、資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に区別しなさいと規定しています。
○ 会社法では、445条(資本金の額及び準備金の額)IV項で 資本準備金又は利益準備金は「準備金」と総称するとしています。446条(剰余金の額)では剰余金の額の算出を規定していますね。準備金の額は、剰余金算出のときに減算項目となっています。法で言う「剰余金」とは、その他資本剰余金&その他利益剰余金を言っているのでしょうね。
○ 全く「へたくそな」規定の仕方です。計算規則で定めるべきものではありませんね。会社法で規定しないといけな事項です。法452条では、「損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分」という言葉が出てきます。 言葉の統一がなされていません。
○ まあ、それはともかく、「その他資本剰余金」も一定の制限のもとに分配可能な剰余金となります。常識的な考えでは、その他資本剰余金も資本取引により形成された金額、即ち事業の元手であり、これが配当できるというのもおかしな考えですね。
○ その他資本剰余金は、どのようにして算出されるのでしょうか。その増減について計算規則27条を見てみましょう(III項は省略)。
―I項:その他資本剰余金の額は、第一款(株式の交付等)及び第四節(吸収型再編に際しての株主資本)に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額を増加させることができるとしています。
・資本金の額を減少する場合はその額(全部又は一部を準備金とするときはその額を減じて得た額→なんで「全部」が入っているのか不思議?)
・準備金の額を減少する場合はその額(資本準備金に係る額に限り、全部又は一部を資本金とする場合にあっては、当該額から資本準備金についてのその額を減じて得た額)
・前二号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を増加すべき場合は、その他資本剰余金の額を増加する額として適切な額→何が言いたいのかよくわかりません。
=要するに、資本金・準備金を減少させ(原則、総会特別決議&債権者保護手続き必要)、その他資本剰余金とすることができますよということですね。
―II項:その他資本剰余金の額は、前三款(一款株式の交付等、二款剰余金の配当、三款自己株式)及び第四節(吸収型再編)に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。
・資本金の額を増やすために剰余金の額を減少する場合は、減少する剰余金の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)効力発生日とともに総会決議必要。
・準備金の額を増やすために剰余金の額を減少する場合は、減少する剰余金の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)効力発生日とともに総会決議必要。
・前二号に掲げるもののほか、その他資本剰余金の額を減少すべき場合は、その他資本剰余金の額を減少する額として適切な額
=要するに、その他資本剰余金を減少させ、資本金・準備金にできますよという規定ですね。
○ 一方会社法452条(第三目剰余金についてのその他の処分)では、以下のように定めています。「株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。」
・ これを受け、計算規則第三章剰余金の処分153条では以下と規定しています。「法452条後段に規定する法務省令で定める事項は、同条前段に規定する剰余金の処分に係る ①増加する剰余金の項目、② 減少する剰余金の項目、及び③処分する各剰余金の項目に係る額 とする。」
○ 具体例として、第一三共をあげてみましょう。当社は、関係会社株式評価損を4027億円計上しました。特にインドの製薬会社のランバクシーに係るのれん償却の特別損失が大きいですね。当期純損失が2154億円となりました。すごい金額ですね。でも当社は、2007年4月の完全統合時に「企業結合に係る会計基準」に基づき、旧事業会社のその他利益剰余金を当社の資本等の部に振り替えていたので、その他資本剰余金からの配当でも、実質はその他利益剰余金からの配当だとしています。総会で「その他の剰余金の処分に関する事項」の承認を得ることになっていますね。即ち、以下です。
・ 繰越利益剰余金をマイナスから零にするため、「その他資本剰余金」を「繰越利益剰余金」へ振替をする総会の議案ですね。
① 減少する剰余金の項目及びその額=その他資本剰余金 2542億円
② 増加する剰余金の項目及びその額=繰越利益剰余金 2542億円
第一三共の場合は、昔の利益剰余金の分配かも知れませんが、マルハニチロの場合はどうなんでしょうね。
◎ 要するに、その他利益剰余金とその他資本準備金は、総会決議を取れば「剰余金の処分」と称して自由に動かせるんですかね?損益取引で積み上げた利益剰余金と元手から出発した資本取引である資本剰余金を、思想もなく動かして良いんでしょうか?なんだかよくわかりませんね。
計算規則27条II項では、その他資本剰余金は、次の各号に掲げる場合”に限り”、当該各号に定める額が減少するものとするとしています。「限り」なんて嘘じゃん。規定の仕方・整合性がおかしいのではないかと思います。