○ 吸収分割の場合、包括承継かどうかの議論は別として、法759条1項では、「吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。」としています。758条の吸収分割契約の規定では、②号で「吸収分割承継株式会社が吸収分割により吸収分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務」という言い方をしています。労働契約承継に関しては、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(=労働契約承継法)がありますね。
○ 合併の場合には、750条1項では、「吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。」としています。また、749条では吸収合併契約で定める事項の規定があります。合併は、包括承継ですから、分割と異なり、承継する資産うんぬんは不要ですね。普通はね。
○ 合併の場合は、全ての権利・義務が承継されると考えますが、例外があります。①新設合併の場合は、設立時取締役の氏名を記載しなければなりません。吸収合併でも消滅会社の役員が合併会社の役員に自動的になるわけでもないですね。取締役と会社の関係は、一種の委任契約であると考えられていますが、消滅会社の役員については、この委任関係が解消されるケースも多いですね。②もうじきなくなる税法上の適格合併の場合は、適格性の条件の一つに、被合併法人の従業員の80%以上の移転の要件があります。即ち税法では、100%の従業員が移転する事は予定していない訳ですね。また③合併契約で、合併の効力発生までに、約諾事項としてリストラ・事業の分離等もありますからね。
○ 合併でも、吸収分割でも、消滅会社・分割会社の従業員の雇用契約が維持されるのが普通ですが、同一条件で維持されるとは限りません。当然給与・退職給付規定などが通常は違います。差が大きい場合等、転籍というわけにもいきません。分割・事業譲渡の場合など、2-3年の出向契約にして、労働条件の不利益変更の緩和処置が講じられます。
○ 吸収分割の規定で、759条では、権利義務を承継すると規定し、758条では、承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務としています。なぜ言葉を変えたのでしょうか?何か違いがあるのでしょうか?「資産」なら「負債」が対の言葉です。資産・負債&権利・義務とすべきではないでしょうか?また、労働契約承継法があるのになぜ「雇用契約」とわざわざ規定したのでしょうか?よくわかりませんね、その理由が。ご存じの方は教えて下さい。まあ、はっきり言いますと、規定の仕方がちょっとおかしいと思いますね。