○ 反対株主が会社に株式買取請求できるのは以下の場合ですね。買取請求されたら会社は公正な価格で買い取らなければなりません。旧商法では「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」(旧商法245ノ2)となっていましたが、反対株主の中には、合併(企業再編)に反対する場合もあるが、合併には賛成ではあるが対価として交付される財産に不満足である者もいるのでという理由で、「公正な価格」に変更されました。
1) 事業譲渡等(469条)
2) 企業再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転)
3) 株式の譲渡を制限する定款変更(116条1項)
上記の中で、通常、合併の場合は消滅会社の株主は存続会社の株式、株式交換・移転の場合は、完全親会社の株式を取得しますね。また対価の柔軟化が適用されるのは、吸収型再編ですから、吸収合併、吸収分割、株式交換ですね。
今、話を簡単にするために株券を上場している、①上場企業同士の合併、あるいは②合併に先立ちTOBを行って議決権株式の過半数を取得の上合併する場合の反対株主の買取請求権と公正な価格について考えて見ましょう。
○ 合併当事会社同士(親子関係等に無い独立当事者間)が、同じベースで同じ時点で企業価値算定を行って合併比率を算定しますね。まあ、「同じベース」での企業価値算定も実際はきちんとするのは非常に難しいのですが、一応正当な評価であるような振りをした第三者の評価に基づいて結局は「えいやー」で決めますね。上場株券ですから、合併比率に応じて鞘当てが行われて株価が上下します。これが合併の効果を織り込んだ価格となりますね。ですから、株主は、合併を織り込んだ価格で株式を売却し、現金化できます。その他、例えば現金合併即ち、消滅会社の株主に1株当たりY円を交付というのもありえますね。
○ さて本題の「公正な価格」について考えてみましょう。
① 合併比率が公表され、その比率を反映して株価が形成されます。この比率を株主が特別決議で承認します。現金合併の場合はその株式買取価格ですね。もし、裁判所がこの株価以外の価格を公正な価格とした場合、特別決議で承認された比率に基づく株価というのは、公正な株価・価格ではないのですかね?
・ 上場株券ですからマーケット価格がありますので、反対株主はマーケットで売ればいいんですね。流動性に問題がなければですが。でも楽天のように大量に持ってしまうと売れません。売ろうとすると株価急落ですし、大量保有報告で売却もわかってしまいますからね。→反対株主の買取請求権というのは、マーケットで株式を売却出来ない人を救う制度でしょうか?
② マーケット価格は公正な価格でしょうか?マーケット価格というのは、その会社の経営・企業価値向上に責任を負わない(負う能力も資格もない)投資家・株主が、自己の利益を追求して、即ち儲けようとして日々売買を行う事により形成されている価格です。勿論例外的に楽天のように経営支配権取得目的で買い付ける場合もありますが。従い、役職員が汗水流して維持増進を計っている企業の価値(*)とは違います。このマーケット価格がどうして公正な価格でしょうか?
* 企業価値―有利子負債=株主価値(時価総額)という考えもありますが、ここでは企業価値=株主価値
・ 株式買取請求がされると、会社と反対株主との間で、価格の決定の協議を行いますね。会社としては、合併比率を織り込んだマーケット価格しか主張出来ませんね。当然協議は整いませんので裁判所に対して「公正な価格」の決定を申し立てるわけですね。
③ 企業再編に先立ち、TOBで株式を取得する場合、最近は通常、買付者はマーケットの価格の最低でも2-3割アップの価格を提示します。7割アップというのもありました。マーケット価格はTOB発表とともにTOB価格に鞘当てされます。多くの株主(例えば議決権の過半数を有する株主)がTOBに応募しTOBが成功して、その後の株主総会で合併・株式交換の承認決議を取る際に、反対株主が出てきても、会社としてはTOB以外の価格を主張できないでしょう。公開買付者が決めた価格です。会社が決めた価格では無いですね。TOB価格も一つの価格です。通常の合併なら、そんなプレミアム価格にはならない場合が多いでしょう。経営支配権を獲得し経営に責任を負う株主とは異なり、売り飛ばして逃げる株主でも2-3割アップの価格で現金化出来るわけですね。
○ 株価にはいろんな株価があります。裁判所が決定する価格を公正な価格と言うかどうかは別として、これも一つの株価ですね。ただ、裁判所の決定は強制力を持ちますが。 裁判所が決定する価格で重要な条件があります。それは株主平等ということですね。買取請求した人に対してだけ有利、あるいは不利な価格はダメということですね。裁判所には、価格の決定申立がなされたら、公平な価格を決めて欲しいと思います。