まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

社外・独立取締役等の立場の矛盾等

2012-07-01 18:07:07 | 商事法務

 

 会社法では取締役に一般的な義務として善管注意義務(委任関係=会社法330条民法644条)・忠実義務(会社法355条)を課しています。更に競業取引、利益相反取引にあたっては取締役会の承認という規制を設けています。当然これらの義務は、社外取締役や独立取締役にも及びます。会計の世界では連結が常識的になりましたが、これらの義務について株主等との関係では、まだまだ課題があり、うまく行っていないのではないでしょうか。ということで、いくつか思いついた事を書いてみましょう。<o:p></o:p>

 

 

 株主が指名した社外取締役は、往々にして株主重視・株主利益優先で、その会社の利益は二の次というのが実態ですね。会社法が忠実義務等を課していてもそんなことはお構いなしです。今回は、良く見受けられる株主が派遣する社外取締役の親会社・子会社間あるいは株主・子会社間の競業取引、利益相反取引について、いくつかのパターンに応じて考えて見ましょう。また併せて独立取締役についても少し触れましょう。<o:p></o:p>

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  子会社の社外取締役:親子の利害が一致しているので、親が高値で子会社に製品を売りつけても、連結だと一緒、親の立場で行動しても究極的には子会社の利益になる等という考えは誤りです。子会社には、そこで働いている役職員がいます。その会社としてキチンと利益を出さないといけません。子会社なので給与を安く抑えて親の事業に貢献すればよい等と考えてもらうと困るわけですね。ところが実際は子会社の利益では無く派遣元の親会社の利益を優先します。少数株主がいても関係無いです。少数株主が、重要取引先なら別ですが、少数株主のことなど殆ど考えませんね。これが実態です。子会社の取締役は、露骨なことは除いて結構忠実義務違反・利益相反取引を行うのですね。<o:p></o:p>

 

 

 仲良しグループの社外取締役:例えば三菱商事では、元三菱電機取締役会長(現産業技術総合研究所の理事長)や、三菱重工業の代表取締役会長が取締役になっています。逆に三菱商事取締役会長が三菱重工の取締役になっています。誰でもお分かりの通り、三菱商事と重工は、多額で多数の取引をしています。取引では売主・買主逆の立場です。当然利益は相反します。全部の取引について取締役会の承認を取っているのでしょうかね?<o:p></o:p>

 

 

 投資家派遣非常勤社外取締役:これは簡単ですね。VC等の金融投資家の目的は、出資先を上場させてキャピタルゲインを得ることです。ところが簡単には上場できません。上場でExitする案件は、うまく行っても10件中の投資の中で2件ぐらいですね。この場合の忠実義務は誰に対して果たされるのでしょうか。出資先に対して善管注意義務等があると理屈で分かっていても、当然自分のファンドへの忠実義務を果たそうとしますし、ファンドの利益を優先して考える訳ですね。<o:p></o:p>

 

 

○ 要するに、社外取締役は、自分の母体の利益を重視するという当たり前の事が行われており、そんなことは会社法は想定していないですね。利益相反など日常茶飯事で行われているということですね。<o:p></o:p>

 

 

○ 次に社外取締役とその一種である独立取締役についても少し述べましょう。東証などが主導して大企業では独立取締役を選出するということになってきました。独立取締役も本業を持っていますからね。要するに2重の仕事を持つ人は本業を重視しますよね。だから比較的無難なところと対外的にポーズを取るのに相応しいのは、学者・弁護士・元官僚というような、事業を理解していない有名な人たちとなります。企業にとってもNo harmですし、見栄えも良いから起用されるわけですね。<o:p></o:p>

 

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○ 社外役員の取締役会への出席状況、発言の状況等は施行規則124条により事業報告に記載しないといけませんが、いずれの役員も同じ文言で「高い見識に基づき(豊富な経験に基づき)中立かつ客観的観点から発言を行っています」ぐらいのことしか書いていません。この程度のことしか書いていないことにより、社外役員の実際の活動状況を推測させますね。まあ飾りですかね。取締役会の審議や決議に実際どれだけ役に立っているかを疑わせますね。でも少しずつ変化の兆しもあります。普通の会社では、独立役員等と言っておきながらその理由をきちんと書いていないところが多いですが、セイコーエプソンなどは、候補者とした理由の他に、「独立性について」ときちんと書いていますね。例えば、住商との取引高は0.1%未満であると記載して住商の元社長・会長を役員にしています。独立役員は東証の規定により届出しないといけません。形式的に独立役員の要件を満たしていても、明らかに非独立役員を独立役員として届けている例もあります。三菱商事では重工の会長を独立役員としています。誰が見ても独立役員とは言えないですね。三菱商事と重工はどれだけの取引があるのですか?利益相反取引の相手方ですよね。まあ、社外役員や独立役員の制度もまだまだ未熟だと言うことですね。<o:p></o:p>