まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

遵守されない守秘義務契約

2012-09-01 22:13:40 | 商事法務

 

 日本の契約書の中で、昔(2030年前)と比べて大きく進化?したと思われる契約書は何でしょうか?私は、守秘義務契約書、買収契約書、投資契約書だと思います。事業譲渡契約書や合併契約書は、それ程進化はしていません。ここで進化と言いましたが、別の言い方をすると、英米の契約書のまねをして詳細に書くようになったという事です。今回は、その中の守秘義務契約書を取り上げてみましょう。

 

○ 昔の日本の守秘義務契約書は、「秘密を守ります」という誓約書とか、「相互に秘密は守ります」という簡単な覚書が多かったですが、最近は英米の守秘義務契約のまねをしてかなり詳細に書く例も多く出てきています。詳細に、あるいは厳格に書く必要のある場合も勿論あります。当事者の意識もそうですね。例えばメーカの新製品開発情報等を外注企業に開示して共同で開発をする場合とか、ソフトウェアのソースコードを開示する場合等は、当事者もその秘密情報の大切さを理解していますから、まさに秘密保持契約です。<o:p></o:p>

 

○ しかしながら、契約書としては一通りの条文も書くのですが、どうも当事者の意識もいい加減なときもあります。何でも商談を開始するにあたり、そんなに秘密事項も無いのに、まず守秘義務契約を結ぶ場合も多いですね。まあ、これは契約書ではなく、商談開始の挨拶状みたいなものですね。書き方も、有効期間1年とかという規定が入っていたりします。一年たったら契約終了で、秘密情報をどんどん開示して良いのでしょうか?<o:p></o:p>

 

○ また、秘密保持の対象外の情報の書き方も、全く米国のまねをしている契約が多いですね。即ち、以下の様な英文を日本語にしたものですね。

The obligations of the Receiving Party shall not apply or shall cease to apply to information constituting a part of the Confidential Information which:

(a) is already known to the Receiving Party at the time it is disclosed to the Receiving Party;

(b) is generally known, or becomes generally known, to the public through no wrongful act of the Receiving Party;

(c) has been rightfully received by the Receiving Party from a third party without restriction on disclosure;

(d) is independently developed by the Receiving Party without use of the Confidential Information; or

(e) is required to be disclosed by law, court order, or administrative order.

 

 

 守秘義務契約を結んでも、すぐに会社の秘密情報を他社に漏らす人がいます。実務クラスよりも、契約遵守を求められる経営陣の方が案外守りません。また、多くの守秘義務条項の入った契約書を、いとも簡単に見せる場合があります。M&Aのときとか、自分の会社に投資家から資金を入れてもらおうとするときにVC等に手当たり次第見せる訳ですね。VCの方は当然キチンと調べないといけませんから、その会社の締結している重要契約を全部みせてもらわないと会社の状況・評価ができません。しかし、これは守秘義務違反ですね。それでまたそのVCなりとの投資契約に守秘義務条項を入れる訳ですね。投資を求める会社の人たちは、守秘義務違反を犯しているという意識はあるのでしょうか?またVC側は、守秘義務違反で重要契約書を見せてもらっているという意識はあるのでしょうか?疑問ですね。VCだから調査は当然と尊大に構えていないでしょうか?<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 守秘義務契約に、違反により損害を被った場合には損害賠償の義務を入れるケースもあります。でもこんなの現実には無理ですよね。損害額の算出が出来ません。ですから、そのためには違約金とか損害賠償額の予定を入れるケースもありますが、まだそこまで記載している守秘義務契約は希ですね。<o:p></o:p>

 

 一般的に言いますと、技術情報等を扱うエンジニア等は、意識としては守秘義務を持ちますが、協調融資やみんなで赤信号を渡る投資をするVC等の金融業界というのは、どうも守秘義務の意識が低いような印象を持っています。<o:p></o:p>

 

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