○ 海外にある子会社との間の取引価格が正常でないとき、即ち独立企業間価格(Arm’s length price)でないときは、移転価格税制が適用されて、正常な価格とされる金額との差額に対して推定課税がされますね。昔は、米国子会社との間の取引価格について問題となる例がありました。しかし、日本の輸出入で中国が貿易相手国の一番になりました。移転価格税制の対象となる国外関連者は、日本の税制上は、ダミーなどを使った場合は別として、50%以上(以上であり、超ではないです)を保有する外国法人ですが、中国側の扱いは必ずしも50%以上を保有されている中国法人ではないようです。相手が中国なので、よく分からないですが。いずれにせよ、対中国子会社との取引では、独立企業間価格で行う事が大切です。というか、中国側からみれば、中国法人がしっかり儲けていれば、文句は言わないということでしょう。というのも、日本では大企業の問題というか、中小企業まで税務当局も調べてられないですが、中国では結構中小企業まで調べられるということですね。今回は移転価格税制についてです。
○ 移転価格税制とは、関連者間にて独立企業間価格で取引が行われていない場合には、独立企業間価格で行われたものとみなして所得を更正する税制ですね。注意すべき点は、適用対象・関連者の範囲・対象取引等が国により異なるということです。ですから、日本の国税庁の「移転価格事務運営要領(H13.6.1制定。直近改正H23.10.27)」などを見ても、相手国では相手国の基準でこれを決めてしまうということです。<o:p></o:p>
○ 日本の移転価格税制の適用範囲は以下ですね。
1) 適用対象:日本の法人税の納税義務のある法人。
2) 関連者の範囲:当該法人が50%以上の株式・持分等の出資を有するなどの「特殊の関係」にある外国法人(=国外関連者:租税特別措置法66条の4)
3) 対象取引:国外関連者との取引のみを対象
○ 諸外国では移転価格の文書化の明文規定があるようですが、日本では以下ですね。「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類として財務省令で定めるもの」を遅滞なく提示又は提出しなかった場合は、税務署の調査官に①独立企業間価格を推定して所得金額を決定し更正を行う(推定課税)、及び②国外関連取引と同種の事業を行う非関連者に対して質問検査(=Secret Comparable)を行う権限が付与されます。日本では、財務省令で定められた書類を事前に用意していなくても罰則はありませんが、移転価格更正が行われる場合には加算税が課税されますので、用意はしておいた方がいいですね。財務省令で定められた書類とは、「国外関連取引に係る資産の明細及び役務の内容を記載した書類」ですね。
○ 中国では、多分場所によって違うと思うのですが、50%以上を親会社が保有していなくても移転価格の対象となる場合があるようです。中国の税務局は、企業に「いらっしゃい いらっしゃい」しているので、税制優遇などもあるのですが、それ以外は一般的には、結構がめついですからね。要注意ですね。中国では、まず税務局が企業に対して移転価格レポートを提出しなさいという依頼があるようです。他社の同業・同種取引の利益率などは、簡単にはわかりません。一般的にはコンサルタント(大手監査法人等)を起用して、自分の移転価格の内容と、同業他社の移転価格の内容、平均利益率等の詳細報告書を税務局に提出しているようです。要するに、普段から、第三者との取引価格と同じ価格で取引しておかないといけないということでしょう。要注意ですね。