○ 今回は製品価格の設定についてどのような規制がされているのかを検討してみたいと思います。価格については、Robinson-Patman Act (=RPA)によりClayton Act 2条が修正されています。制定の背景として、米国では大型スーパーが1930年代からできはじめ、この流通業者が強力な購買力を持つことにより、中小業者が圧迫されている状況から救済するために1936年に制定されました。Sherman Antitrust Actでは、取引(競争)を制限する行為は違法として価格協定(Price Fixing)等を違法としていますが、価格設定などには立ち入っていませんが、RPAでは価格設定行為に立ち入って規制をしています。<o:p></o:p>
○ アメリカ法律家協会のWEBでのRPAの紹介には以下のように記載されています。
The RPA was enacted as an amendment to Section 2 of the Clayton Act. Six subsections make up the RPA:
・Section 2(a) prohibits certain forms of price discrimination by a seller;
・Section 2(b) provides an affirmative defense to discrimination intended to meet competition;
? Section 2(c) prohibits certain brokerage fees and commissions;
? Sections 2(d) and (e) prohibit sellers from discrimination in providing allowances or services to competing customers for promoting the resale of the seller’s products;
? Section 2(f) prohibits buyers from inducing a seller to violate the RPA.
上記の補足は以下です。即ち、(a)では売主による価格差別の禁止、(b)では競争対抗を意図した差別に対する抗弁、(c)ではブローカへの報酬やコミッションの禁止、(d)(e)では売主に対し、差別的なallowance/service提供の禁止、(f)では買主による、売主に対するRPA違反行為の誘引の禁止ですね。<o:p></o:p>
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○ 上記規制のコアは、「Price Discrimination(価格差別)」ですね。では、どういった場合なのか見ていきましょう。
・原則は、一定の状況下で異なる買手間で価格差別を設けることを一般に違法としています。米国では、メーカ等がPrice Listを公表している例が多いですが、この法律の影響かもしれません。
・比較される価格は、ほぼ同じ時期に購入した商品(サービスではない)で異なる買手に課されたもので、値引き・リベート等を除いた正味価格です。
・また、価格差別が競争に影響を与えるものであることも条件になっています。競争に影響を与えるレベルとは、販売会社のレベルの他の事業者・取引先、あるいは有利な取扱いを受けた顧客と優遇を受けていない顧客の段階等で生じます。
・低価格に対抗するために対抗値下げをした事業者の価格設定は、善意の場合(というよくわからない言葉がついていますが)には正当化されます。
・その他の正当化事由は、生産終了・閉店セール、賞味期限まじか、数量差、納期差等の場合は、価格差が生じても、合理的理由があるので特に違法になることはありません。<o:p></o:p>
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○ 具体的事例でみて見ましょう。
1) 売手段階の競争阻害(Primary Line Injury) (Injuryというのは傷害ではなく法益侵害という意味ですね):S1(売手1)は、A製品をB1(買手1)に1個$110で販売、一方S2は、同じA製品をB2に$100で販売中。S1が、S2を蹴落としてB2の買主を奪うためB2にだけ$80で販売する場合ですね。<o:p></o:p>
2) 買手段階の競争阻害(Secondary Line Injury):S1が、B1/B2とも取引しているが、同じA製品を、B1は(可愛い買手なので?)$80で販売、B2は(おっさんの買手なので?)$110で販売すれば価格差別になります。
3) 買手の買手段階における競争阻害(Third Line Injury):S1は、大手スーパーに$100で販売、卸売業者には$90で販売する場合等ですね。その卸業者は小売業者のスーパーに$100で販売するように売主が拘束すると、再販売価格の拘束が生じ、これもAntitrust法違反となります。⇒独禁法の基本原理間の衝突が起こっているのですね。ややこしいですね。
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