まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

合弁事業設立の流れ

2016-09-28 23:07:36 | 商事法務
〇 今までも断片的に触れてきましたが、今回は、合弁会社設立の流れを時系列的に書いてみましょう。合弁事業としては、既にある企業の株式の一部を取得して合弁とする場合や、既にある会社の事業の一部をspin-offして新会社を設立して合弁とする場合等がありますね。後者の場合は、一方当事者の事業の一部を新会社に事業譲渡する場合や、両当事者の事業一部を新設会社に譲渡する場合等があります。有名な例としては、LOCKHEED MARTINとBOEINGが米国政府調達の宇宙事業の一部を、Delaware州にLLCを設立して譲渡した例等があります。

〇 日本企業の場合は、東南アジア等の地元有力企業と組んで、日本企業の製品生産の合弁を現地に設立する合弁が多いと思いますので、その場合の手順等を書いてみましょう。
1) NDAの締結:合弁パートナー候補が見つかったときは、まずNDAを締結して合弁事業の内容検討をします。目的・事業規模(規模感)・所要資金規模・出資比率・役員構成・両当事者の貢献等のイメージが出来たら、具体的な作業を開始します。
作業の内容をNDAに少し詳しく書く場合と、Non-bindingのMOU(Memorandum of Understanding)にする場合等がありますね。

2) MOU締結(別に必須ではないですね):重要なのは目的とF/Sの作成ですね。
①まず、事業として成り立つかの調査をきちんと相互に摺合せましょう。
(a) Screening of category
(b) Identifying target market, its present size and volume
(c) Competitive analysis
(d) Confirm basis for alliance and each party’s contribution
(e) Target & potential customers, their future potentiality, prospect and sustainability
(f) Concept quantitative validation with product placement & rough volume estimate
(g) Market entry strategy and plan

② 事業として成り立つ見通しが立てば、事業計画を作成しましょう。その場合には、以下等を詰めましょう。原材料を海外から調達して製品を作り当該国で販売する場合等、関税・現地の流通税等もきちんと調べておかないと、後で思わぬ落とし穴に会う事になりますね。
(a) Overall goal
(b) Business cooperation scheme
(c) Financial target for the first five years
(d) Funding Plan (including debt-equity ratio)
(e) Competitive strategy
(f) Outline of Production Facilities (Location, Products to be manufactured, Production Capacity, Location, Construction Schedules etc.)
(g) Operating configuration
(h) Organizational model
(i) Detailed plan of the priority area to be studied with the following analysis.
i) Estimate of revenue potential
ii) Estimated aggregate amount of investment in production facilities (CAPEX) 新興国では外資系 には土地取得を認めない場合も多いので注意)
iii) Estimate of production cost
iv) Market entry plan
v) Personnel and human resources requirements
vi) Production technology know-how requirements
(j) Brand and product development
(k) Others.

上記の事業計画で目的・事業規模・所要資金規模(CAPEX + Working Capital)等の共通認識を持ち、併せて出資比率・役員構成・両当事者の貢献等を、きちんと詰めていきます。事業計画などは、保守的ケース、標準的ケース、積極的ケース等2-3通りを作成します。

3) 合弁契約Draft作成と付随関連契約の概要
上記2)について目途が立てば合弁契約のドラフトを作成します。これを弁護士等に丸投げしてろくに読まない人がいます。困ったものです。誰の事業ですかということですね。
合弁契約の内容が固まれば締結に進む場合と、合弁契約の内容を反映した定款まで作成して締結する場合がありますね。

合弁契約には、普通どんな関連契約があるかを書きます。株主の協力条項の中に、新会社は株主と技術支援契約を締結すると記載することも多いです。他に、原材料供給契約、ライセンス契約、製品引取(off take)契約、総務(工場の許認可取得を含む)・経理作業委託契約、オフィス(IT環境付)賃借契約、工場建設エンジニアリング契約等ですね。これら契約を、新会社設立後新会社と株主間で締結し、始動するわけですね。

合弁契約作成だけでは、合弁事業はスタートしませんね。原材料供給契約、ライセンス契約、製品引取(off take)契約等は事業計画を実現する契約ですが、工場が完成しないと意味ない契約ですね。ですから遅れて作成・締結しても良いですし、工場を作っているときに事情に変化が生じることもありますが、後日の見解相異等が出ないように骨子は合弁契約に書く場合もありますね。

コメント
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