まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国子会社役員の雇用契約書

2017-12-08 23:45:29 | 商事法務
○ 最近は、米国子会社の役員を日本からの出向者ではなく、現地で雇用して、それなりの貢献をしている現地の人にお願いする例が増えています。日本人より現地事情に通じ事業を伸ばしている人にとっては当然の処遇ですね。これからも増えると思います。
日本人出向者と同じ処遇では、当然満足してもらえません。日本人を異なる点は、1)業績評価をできるだけ客観的にすることと、2) 貢献度合いに比例したperformance bonusを毎年支給すること、それと1年ごとにperformanceを評価して、毎年雇用契約を更新することでしょうか。親の日本企業が上場企業なら、phantom stock option等の手法を使って株式報酬とすることも可能ではないかと思いますが、そういった報酬体系にしている日本企業は無いのではないかと思います。
ここでは、一般的な米国企業役員の雇用契約書の例を見てみましょう。米国企業なら、ほぼstock optionの条項が入るのですが、これを入れないがPerformance Bonusは支給するという前提で、一般的な雇用契約書の条項とはどういったものかを書いてみましょう。

○ 一般的なEmployment Agreementの条項は以下です。
1. Term.:期間ですね。2-3年でも良いのですが、毎年Performanceのreviewをするなら1年間です。但し、performance bonusは、1年の結果が出た後の評価ですから、単純に期間1-12月というわけには行きません。少なくとも経営成績の結果がでないとわからない条項は、その結果のbonus支払完了迄は、雇用契約は有効として記載しても良いですね。

2. Employment.:基本条項ですね。Position and Duties等の記載をします。

3. Compensation and Other Employment Terms. :報酬
(a) Base Salary.:年俸でも月次でもどちらでもいいですね。年俸で記載したケースは12等分して毎月支払うとします。また、subject to applicable withholdingsの記載も必要ですね。

(b) Bonus. (Performance Bonus or Bonus Plan) : この部分が役員の業績評価の部分ですね。 Target Bonusとして、目標達成の際にはBase Salaryの50% を払うとします。年俸$20万ドルなら、それに加えて$10万ドルということですね。
業績評価期間=Fiscal Yearが1-12月なら、その結果がauditedで判明する翌年3月末までに支払うと規定します。
達成すべき目標は、年度目標を話し合って決めます。現地経営者は、低い目標を出してきますので、話し合いを通じてこれを上げていきますが、それに更に+アルファを加えて利益目標等を設定するのが通常だと思います。The grant of a bonus is discretionary and subject to the conditions set forth in the plans approved by the Company. という記載もするのでが、実際はdiscretionaryという訳には行かないですね。
日本でもBonus支給は、支給日の在籍を条件にする場合が多いでしょう。従いEmployee must be an active employee in good standing on the payment date to be eligible to receive a bonus payment. という条件を入れるときもあります。翌年3月までの支払と規定しても、11月までの業績で目標達成が確実やその他の合理的理由があれば12月中に支払うときもあります。
また、事情がありfor Good Reasonなら、prorated (if and as applicable) based on the partial achievement (if any) through the termination dateということで支払う場合もあります。

(c )その他の条件は、(1) Vacation. (paid vacation)とか Unused vacation time shall be forfeited and shall not carry over to the next year.などもきちんと決めます。(2) Employee Benefits. 確定給付Defined Benefit Planや確定拠出Defined Contribution Plan(DC) =401k planの事を記載します。401kは、設計は会社がしますが、米国では個人の年金掛け金拠出が基本で、それにmatching contributionを会社がする制度ですから、日本の会社の401kとは大きく異なります。ですから、DCのことを言及するのは、会社の制度としてのDCと会社のmatching contributionのことを記載するということですね。年金以外のBenefitの件も記載しますし、家族へのbenefitも記載します。
  その他の記載事項は、(3) Business Expense Reimbursement.や(4) Key Man Insurance Policy.のことも記載することが多いでしょう。

4. Termination; 雇用契約終了時の報酬を規定します。
  雇用契約の終了の条項です。終了事由で重要な概念はGood Reason (正当事由)とCause(解雇原因)です。そのため下記のような定義を必ず入れますね。またSeveranceの定義を入れるときもありますね。
(a) Termination upon Death or Disability.も記載します。Disability.の定義を普通は記載します。
(b) (正当事由がなく)解雇原因のある場合の雇用終了の場合の報酬は、Base Salary.のみとする。
(c) (解雇原因がなく)正当事由のある場合の雇用終了の場合の報酬は、Base Salaryに加えてaccrued benefits (performance bonus等)の額も加えた額とする。

(i) "Good Reason" の定義
この雇用契約に基づく会社側の重要な契約違反、不法行為をするような会社の命令、役員の明確な事前書面同意のない降格・減給を伴う職務変更等

(ii) "Cause" の定義
当該役員の、犯罪の起訴(交通事故は除くケースが多い)、忠実義務違反、横領、詐欺、会社の重要義務の意図的懈怠、不正行為、法令違反等を列挙します。


5.その他の誓約事項:退職した場合のNon-recruitment, Non-solicitation, Non-competition and Non-disparagement Covenantsの規定も入れます。

6. その他の一般条項:Non-disclosure of Trade Secrets and Confidential Information、 Ownership of Protected Works、Rights to Materials and Return of Materials、 Compliance with Policies and Laws、税金の責任等、その他契約の一般条項