ジョディ・カマー主演のひとり舞台NTLIVE『プライマ・フェイシィ』を見ました。性被害を受けた女性の心を描く映画です。性被害者を担当することの多い弁護士自らが性被害を受け、その困難さの中で「真実」を見つけます。脚本も見事でジョディ・カマーも熱演です。内容も演技も見事としか言いようがありません。
主人公テッサはトップクラスの弁護士です。同僚の弁護士と仲良くなり、性的な関係を結ぶようになります。ある日酒を飲み、自分の部屋にその同僚を向かい入れ、セックスをします。しかしその後、気分が悪くなり、トイレで吐きます。そのような状況でありながら、男はセックスを求めます。テッサは拒否するのですが、男はテッサを無理矢理犯します。
テッサはこれをレイプだと訴えます。しかしこれが難しい裁判になることは明らかです。それでもテッサは自分の尊厳のために戦います。そしてその裁判の中で性被害の裁判に内在する困難さに気が付きます。自分自身が被害者になったからこそ気が付いたのです。
この映画のようなケースでは、初めからレイプを立証することは無理なようにも思えます。直前まで合意によるセックスをしていたのです。訴訟になっても無理だと思います。しかし性被害は性被害です。人間の尊厳を失った人が、尊厳を回復する権利があります。テッサの言動は私自身の思い込みに対して揺さぶりをかけてきます。
そして最も大切なことは、性被害者しかわからない感情があるということです。それを理解できずに裁判をしても、その裁判は外国で裁判をしているようなものです。それではたとえ被害者が裁判で勝ったとしても、実は尊厳を取り戻すわけではないのです。だれもが性被害者の心を理解できてこそ、解決にいたるのです。
日本においても性被害は泣き寝入りしているケースがほとんどだと聞いたことがあります。表に出にくい事件ではありますが、その内実をよく知っておき、そして被害者の気持ちになって考えることの重要性を強く感じました。