夏目漱石の『三四郎』の読書メモ。今回は十一章。広田先生の夢の話が出てくる章。
与次郎は文芸協会の切符を売って回っている。
与次郎が三四郎の下宿に来る。新聞を見せる。その記事によると広田先生は大学の教師には選ばれなかった。もう一紙を見せる。その新聞は広田先生が自分が教師になる様に画策したとある。その一環として自分の知人の学生に「偉大なる暗闇」という論文を書かせたとある。そしてその論文を書いたのは三四郎だというのだ。三四郎は困る。与次郎も謝る。
実家から手紙が来る。冬休みには帰ってこいとある。御光は女学校をやめて家に帰ったということだ。三四郎との結婚話が本格化しているようである。
三四郎は広田の家に行く。広田は、与次郎の件は確かに迷惑だが、若い人ほど迷惑だとは思っていないという。
広田は夢の話をする。
生涯にたった一度逢った女に、突然夢の中で再開した。その女は十二三の顔に黒子がある奇麗な女であり、二十年ぶりにあった。その女は昔のままだ。しかしその女は広田に大変年を取ったと言う。女は「あなたはその時よりも、もっと美しい方へ方へとお移りなさりたがるからだ」と教える。広田が女に「あなたは画だ」というと、女は広田に「あなたは詩だ」という。それは憲法発布の明治二十二年に、森文部大臣が殺されその棺を見送る時にいた時の思い出であった。
女は一番美しい姿を残したいということであり、男は常に前のめりで生きて行くということであろう。美禰子の画が連想される。美禰子の画は美禰子の一番美しい姿を永遠に残すためのものである。しかし、それは美禰子の迷子としての魅力をそぎ落とすことになろう。作者の意図はどこにあるのだろう。
広田は例え話として、ある母子の話をする。一人の男がいる。父は早く死に母一人を頼りにそだつ。その母が病気になり、死の間際に本当の父をあかし、その男を頼れという。これと似たようなことが広田にもあったのである。
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