ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

清水沢ダム

2019-10-24 23:07:46 | 北海道
2019年10月18日 清水沢ダム
 
清水沢ダムは北海道夕張市清水沢町の石狩川水系夕張川にある北海道企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1890年(明治23年)に夕張で炭鉱を開設した北海道炭礦鉄道会社(現北海道炭礦汽船=北炭)は急成長する炭鉱向け電力として1926年(明治15年)に清水沢石炭火力発電所を建設、さらに1940年(昭和15年)に清水沢ダム及び清水沢発電所が竣工、同発電所は当時の民間企業が所有する水力発電所としては屈指の最大3400キロワットの発電能力を備えていました。
戦後の食糧増産機運が高まる中、1954年(昭和29年)に灌漑用水容量を追加するための嵩上げ改修工事が竣工し灌漑・発電目的ダムとなります。
しかし1960年代以降のエネルギー転換により夕張では炭鉱の閉鎖が相次ぎ北炭の業績も悪化、1994年(平成6年)に清水沢ダムをはじめとした発電施設は北海道企業局に移譲され、翌年北炭は倒産します。
2014年(平成26年)の夕張シューパロダム完成を受けて灌漑用水源としての役割を終え、現在は発電専用ダムへの転用のためにダム及び発電所の改修工事が進められています。
具体的にはクレストのローラーゲートが撤去され自然調節方式になる一方、既設のダム式発電所である清水沢発電所に代わり新たにダム水路式発電所の建設が進められています。
 
改修工事以前の清水沢ダム(ダム便覧掲載写真)
クレストに排砂ゲートとローラゲートが並ぶいかにも昭和初期の発電ダムと言った姿。
 
夕張インターから国道452号線を北上し、清水沢で道道38号線を左に分けて東進すると清水沢ダムに到着します。
ダムの改修はほぼ終了、天端は市道として車両の通行が可能です。
 
かつてゲートがあった部分は新たに自由越流式ゲートとなりました。
竣工当時からの黒い導流部と、真新しい真っ白な扶壁の組み合わせパッチワークのよう。
 
かつてはダム直下に清水沢発電所がありましたが老朽化により撤去、新たにダム水路式の発電所が建設中です。
 
奥に見える建物は1926年(大正15年)竣工の旧清水沢火力発電所
発電所背後の盛り上がりはズリ(ボタ山)です。
 
天端からの眺め
まるで島のようなダム直下の巨岩
ダム建設以前から当地に合った自然石で岩の上には不動明王が祀られています。
ダム建設に当たって地元住民がこの岩の撤去に反対し残されました。
 
天端から見下ろした導流部
右手には建設中の発電所への導流壁護岸のために土嚢が積まれています。
 
自由越流式ですが左岸からのみ放流されています。
建設工事中の導流壁への配慮でしょう。
 
貯水池
上流の二股発電所、夕張シューパロダム竣工後はシューパロ発電所の逆調整池としての機能も担っています。
 
左岸から下流面
白と黒のアンバランス
 
上流面。
 
発電所の建設も含めて改修工事が終わるまでにはまだ1年程度かかるようです。
 
0036 清水沢ダム(1510) 
北海道夕張市清水沢清湖町
石狩川水系夕張川
25.4メートル
90.8メートル
5576千㎥/2177千㎥
北海道企業局
1940年

穂別ダム

2019-10-24 15:32:35 | 北海道
2019年10月18日 穂別ダム
 
穂別ダムは北海道湧別郡むかわ町の鵡川水系穂別川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
北海道開発局農水部による国営鵡川沿岸土地改良事業の中核施設として1985年(昭和60年)に竣工し、運用開始後は受益自治体であるむかわ町が受託管理を行っています。
穂別ダムの総貯水容量は1033万立米と農業用ダムとしては屈指の規模を誇り、むかわ町の3338へクタールに灌漑用水を供給しています。
 
穂別ダム右岸を国道274号線が走っており、今回は夕張から国道でダムに至りました。
まずはダム下へと向かいます。ダムの下流200メートほどの分岐を右手に取りダートの隘路を進むと洪水吐直下に出ます。
減勢工のエンドシル下流にバッフルブロックが並びます。
 
そのまま進むとダム下流面が現れます
型式はロックフィルダムですが、表面には芝が張られ見た目はアースフィルダム。
ちょうど草刈りが行われた直後で美しい下流面です。
 
国道に戻りダムサイトへと向かいます。
右岸から見た下流面。
 
実は洪水吐の手前に門扉がありそこから先は立ち入り禁止となっています。
訪問当日は草刈り作業のため門扉が開けられ、お願いしたところ写真を撮るくらいならと立ち入りをを許可していただきました。
右岸の洪水吐。
 
横越流式洪水吐。
 
上流面と貯水池
上流面はロックフィルで、貯水池中央に取水塔、左岸にインクラインと艇庫があります。
貯水池を国道274号穂別大橋が跨いでいます。
北海道の農業用ダムは灌漑期が終わると水が抜かれることが多いのですが、ここはまだ残っています。
 
インクラインと艇庫。
 
左岸から下流面
右岸側は地山を整形したのか前面に出っ張っています。
とにかく美しい堤体です。
 
左岸から上流面
右岸に管理事務所と洪水吐があります。
 
貯水池を跨ぐ穂別大橋から。
 
本当に芝が美しいフィルダムです。
春先新緑と残雪の頃に是非再訪したいものです。
 
(追記)
穂別ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0114 穂別ダム(1509)
北海道湧別郡むかわ町穂別稲里
鵡川水系穂別川
38.2メートル
283.2メートル
10330千㎥/9060千㎥
むかわ町
1985年
◎治水協定が締結されたダム

川端ダム

2019-10-24 13:12:26 | 北海道
2019年10月18日 川端ダム
 
川端ダムは左岸が北海道夕張郡由仁町川端、右岸が夕張郡栗山町字滝下の石狩川水系夕張川にある灌漑・上水・発電目的の重力式コンクリートダムで国交省北海道開発局農水部が管理を行っています。
1953年(昭和28年)に着手された農林省(現農水省)の国営大夕張土地改良事業により夕張川流域の灌漑用水源として1961年(昭和36年)に、取水用ダムとして川端ダムが1962年(昭和37年)に竣工しました。
川端ダムでは栗山幹線および由仁幹線を通じて栗山町および由仁町への灌漑用水の供給を行うほか、ダム直下に北海道企業局川端発電所が建設されました。
2014年(平成26年)の夕張シューパロダム完成に合わせて川端ダムでは道央注水工から千歳市、恵庭市、安平町への灌漑用水と上水道の配水機能が追加されました。
現在は夕張川流域の5市5町合わせて2万ヘクタールを超える農地への灌漑用水の供給、石狩東部広域水道企業団への上水道用水の供給、北海道企業局川端発電所での最大4200キロワットのダム式水力発電を目的としています。
 
夕張川にかかる国道274号線川端橋からJR石勝線と道東自動車道越しに川端ダムが見えます。
クレストに赤いローラーゲートが7門並んでいます。
実は道東自動車道西行き車線がダム下流からのベスト眺望ポイントになるのですが、対面通行の高速道路のためさすがにそれは・・・。
 
川端橋の先に川端ダムを示す案内板があり、それに従って南に折れると管理事務所のあるダム右岸に到着します。
ダム敷地は立ち入り禁止のため右岸から見学するのみですが、事前に管理事務所に予約を入れると中を案内してもらえるようです。
ただし今はゲートの改修工事中のため、見学ができるのは工事が終わる来春以降になるとのこと。
 
 
上流面
ずいぶん堆砂が進んでいますが(平成26年度のデータでは堆砂率56%)、取水ゲートが砂の上にあるので取水には問題はなさそう。
手前のゲートは栗山幹線取水口、堤体中央は川端発電所向け取水設備、対岸が由仁幹線および道央注水工向け取水口。
 
 
発電用取水設備をズームアップ。
 
左岸の取水口をズームアップ
従来の由仁幹線に加えて道央注水工向けが追加されたため、2014年(平成26年)に改修された取水口です。
 
大夕張土地改良事業の広域案内板。
 
利水目的が多いため水利使用標識も5枚並び立っています。
 
(追記)
川端ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0060 川端ダム(1508) 
左岸 北海道夕張郡由仁町川端
右岸 北海道夕張郡栗山町字滝下
石狩川水系夕張川
AWP
21.4メートル
280メートル
6479千㎥/1003千㎥
国交省北海道開発局
1962年
◎治水協定が締結されたダム