ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

杉田ダム

2021-12-01 20:00:00 | 高知県
2021年11月20日 杉田ダム
 
杉田(すいた)ダムは左岸が高知県香美市土佐山田町杉田、右岸が同町有谷の一級河川物部川本流にある高知県公営企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1934年(昭和9年)に『物部川河水統制事業』が採択され物部川の総合開発が着手されます、戦後河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えしこれに高知県企業局(現高知県公営企業局)が発電業者として事業参加、杉田・吉野両ダムおよび発電所建設事業が進められました。
杉田ダムは1959年(昭和34年)に竣工し、ダム式発電所の杉田発電所で最大1万15004900キロワットのダム式発電が行われています。
杉田ダム・発電所の完成により高知県企業局は計3万9200キロワットの発電能力を有するに至りました。
 
杉田ダムは国道195号線沿いにあり、ダム下流側の農道を辿るとダムと正対できます。
吉野ダムと同じミントグリーンのゲートが4門並びます。
 
ズームアップ
西向きのダムで、ちょうど西日を受けてゲートが美しく輝いています。
 
水利使用標識と発電所概要。
 
ダムそばを走る国道195号線にはJRバス『杉田ダム』バス停があります。
 
ダム式発電の杉田発電所取水口
これは吉野ダムとほぼ同じ構造。
 
右岸にある取水設備 
これは既得取水権を持つ農業用の取水設備で上流の永瀬ダムの不特定利水容量からの補給を受けます。  

天端は軽車両まで通行可能。 
こちらも吉野ダム同様緑と黄色の組み合わせ。 

天端からダム式発電の杉田発電所を見下ろします。
こちらは吉野発電所と異なり半地下式で落差35メートルを利用して最大1万1500キロワットの発電を行います。
発電所頭上にはガントリーが鎮座。
 
減勢工と副ダム。
 
ダム湖は総貯水容量1053万2000立米、有効貯水容量573万2000立米
堆砂率は46%。
 
(追記)
杉田ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2312 杉田ダム(1750) 
左岸 高知県香美市土佐山田町杉田 
右岸          同町有谷 
物部川水系物部川 
 
 
44メートル 
140.5メートル 
10532千㎥/5732千㎥ 
高知県公営企業局 
1959年 
◎治水協定が締結されたダム 

吉野ダム

2021-12-01 14:00:00 | 高知県
2021年11月20日 吉野ダム
 
吉野ダムは左岸が高知県香美市香北町吉野、右岸が同町永野の一級河川物部川本流にある高知県公営企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1934年(昭和9年)に『物部川河水統制事業』が採択され物部川の総合開発が着手されます、戦後河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えしこれに高知県企業局(現高知県公営企業局)が発電業者として事業参加、杉田・吉野両ダムおよび発電所建設事業が進められました。
このうち吉野ダムは同事業初のダムとして1953年(昭和28年)に竣工し、ダム式発電所の吉野発電所で最大4900キロワットのダム式発電が開始されました。
その後、1956年(昭和31年)に永瀬発電所が、1959年(昭和34年)に杉田ダムと杉田発電所が完成し、高知県企業局は計3万9200キロワットの発電能力を有するに至りました。
 
国道195号線のJRバス吉野発電所バス停がダムへの入り口です。
左岸沿いの道路からダムと発電所が見下ろせます。
グリーンのゲートが西日に照らされ美しく輝いています。
実は事前にこのゲートに魅せられ、西向きの吉野ダムと杉田ダムに陽が当たる午後に訪問できるよう計画していました。
 
ピアのグリーンとイエローの配色は見事というほかありません。
手前の建屋が吉野発電所で、色はくすんでいますが放流ゲートもグリーンです。
 
 
 
ゲート横に取水口が2門あります。
 
親柱の『高知縣』の銘もグリーン。
 
ダム湖は総貯水容量209万1000立米ですが、堆砂のため有効貯水容量47万4000立米にとどまります。堆砂率78%。
 
天端は徒歩のみ開放されています。
対岸(左岸)高台に管理事務所と開閉所(変電所)があります。
 
右岸親柱の『吉野ダム』の銘板もグリーン。

右岸から見た吉野発電所 
落差16メートルを利用して最大4900キロワットの発電を行います。 

(追記)
吉野ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2307 吉野ダム(1749) 
左岸 高知県香美市香北町吉野 
右岸        同町永野 
物部川水系物部川 
 
 
26.9メートル 
115.5メートル 
2091千㎥/474千㎥ 
高知県公営企業局 
1953年 
◎治水協定が締結されたダム

永瀬ダム

2021-12-01 10:00:00 | 高知県
2021年11月20日 永瀬ダム 
 
永瀬ダムは左岸が高知県香美市香北町永瀬、右岸が同市物部町柳瀬の一級河川物部川本流にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
物部川は集水域の年間降水量が3000ミリ超と日本屈指の多雨地帯の一方、河川流量の季節変動が大きく洪水や渇水が頻発していました。
県は1934年(昭和9年)に物部川河水統制事業を採択しダム建設を軸とした河川開発事業に着手しますが、戦争激化により具体的な進展はありませんでした。
戦後、河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えし建設省直轄事業として1956年(昭和31年)に永瀬ダムが竣工、完成後に高知県に移管されました。
永瀬ダムは現在高知県土木部が管理し物部川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、高知県公営企業局永瀬発電所(最大出力2万2800キロワットでのダム水路式発電を目的として運用されています。
京都府の大野ダムや秋田県の皆瀬ダム、宮城県の大倉ダムとなどととも建設省施工ののち県に移管されたダムの一つですが、永瀬ダムの竣工は特定多目的ダム法施行前になるため、分類としては兼用工作物と言う括りになります。
 
永瀬ダム両岸を県道が走っていますが、湖岸はいずれも隘路のため下流から県道220号を北上するのが無難です。
ダムと正対するポイントはありませんが、右岸県道217号線から下流面を望めます。
洪水吐はクレストラジアルゲート5門だけ。
ピア上のゲート巻き上げ機は被覆されています。
左岸ダムサイト(向かって右手)の建屋が管理事務所。

 
ゲートをズームアップ
左右両端のゲートにはカバーがついています。
実は護岸のため両端のゲートは開けることがなく、放流設備としては実質3門となっています。

 
天端は車両通行可能
ゲート部分はクランク。

県管理のダムですが、施工は建設省
竣工銘板にも建設省中国四国地方建設局の名があります。

 
ダム銘板。
管理者にかかわらず四国では『〇〇堰堤』と記された銘板をよく目にします。


減勢工は緩やかに左にカーブしています。
河床は放流水の圧力がかかる右岸側が厚くなり、副ダムも右岸側が階段状に強化されています。


副ダムをズームアップ。


豪雪地帯以外では珍しくピアのゲート巻き上げ機は被覆されています。
この建屋は後付けのようです。


ダム湖は『奥物部湖』
総貯水容量は4909万000立米。

 
左岸から。


左岸堤体直上の浮桟橋と巡視艇。

左岸ダムサイト擁壁に嵌め込まれた銅板。
ダムの説明と諸元が記されています。

ダム湖右岸の柳瀬公園パーキングから湖畔に降りることができます。
上流面を遠望。

 
ゲートをズームアップ
両端のゲートにカバーがついているのがよくわかります。

 
取水設備を探しましたが見当たりません。
帰宅後調べたところ発電用の取水口はダムの南約1.6キロ、支流の舞川にあることがわかりました。
後の祭り…
 
(追記)
永瀬ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2309 永瀬ダム(1748) 
左岸 高知県香美市香北町永瀬 
右岸     同市物部町柳瀬 
物部川水系物部川 
FNP 
 
87メートル 
207メートル 
49090千㎥/41470千㎥ 
高知県土木部 
1956年 
◎治水協定が締結されたダム