ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

桜ヶ池(下)

2021-12-09 20:00:00 | 高知県
2021年11月24日 桜ヶ池(下)
 
桜ヶ池(下)は高知県安芸郡芸西村和食の赤野川水系長谷川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
芸西村一帯は年間降水量1400ミリ以下の少雨に加え村内を流れる河川は集水面積が小さく、戦前より多数の溜池が作られてきました。
桜ヶ池もそんな溜池の一つで、まず明治期に稲作向け水源として桜ヶ池上池が作られ、その後の新田開発の進展を受け1911年(大正8年)に新たに桜ヶ池下池が築造されました。
建設当初の貯水容量は6万立米程度だったようです。
戦後の減反政策を受けて、稲作から園芸農業への転換が相次いだことに対応して1961年(昭和36年)に嵩上げ再開発が行われ貯水容量は従来の1.5倍の9万立米となりました。
上池ともども東地水利組合が管理を行い両池合わせて約30ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
なお上池は堤高10メートルのためダムの要件は満たしていません。
 
桜ヶ池(下)へは上流側からのアプローチとなります。
上流面は石積で護岸、堤体中央に斜樋があります。
 
こちらは古い取水設備
シャフトは1本。
 
天端には轍が残ります。
 
斜樋とゲート操作盤。
 
2012年(平成24年)の改修で刷新された現在の斜樋。
 
 
石積護岸の上流面
石の大きさは不揃いで荒い積み方。
 
海岸線からは2キロ足らず
天端から太平洋が見えます。
 
総貯水容量は9万立米
上池と合わせて計11万5000立米で約30ヘクタールの農地に灌漑用水を供給します。
 
右岸の小さな洪水吐。
 
池下への踏跡がありましたが草が繁茂しているので自重しました。
 
2297 桜ヶ池(下) (1769) 
ため池コード 393070002
高知県安芸郡芸西村和食
赤野川水系長谷川
20メートル(ため池データベース 23.5メートル)
62メートル(ため池データベース 66メートル)
90千㎥/87千㎥
東地水利組合
1919年

ジル蔵池

2021-12-09 14:00:00 | 高知県
2021年11月24日 ジル蔵池
 
ジル蔵池は高知県安芸郡芸西村和食の赤野川水系メサイ川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1955年(昭和30年)に竣工と記されています。(事業者不明)
芸西村一帯は年間降水量1400ミリ以下の少雨地帯で、当池の受益地となる丘陵地帯は水利に乏しく戦前は畑作中心でした。
戦後の食糧不足を受け米作への転換が図られその水源として建設されたのがジル蔵池で、現在は吉野水利組合が管理し約25ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
ジル蔵池はごめん・なはり線赤野駅から北へ約4キロ、標高約320メートルの山中にあり、池へは上流側からのアプローチとなります。
上流面と洪水吐。
 
天端と下流面
今回訪問した芸西村の溜池はこの時期草が茂っているところが大半ですが、ここはきれいに刈られています。
 
総貯水容量は17万立米。
稲作から園芸農業に転換する受益農家が多く、普通なら農繁期のこの季節でも貯水池は満水。
 
右岸の斜樋。
 
上流面は石積護岸。
 
洪水吐には木が渡されています。
 
池側から見た洪水吐。
擁壁は石積み。
 
ダム下まで降りられます。
堤高はダム便覧が21.52メートル、ため池データベースは18.4メートル 
見た目はため池データベースが妥当な感じ。 
 
底樋管。
 
洪水吐導流部は近年改修があったようで減勢のため階段状になっています。
ため池の導流部でこれだけの階段洪水吐は珍しい。
 
ジル蔵という名前に惹かれ、普段ため池をスルーするマニアもここは訪れる人が多いようです。
山中に佇む静かな溜池、のんびり過ごすにはいい場所です。
 
3582 ジル蔵池 (1768)
ため池コード 3930700014
高知県安芸郡芸西村和食
赤野川水系メサイ川
21.52メートル(ため池データベース 18.4メートル)
60メートル  (ため池データベース 60.3メートル) 
170千㎥/170千㎥
吉野水利組合
1955年

普当池

2021-12-09 08:00:00 | 高知県
2021年11月24日 普当池
 
普当池は高知県安芸市赤野甲の赤野川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のロックフィルダムです。
池の受益地である安芸市赤野地区は標高60~100メートルの海岸段丘に位置し、水利が乏しく戦前は芋畑や桑畑が広がる畑作地帯でした。
戦後の食糧不足を受け稲作への転換がはかられその水源として建設されたのが普当池で、ダム便覧には1956年(昭和31年)に赤野土地改良区の事業で竣工と記されており、団体営事業で建設されたと思われます。。
現在の高知県安芸市周辺は減反政策をうけてハウス農業にかじを切り、ビニールハウスが立ち並ぶ四国屈指の園芸農業地帯となっています。

一方ダム便覧での当池のロックフィルダムの分類につては諸所議論があったようですが、管理者によってロックフィルダムであることが明言され、普当池は日本で4番目に古いロックフィルダム且つ四国で6基しかないロックフィルダムの一つであることが確認されました。
 
ビニールハウス群を抜け集落最上部から普当池に向かいますが、道路には路肩崩壊により通行止めの標識。
やむを得ずここに車をデポして歩くことに
 
距離にして約600メートル、約10分弱で池に到着。
件の路肩崩壊は修復され車でも問題なく通行できました。
左岸に洪水吐があります。
擁壁は石積み。
 
改修があったようで洪水吐導流部はコンクリート製。
 
上流面は石積護岸。
 
石積をズームアップ。
隣接する芸西村のジル蔵池桜ヶ池(下でも同様の石積護岸が見られます。 
 
堤体中央から湖面に延びる管
これが取水設備。
 
堤体中央のコンクリート構造物。
電線がつながってるので取水関連の電気設備か?
 
貯水池は貯水容量2万立米
小規模とはいえ水利に乏しい海岸段丘上の農地にとっては貴重な水源です。
そして湖面の白い浮きの下に取水設備があるようです。
 
下流面
明確なルートがないので池の下に降りるのは自重しました。
よって底樋管や放流設備は未確認。
 
 
下流面は草が茂り目視ではロックフィルである証は確認できませんが、日本で4番目に古いロックフィルダムが鄙びた溜池であることは、溜池ファンとしてはちょっとうれしい気分。
 
2283 普当池 (1767)
ため池コード 392030005
高知県安芸市赤野甲
赤野川水系左支流
15.5メートル
55メートル  
20千㎥/20千㎥
赤野土地改良区
1956年