ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

伊尾木川ダム

2021-12-08 20:00:00 | 高知県
2021年11月24日 伊尾木川ダム
 
伊尾木川ダムは高知県安芸市古井の二級河川伊尾木川本流上流部にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により、日本発送電は解体され四国では新たに四国電力が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために各所で積極的な電源開発を進め、その一環として1954年(昭和29年)に建設されたのが伊尾木川ダムです。
ここで取水された水は約10キロの導水路で伊尾木川発電所に送られ最大7700キロワットのダム水路式発電を行います。。
 
 安芸市伊尾木から伊尾木川沿いの県道を北に約20キロ走ると伊尾木川ダムに到着します。
しかし県道とは名ばかり、隘路が続くうえに各所で工事が行われており運転には注意が必要です。
ダムと正対できるポイントはありませんが、下流の樹林の切れ目からゲートが1門見えます。
 
ゲートをズームアップ
ラジアルゲートを2門装備していますが見えるのは1門だけ
さらに左岸側に排砂ゲートがありますが、フレームに収めることができません。
 
余水吐を利用して河川維持放流が行われています。
 
天端は立ち入り禁止。
頭上には除塵機で集めたごみを運搬するモノレールの架線。
ゴミの搬出シーンを見てみたい。
 
右岸の取水口。
上記河川維持放流は取水口の余水吐から放流しています。
 
モノレールは右岸ダムサイトの管理事務所の脇まで伸びています。
 
水利使用標識。
 
上流に回り込みます。
右手のガーダー橋は森林鉄道の遺構。
昭和40年ごろまで運用されていたので、ダム建設にも利用された可能性大。
 
総貯水容量88万7000立米に対し、有効貯水容量32万7000立米
堆砂率64%ですが、実際にはもっと堆砂が進んでいそう
 
ゲートと取水口をズームアップ。
 
(追記)
伊尾木川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2308 伊尾木川ダム(1766)
高知県安芸市古井 
伊尾木川水系伊尾木川
22.8メートル
57メートル
887千㎥/327千㎥
四国電力(株)
1954年
◎治水協定が締結されたダム

竜王池

2021-12-08 14:00:00 | 高知県
2021年11月24日 竜王池
 
竜王池は高知県安芸市伊尾木にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には伊尾木岡台土地改良区の事業で1925年(大正14年)に竣工と記されており、当地で大正時代に始まった海岸段丘上の開拓に併せ土地改良区の前身となる耕地整理組合等によって建設されたと思われます。
現在の管理者は組合を引き継いだ伊尾木岡台土地改良区です。
一方、池の堤高は便覧の17.5メートルに対しため池データベースは14.9メートルとなっており、仮にデータベースの数値が正しいとすればダムの要件未達となります。 
またダム便覧では河川は伊尾木川水系伊尾木川となっていますが、国土地理院地形図を見ても伊尾木川とは別水系なのは明らかです。
ただ河川名は確認できませんでした。
 
池周辺は東山森林公園になっており遊歩道が整備されていますが、いわゆる都市型公園ではなく自然保護的な公園です。
池へ通じる道路は車止めがありここから徒歩。
 
遊歩道の道標。
 
100メートル歩けば池に到着
天端の写真ですがもろ逆光。
 
上流面はウレタン防水素材で遮水されています。
 
総貯水容量6万立米の小さな溜池。
池周辺は常緑広葉樹を中心とした自然林が広がっています。
奥の白い建物はごみ焼却場。
 
上流面の階段
この下に取水設備があるようで、階段左手に取水管が伸びています。
このほか左岸側にも取水設備があります。
 
左岸の越流式洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
堤体の階段からダム下へ降りてみました。
 
2箇所の取水設備からの導水管がここに来ます。
改修によって取水設備が刷新された際に、いわゆる底樋ではなく導水管が堤体上を降りる構造になったようです。
 
取水設備が底樋ではなく、簡易な導水管になっているのが特徴です。
こういうタイプの取水設備は初めて見ました。

2300 竜王池 (1765)
ため池コード 392030004
高知県安芸市伊尾木
河川名未確認
17.5メートル(ため池データベース 14.9メートル
48メートル  (ため池データベース 47メートル) 
60千㎥/60千㎥
伊尾木岡台土地改良区
1925年

西山ダム

2021-12-08 08:00:00 | 高知県
2021年11月24日 西山ダム
 
西山ダムは高知県室戸市羽根町にある室戸市が受託管理する灌漑目的のアースフィルダムです。
ダムのある室戸市北西部は山が海まで迫り海沿いには平坦地がありません。
江戸末期より標高120~160メートルの西山台地と呼ばれる海岸段丘上で開拓がはじまりますが、水源は中小溜池に依存し零細な営農を余儀なくされていました。
そんな中、1982年(昭和57年)より農水省の補助を受けた県営かんがい排水事業が着手され1997年(平成7年)に竣工したのが西山ダムです。
灌漑設備の整備と併せて圃場整理や大規模農道が建設され、現在の西山台地はビニールハウスが立ち並ぶ園芸農業地帯となっています。
 
室戸市吉良川町の国道55号線吉良川大橋西詰から河岸段丘上の農免道路に入り突き当りを右折、約1.5キロほど北上すると西山ダムに到着します。
ダム下へは手前の分岐を右に採ります。
コンクリートの建屋は放流設備、奥に洪水吐斜水路が伸びます。
 
右は洪水吐減勢工、左が放流設備。
メンテナンスや整備には来ないんでしょうか?ダム下への道路も放流設備周辺も草木が茂り車の転回も一苦労です。
 
こちらが下流面
アースフィルダムなんですが、放置状態で松が茂り始めています。
このままじゃ早晩森に。
 
天端
一応車は入れますがすぐ先の洪水吐で行き止まり。
 
上流面はコンクリートで護岸
 
竣工記念碑。
筆は当時の県知事橋本大二郎氏。
 
天端からは太平洋。
これが当ダム一推しポイントでしょう。
 
上流面と洪水吐。
 
総貯水容量は5万6000立米と極小ため池サイズ。
左手に斜樋が伸びています。
 
横越流式洪水吐。
 
一連の事業で西山台地の農業経営が大いに活性化したのは間違いありません。
だからこそ、もう少しダムの整備もお願いしたいところです。
 
2327 西山ダム (1764)
ため池コード 392020061
高知県室戸市羽根町
河川名未確認
27.2メートル
74.7メートル(ため池データベース 75メートル) 
56千㎥/54千㎥
室戸市
1997年