ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

春遠第1ダム

2021-12-03 20:00:00 | 高知県
2021年11月21日 春遠第1ダム
 
春遠(はるどお)第1ダムは高知県幡多郡大月町春遠の貝ノ川川水系家ノ谷川に高知県土木部の事業で建設予定の多目的重力式コンクリートダムです。
1994年(平成6年)に建設省(現国交省)の小規模ダム補助事業を活用した春遠生活貯水池ダム事業の建設実施計画調査が着手されましたが、バブル崩壊以降の社会状況の変化や公共工事見直し機運が強まる中、国交省による検討対象ダムとなります。
2012年(平成24年)に家ノ谷川への春遠ダム建設及び左右の支川に分水堰を設け導水トンネルで春遠ダムに導水する案で事業継続が決定しました。
その後の再検討により2021年(令和3年)に家ノ谷川に多目的ダムである春遠第1ダム、左支川の谷の奥川に流水型治水ダムである春遠第2ダムを建設する1事業2ダム案に計画変更され、2022年(令和4年)からの春遠第1ダム本体工事着工が決定しました。
 
訪問時は本体工事に先駆け取り付け道路の路面改良が行われていました。
 
ちょうどコンクリートの硬化中
このため、ダム建設地点まで立ち入りできません。
 
 
高知県土木部所管のダムとしては2024年(令和6年)竣工予定の和食ダムに続く、新ダム建設となります。

3239 春遠第一ダム 
高知県幡多郡大月町春遠 
貝ノ川川水系家ノ谷川 
FNW 
 
31メートル 
112メートル 
630千㎥/600千㎥ 
高知県土木部 
1994年春遠ダム実施計画調査着手 
2021年ダム計画変更

宮ノ越ダム

2021-12-03 14:00:00 | 高知県
2018年 3月28日 宮ノ越ダム
2021年11月21日
 
宮ノ越ダムは高知県幡多郡大月町姫ノ井の周防形川水系姫ノ井川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧によれば1960年(昭和35年)に月灘土地改良区の事業で建設されました。当初は『姫ノ井池』の名称で掲載されていましたが、2019年の編集でダム名が『宮ノ越ダム』に変更されました。
ため池データベースでは所有者は「自然人」となっており、個人所有のため池ということになりますが、この規模の溜池が個人所有とは思えません。
法人格のない水利組合もしくは地域の管理と見るのが妥当でしょう。
当ダムには2018年(平成30年)3月に訪問しましたが、その後の耐震補強工事で風貌が一変したことから2021年(令和3年)11月に再訪しました。
 
まずは改修前の宮ノ越ダムの風景から 
フィルダムとしては珍しく堤体下流面上にポンプ設備があります。
 
天端
丸石の記念碑が3基立っていますが、池の由来等は書かれていません。
 
上流面は谷積の石で護岸。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
貯水池対岸に斜樋が見える一方、湖面にはフローティング式の取水設備が浮かんでいます。
斜樋が壊れたのでフローティング式取水設備を導入したのか?
両方を活用しているのか?は不明です。
 
ここからは改修後2021年(令和3年)11月の写真になります。
ダム下から
新調された右岸洪水吐、白いコンクリートが目立ちます。
 
耐震強化のため、盛土が厚くなった堤体。
ただ表面に芝などが張られていないため、堤体が雨に浸食されています。
 
高い位置から俯瞰。
 
下流面と洪水吐導流部を超広角で
導流部は右岸を湾曲しながら流下します。
前回訪問時にあった下流面上のポンプ室などはなくなっています。
 
堤体上部は草がついていますが、下部や右岸側は丸裸
雨で浸食された跡が幾筋も見られ所によってはかなり抉られています。
素人目にもきちんと芝を貼るべきだと思いますが。
 
洪水吐導流部。
 
新調された横越流式洪水吐。
 
貯水池は総貯水容量17万1000立米。
 
上流面に新設された斜樋。
 
上流面はウレタン防水シートで護岸されています。
 
耐震強化工事ですっかり様相が変わった宮ノ越ダムです。
ただただ、芝を貼っていない下流面の土砂の流出が気になるばかり。
 
2314 宮ノ越ダム(1331) 
ため池コード 394240002 
高知県幡多郡大月町姫ノ井 
周防形川水系姫ノ井川 
 
 
23メートル 
80メートル 
171千㎥/171千㎥(ため池データベース172千㎥) 
管理者は自然人
1960年竣工 
2020年改修工事竣工 

横瀬川ダム

2021-12-03 10:00:00 | 高知県
2018年 3月27日  横瀬川ダム
2021年11月21日
 
横瀬川ダムは高知県宿毛市山奈町山田の渡川水系中筋川左支流横瀬川にある国交省四国地方政局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
中筋川の治水・利水を目的として中筋川本流および支流の横瀬川への多目的ダム建設事業が着手され、まず1998年(平成10年)に中筋川ダムが完成します。
しかし経済情勢の変化による利水需要の低減や公共事業に対する世論の厳しい目を受けて横瀬川ダム建設事業は当初計画から規模を縮小し、2016年(平成28年)にようやく本体工事に着手し2019年(平成31年)に竣工しました。
横瀬川ダムは国交省渡川ダム統合管理事務所により直轄管理される特定多目的ダムで、最大毎秒140立米の洪水をカットし中筋川ダムと併せて中筋川下流基準地点で最大毎秒350立米の洪水調節を行います。
また安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、四万十市への上水道用水の供給を目的としています。 
横瀬川ダム建設に際して、ダム建設予定地直下の水神が宿るとされる滝や雨乞いの祠、照葉樹林を保護するためにダム下に減勢工は置かず、世界で初めてダム中段の側水路で減勢を行う『側水路減勢方式』が採用されました。

横瀬川ダムにはまだ建設中の2018年(平成30年)3月に初訪、2021年(令和3年)11月に再訪しました。
2018年(平成30年)はまだ建設工事中の為、ダム右岸上流の見学所からの見学に留まりました。
タワークレーンを使って絶賛打設中。
 
ズームアップ。
 
ここから先はダム完成後の2021年(令和3年)11月訪問時の写真となります。
県道60号線からダムまで立派な取り付け道路ができており、一か所だけダムを望めるポイントがあります。
クレスト自由越流頂6門、自然調節式オリフィス2門装備のゲートレスダムです。
 
横瀬川沿いの旧道を遡上するとダム直下近くまで接近できます。
右手は仮排水路
この奥に保護された滝と雨乞いの祠がありますが、関係者以外は立ち入りできません。
 
取付道路は右岸ダムサイトにある管理事務所へつながります。
堤体は右岸側が緩やかに湾曲しています。
ダム湖の総貯水容量は730万立米と国交省直轄ダムとしては比較的小規模なダム湖。
 
下流面
超広角で撮ったためデフォルメされていますが、クレスト及びオリフィスを越流した水はいったん中段の側水路で減勢し、側水路にある子穴から導流壁のカスケードを伝って流下します。
カスケードで垂直方向の減勢を、ぎざぎざの堤趾導流壁で水平方向の減勢を行います。
 
中段の側水路。
 
導流部最下部
河川維持放流を活用した小水力発電所が行われています。
 
堤体右岸にクライミングウォールがあります。
慈善に観光協会への予約が必要。
 
天端から
超広角のためデフォルメされていますが、二つの細長い穴がオリフィス。
カスケードに合わせてギザギザに作られた導流壁も当ダムならでは。
本来減勢工がある位置にそれがないため、ダムからいきなり河川となります。
 
左岸から
とにかく角度のないところからの撮影なので超広角の出番が増えます。
 
左岸から見た側水路。
 
天端は車両通行可能。
簡略な建屋がいかにもアフターミレニミアムのダム。
 
上流面
右から右岸クレスト3門、オリフィス取水口、選択取水設備、左岸クレストと並びます。
 
世界初の側水路減勢方式採用のため、事前の実証実験から建設に至るまで多くの苦労や紆余曲折があったようです。
ちょっと他所では見ることのない異形のダム、越流の際の水の流れや減勢方法を想像するだけでも楽しくなる横瀬川ダムです。
 
(追記)
横瀬川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
3060 横瀬川ダム(1328) 
高知県宿毛市山奈町山田 
渡川水系横瀬川 
FNW 
 
72.1メートル 
188.5メートル 
7300千㎥/7000千㎥ 
国交省四国地方整備局 
2019年竣工 
◎治水協定が締結されたダム