2021年11月23日 沢の池
沢の池は高知県長岡郡本山町吉延にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には経緯度の記載はありますが、同時に位置未確認となっています。
本山町ため池マップに沢の池が記載されており、ダム便覧の経緯度にある池が沢の池で間違いありません。
ダムの起源について、ダム便覧には1916年(大正5年)に高知県の事業で竣工と記されており、当地の開墾に併せて県営事業で築造されたと思われます。
一方、堤高についてはダム便覧が15メートルなのに対しため池データベースでは10.9メートルに留まっており、これが正しければ河川法上のダムの要件未達となります。
ダムのある本山町吉延地区は川を挟んだ大石地区とともに美しい棚田で知られており、最近ではダイハツロッキーのテレビCMのロケ地にもなりました。
本山町中心部の国道439号線から県道267号を南に折れ約3キロ、吉延集落を抜けると棚田の真っただ中に出ます。
道路左手の『棚田絶景スポット入り口』の標識が沢の池への目印です。
グーグルの空撮写真では池まで細い道路が続いていますが軽トラでぎりぎりの道幅、周辺の眺めもいいのでここは歩くことにします。
2~3分も歩くと眼下に美しい棚田が広がります。
棚田の中を道路が錯綜しており、登山アプリを使って無事に沢の池に到着
絶景スポット入り口から15分ほど、約1キロ程度の行程です。
よくわからない写真ですがこれが下流面
見た目は到底15メートルの高さがあるとは思えません。
天端には轍が残ります。
池のすぐそばまで棚田が続いており、農作業の軽トラが入ってくるのでしょう。
右岸に洪水吐があり越流部は石積み、
中央に管が通してあります。
こちらが洪水吐導流部
下に降りれないこともありませんが傾斜が急だし落ち葉で滑りそうなので自重しました。
両岸は石積みの擁壁、流路にも石が敷かれていますがいずれも片岩。
さすが三波川変成帯です。
先ほどと逆方向、左岸から撮った天端。
右手が貯水池です。
上流から
正面が堤体になります。
貯水容量はダム便覧では3万4000立米、ため池データベースでは4万4000立米。
沢から導水しているようです。
小さな溜池ですが吉延の棚田にとっては貴重な水源となります。
残念ながら取水設備は見つかりませんでした。
ため池データベースではダムの要件を満たしていない沢の池ですが、一方でこの池や周辺の沢水を水源とする棚田はお米日本一コンテストで二度の最優秀賞に輝いた『土佐天空の郷』の産地となっており、吉延は四国の魚沼と言われています。
ダムかどうかなんて、今も棚田の貴重な水源として活躍する沢の池にとってはどうでもいい話なんでしょう。
2282 沢の池 (1763)
ため池コード 393410001
高知県長岡郡本山町吉延
吉野川水系樫の川右支流
A
E
15メートル(ため池データベース 10.9メートル)
109メートル(ため池データベース 94メートル)
34千㎥/34千㎥(ため池データベース 44千㎥)
吉延地区
1916年