ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

片田貯水池見学

2023-06-02 18:09:55 | ダム見学会
2023年4月24日 片田貯水池見学

4月は4泊5日で岐阜から紀伊半島のダムを回りましたが、お目当ての一つが津市の上水用水源である片田貯水池でした。
戦前の貴重な水道施設として『近代水道百選』や近代土木遺産に選ばれており、ダム下は園地で水道資料館が開設される一方、貯水池構内への立ち入りは禁止になっています。
今回、管理する津市上下水道事業局のご厚意により片田浄水場長さまの案内で見学が叶いましたので、ここでその詳細を紹介したいと思います。
なお、ダム便覧では『片田ダム』となっていますが、津市上下水道事業局では『片田貯水池』の名称を使っており、ここでもそれに従うことにします。

ダム便覧にも掲載されている定番スポットから
堤体にはもこもこのツツジが植えられ、片田貯水池の売りとなっています。
できればツツジが満開の折に訪問したかったのですが・・・。


門柱は竣工当時のもので表札には『津市水道水源地』の文字。
奥は水道資料館ですが、月曜日が休館日ということでこの日は見学できず。

職員さん到着前に左岸の田んぼ沿いを散策
ツツジが満開になると鮮やかだろうなあ!


職員さんが到着し園地内へ
この木造建屋は旧管理事務所で竣工当時のもの
Cランクの近代土木遺産です。


かつては取水設備や洪水吐操作のため、職員さんが24時間常駐していたそうです。

園地内のモニュメント。


園地は月曜以外の昼間開放されていますが、貯水池構内は立ち入り禁止。


職員さんに開錠していただきます。


堤体直下の水路
ドレーン水路で石積みの擁壁は竣工当時のまま。


堤体中央に階段が設けられています。
堤体自身はBランクの近代土木遺産。


振り返ると。


園地には桜が植えられ、桜の時期はそこそこ賑わうそうです。
園地左手を岩田川が流れます。


階段最上部。


堤頂部の階段。
等間隔に5基並んでおり装飾として設けられたようです。


貯水池側がさらに高くなっており、コンクリートの擁壁が設けられています。


貯水池は有効貯水容量129万立米で、集水はすべて雲津川水系長野川からの導水によります。


右岸から
対岸に取水塔があります。


このコンクリートの壁は竣工当時のものではなく、後付けされたとのこと。


取水塔とトラスの管理橋。


今度は左岸に移動。
手前の鉄パイプは流木引き揚げのために組まれています。


上流面はコンクリートブロックで護岸。
河道外貯留ですが、流木がすごい。




取水塔と鋼トラスの管理橋
こちらもCランクの近代土木遺産。
設計は片田貯水池建設を指揮した上水道の父中島鋭治


管理橋入口の親柱は六角形
こういう細かい意匠も手が込んでいます。


円筒部はRC造
右手の縦管は空気抜き
この当時の取水塔だと屋根が円蓋になっていることが多いのですが、ここは平面。






取水塔からさらに上流に進むと洪水吐が現れます。
手前は木製のゲートリーフが嵌め込まれ、奥は自由越流。
ゲート部分にはかつては巻き上げ式の起伏ゲートが設置されていました。
近年は雲津川水系から導水した水が別水系の岩田川に溢れるのは宜しくないという国交省の指導もあり、洪水吐からの溢流は極力避けるよう運用されています。


扶壁に円形の起伏ゲートのガイドがあります。


上の滑車でゲートの開閉を行っていました。


導流部はトンネル
トンネルの先で岩田川に流下します。
擁壁は石積み、流路は石敷きでいずれも竣工当時のもの。


トンネル入り口は立派なポータル。

今回はダムを管理する津市上下水道事業局のご厚意によりダムの見学が叶いました。
これまで学校単位の社会見学等はあったそうですが、いわゆるダム愛好家個人での見学依頼は例がなかったとのこと。
上下水道事業は限られた人員で運用されており、今後同様の要望をする際はできるだけ人数をまとめてお願いしたいとのことでした。
いずれにしても多忙の中対応厚く御礼申し上げます。
今回は資料館があいにくの休館日、折角なのでツツジが見ごろに時期にぜひ再訪したいと思います。