2023年5月19日 大小溜池
大小溜池は福岡県八女市黒木町北大淵にある灌漑目的のアースフィルダムです。
八女市黒木町では9基の灌漑用溜池が堤高15メートル以上のダムとしてダム便覧に掲載されていますが、うち7基が位置未確認となっています。
大小溜池はそのうちの一つで、ダム便覧には1912年(明治45年)に黒木町の事業により竣工と記されており、当時の町営事業で建設されたと思われます。
管理は受益者で組織される大小ため池組合が行っています。
北大淵地区は平坦地がほとんどなく水田の多くは矢部川沿いや緩斜面を開墾した小規模水田です。
池は矢部川右岸標高470メートルの高所に位置し、これらの水田の開墾に合わせて建設されたと思われます。
大小溜池はダム便覧に経緯度が記載されていない『位置未確認』物件ですが、八女市が作成した『大小溜池ハザードマップ』で位置を特定できます。
池の北側を市道が通り、入り口から数十メートルで天端右岸に到達します。
天端や堤体は定期的に草が刈られているようですが、訪問した時期が悪かったのか?そこそこ草が伸びています。
池の下流は延々と杉林が続きます。
受益農地は遥か下流。
総貯水容量2万7000立米の小さな貯水池。
田植え時期を控えほぼ満水。
天端中央の池栓
手前のパイプは空気孔。
左岸に建つ築造記念碑
大淵村第一耕地整理組合の名が見えます。
耕地整理組合は地主による組織で小作は加入できません。
戦後の自虐史観では地主制度は小作の搾取制度という教えをしていますがそれは間違い。町営事業や県営事業と言っても資金の大半は地主が拠出します。
全国的に見ても多くの溜池や灌漑設備の多くは地主や庄屋たちが自前で資金を出して整備しており、没落する地主も多々ありました。
こちらの碑には『大正二年7月十六日竣工』と記されています。
大正2年は1913年でダム便覧の1912年とはずれがあります。
上流面
満水に加え草が伸び護岸等は不明。
左岸を掘り込んだだけの洪水吐
対岸に竣工当時のままと思しき苔生した丸石積みの擁壁があります
長いコンクリート製の導流部が左岸を流下します。
下から見上げると
コンクリート製の導流部は平成のどこかで改修されたものです。
注目すべきは導流部の最下部で、導流面が丸石積になっています。
洪水吐の擁壁とも合わせて、竣工当時は洪水吐や導流部全体がこのような丸石積みで作られていたと思われます。
さらに下に下りて底樋管等を確認したかったのですが、急斜面に加え悪天候もあり自重しました。
左岸から見た下流面
こちらも定期的に草は刈られているようですが、かなり草が伸びていました。
2372 大小溜池 (1986)
ため池データベース 402101038
福岡県八女市黒木町北大淵
矢部川水系右支流(河川名不明)
A
E
15.1メートル
60メートル
27千㎥/27千㎥
大小ため池組合
1912年