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ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

花取溜池

2023-06-23 17:10:14 | 佐賀県
2023年5月21日 花取溜池

花取溜池は佐賀県鹿島市音成にある鹿島市多良岳土地改良区が管理する灌漑・防除目的のアースフィルダムです。
佐賀県の有明海沿岸では温暖な気候を活かし昭和30年代より丘陵地でのミカン樹園地開発が進められます。
鹿島市から太良町にかけての多良岳北東山麓では1964年(昭和39年)に約630ヘクタールの樹園地開発・収穫量9000トンを目的とした『国営多良岳農地開発事業』が着手されその灌漑・防除用調整池として1969年(昭和44年)に竣工したのが花取溜池です。
事業全体も1981年(昭和56年)に竣工し、当池のほか笹原溜池七曲溜池万才溜池が築造されるとともに延長123キロの配分水路網が整備され、当地域は佐賀県屈指のミカン生産地となりました。
しかし1991年(平成2年)のオレンジ輸入自由化により、ジュース向け原液がほぼ輸入品にとって代わったことで汎用ミカン価格が急落し全国のミカン農家は大打撃を受けます。
当地域でも離農や耕作放棄などが相次ぎましたが、現在は最高級品質の『祐徳ミカン』のブランド化に成功したほかレモン等への品種転換などにより生き残りを図っています。
なお、名称に『溜池』がついていますが国営事業で建設された農業用調整池ということで『農業ダム』の扱いとなりため池データベースにも記載がありません。

ダム下から
堤高22.6メートル、堤頂長176メートルのアース堤体
見た目と名前は『溜池』ですが、分類は農業ダムとなります。


下流面。


天端は車道
堤体は緩やかな逆アーチ状に湾曲。


総貯水容量24万4000立米。
当溜池は農業調整池で西葉川上流で取水された水がいったんここに貯留されたのち配分水路で受益地に補給されます。


奥から取水設備の斜樋、花取水槽からの流入管、越流式洪水吐。


天端から
ガスが掛かり視界不良ですが、わずかに有明海が視認できます。
『海が見えるダム』認定。
平地の少ない当地域では谷筋に水田、丘陵地にミカン樹園地が展開します。
果樹栽培が導入される以前は零細な稲作営農が大半でした。


上流面はコンクリートブロックで護岸。


花取水系の配分水路図。


右岸ダムサイトにある調圧水槽
現地では減圧水槽と表記されていますが同じ意味。
ここから専用の配分水路で受益農地に用水補給するほか、防火用水の役割も担っています。

右岸の越流式洪水吐。


右岸沿いに洪水吐導流部が流下します。
受益農地へは専用の配分水路が使われるため、いわゆる底樋管的な施設はありません。

2530 花取溜池(1995)                        
佐賀県鹿島市音成
西葉川水系西葉川
22.5メートル
176メートル
244千㎥/242千㎥
鹿島市多良岳土地改良区
1969年