ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

建山溜池

2023-07-06 17:00:28 | 長崎県
2023年5月21日 建山溜池

建山溜池は長崎県諫早市高来町建山にある灌漑目的のアースフィルダムです。
諫早湾北岸の諫早市小長井町から高来町にかけては多良岳火山活動で形成された傾斜地が海岸線まで続き平坦地はほとんどありません。
明治末期から丘陵地の新田開発が進められ、建山溜池は諫早市高来町の小江川と深海川に挟まれた丘陵上の開拓に合わせて建設されました。
ダム便覧には深海小江水利組合の事業で1917年(大正6年)に竣工と記されています。
一方、現地改修記念碑には明治期に溜池を築造するもその後の豪雨で決壊し大正期に復興された旨が記されており、1917年はその復興が成った年と思われます。
事業者は受益者で組織された水利組合、つまり受益農家の持ち出して建設され管理は小江深海耕地整理組合が行っています。
ダム便覧では位置未確認となっていますが、『建山ため池 地震時ハザードマップ』位置が特定できます。

下流から遠望
堤体を道路が横切っています。
ダム便覧では堤高20メートル、一方ため池データベースでは堤高9.7メートル。
そばに立つ電柱の地上高がだいたい10メートルなので、堤高20メートルはさすがに無理がある。


道路の擁壁下の四角いコンクリートが底樋桝になります。


堤体中段を道路が斜行。
池の基部は道路の左下になりますが、ここから見ても堤高15メートル以上は厳しい。


左岸の細い流路
これが洪水吐導流部。


導流部沿いを上がり天端左岸へ。
1990年(平成2年)の県営老朽化ため池等整備事業の竣工記念碑。
ここに文頭の池の由来が記されています。


堤頂長は94メートル(ため池データベース)
上流面はコンクリートで護岸。


奥には流入口
深海川から導水しています。


左岸の洪水吐。


洪水吐導流部
4枚目写真の流路に流下します。


総貯水容量2万立米。
田植え時期を控えほぼ満水。


天端からの眺め
眼下には受益農地が広がります。
奥は諫早湾の干拓地。


取水設備は階段式池栓。


護岸から見た左岸の洪水吐
堤体に切れ込みが入っただけですが、叩きはコンクリート製。

ため池データベースの堤高9.7メートルを採るなら河川法のダムの要件は満たさないことになります。

2582 建山溜池(2003)
ため池コード 422040040
長崎県諫早市高来町建山
深海川水系深海川左支流
20メートル(ため池データベース 9.7メートル
120メートル(ため池データベース 94メートル)
20千㎥/20千㎥
小江深海耕地整理組合
1917年