令和4年2月7日(月)
③前半の部 現代訳
入庵した頃は、
入庵した頃は、
四月も初めという時期だけあって
春の名残も遠くなく、
またツツジが咲き誇り、
山藤の花は松に垂れ下がって、
時鳥がしばしば鳴き過ぎて行く頃、
宿かし鳥が鳴いて、
家を貸してくれるという便宜まであるのを、
寺をつつき破るという啄木鳥が
つついても嫌がるまいなどと
むやみに面白がって
(琵琶湖を眺望していると)、
魂は「呉楚東南ニ坼(さ)ケ」と詠じた
杜甫の詩境にに走り、
身は中国の名勝瀟水・湘水や洞庭湖の
ほとりに立っているような気分になる。
山は南西方向にそびえ立ち、
人家は丁度よいくらいに隔たって、
南から薫風は峰から吹き下ろし、
北からの風は湖水を渡ってきて涼しい。
(見回せば)比叡山・ひらの高嶺より
はじまって、
辛崎(唐崎)の松には、霞が立ちこめ、
膳所の城があり、
瀬田の長橋があり、
釣り糸を垂れる舟がある。
(耳を澄ませば)笠取山に通う木こりの声、
麓の田には、早苗取る歌、
蛍が飛び交う夕闇の空には
水鶏の戸をたたく鳴き声、
美しい景色と足りないものは何一つない。
中でも、三上山は
中でも、三上山は
富士山の姿に似通っていて
(毎日そこから富士山を眺めた)、
武蔵野深川の古い草庵も思い出され
また田上山をながめては
だれかれなと古人を偲ぶ