貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

美しい景色に不足なし、最高の菴!

2022-02-07 15:16:06 | 日記
令和4年2月7日(月)
③前半の部 現代訳
 入庵した頃は、
四月も初めという時期だけあって
春の名残も遠くなく、
またツツジが咲き誇り、
山藤の花は松に垂れ下がって、
時鳥がしばしば鳴き過ぎて行く頃、
宿かし鳥が鳴いて、
家を貸してくれるという便宜まであるのを、
寺をつつき破るという啄木鳥が
つついても嫌がるまいなどと
むやみに面白がって
(琵琶湖を眺望していると)、
 魂は「呉楚東南ニ坼(さ)ケ」と詠じた
杜甫の詩境にに走り、
身は中国の名勝瀟水・湘水や洞庭湖の
ほとりに立っているような気分になる。
 山は南西方向にそびえ立ち、
人家は丁度よいくらいに隔たって、
南から薫風は峰から吹き下ろし、
北からの風は湖水を渡ってきて涼しい。
 (見回せば)比叡山・ひらの高嶺より
はじまって、
辛崎(唐崎)の松には、霞が立ちこめ、
膳所の城があり、
瀬田の長橋があり、
釣り糸を垂れる舟がある。
 (耳を澄ませば)笠取山に通う木こりの声、
麓の田には、早苗取る歌、
蛍が飛び交う夕闇の空には
水鶏の戸をたたく鳴き声、
美しい景色と足りないものは何一つない。
 中でも、三上山は
富士山の姿に似通っていて
(毎日そこから富士山を眺めた)、
武蔵野深川の古い草庵も思い出され
また田上山をながめては
だれかれなと古人を偲ぶ


近江国の美しさを満喫!

2022-02-06 15:43:10 | 日記
令和4年2月6日(日)
 原文③は、他の文節より長いので、
前・後半に分けて解説することに。
 原文③前半の部
 さすがに春の名残も遠からず、
ツツジ咲き残り、山藤松にかかりて、
時鳥しばしば過ぐるほど、
宿かし鳥のたよりさへあるを、
木啄のつつくともいとはじなど、
そぞろに興じて、
魂(たましひ)、呉・楚東南に走り、
身は瀟湘・洞庭に立つ。
 山は未(ひつじ)申(さる)にそばだち、
人家よきほどに隔たり、
南(なん)薫(くん)峰よりおろし、
北風湖(うみ)を浸して涼し。
 比(ひ)叡(え)の山、比良の高根より、
辛(から)崎(さき)の松は霞こめて、
城あり、
橋あり、
釣たるる船あり、
笠(かさ)取(とり)に通う木(き)樵(こり)の声、
ふもとの小(お)田(だ)に早苗とる歌、
蛍飛びかふ夕闇の空に水鶏(くいな)のたたく音、
美景物(もの)として足らずといふことなし。
 中にも三(み)上(かみ)山(やま)は
士(し)峰(ほう)の俤に通ひて、
武蔵野の古き住みかも思ひ出でられ、
田上(たなかみ)山(やま)に古人をかぞふ。


否定的・刹那的な動詞で綴る!

2022-02-05 15:18:42 | 日記
令和4年2月5日(土)

 ②では、延宝三年(1680)、
すなわち十年前に、
芭蕉が日本橋小田原町を出て、
江東深川村の草庵に移った時から
現在までの行動が回顧されている。
 その文章は、簡潔で動きに富んでいる。
 蓑虫の蓑ををウシナウ
住んでいた家をハナレル
海岸の暑い日に面をコガス
荒磯にかかとをヤブル
湖水の波にタダヨウ
という動詞尽くしの文章で、
十年の年月の旅を回顧している。
 全て否定的で、刹那的な動詞で
自分の過去を綴っていく。
 それが俳諧師としての生き方のように!
 そして、現在の時制で、
幻住庵で文章を書く芭蕉の姿が
読者にははっきりと見えるように
、文章を閉じている。



国分山にある幻住庵が気に入ったよ!

2022-02-04 15:25:27 | 日記
令和4年2月4日(金)
原文②の口語訳
 私もまた江戸の市中を去って町外れに住み、
十年を経て五十に近い老いの身、
蓑虫が蓑を失うように庵を人手に渡し、
蝸牛の歩みで、
おくのほそ道を辿り、
名所象潟の暑い大洋に顔を焦がし、
砂丘の歩みに難儀し、
北海の荒磯でかかとを痛め、
この歳になって琵琶湖の波に漂う
心地である。
 ふと見れば、
鳰の浮巣が流れ留まることのできる
一本の蘆の葉陰を見つけたように、
私も身を託すことのできる
ささやかな住まいを頼もしく思い、
軒端を葺き直し、
垣根を結び加えたりして、
四月の初め、ほんのしばらくの間と
入った山が、
今ではこのまま出まいとまで
深く思い込むようになった。
 西行庵のとくとくの水を真似て、
「とくとくの清水」
 山の中腹にあり。




幻住庵に4月入居 原文

2022-02-03 16:21:53 | 日記
令和4年2月3日(木)
 今日は『幻住庵記』の第2文節の原文。
② 予また市中を去ること十(と)年(とせ)
ばかりにして、
五十(いそ)年(ぢ)やや近き身は、
蓑虫の蓑を失ひ、
蝸(か)牛(たつむり)家を離れて、
奥羽象潟の暑き日に面(おもて)をこがし、
高砂(たかすな)子(ご)歩み苦しき
法界の荒磯にきびすを破りて、
今(こ)歳(とし)湖水の波にただよふ。
 鳰(にほ)の浮巣の流れとどまるべき
蘆の一本のかげたのもしく、
軒端ふきあらため、
垣根ゆひそへなどして、
卯月の初めいとかりそめに入りし山の、
やがて出でじとさへ思ひそみぬ。