雨の夜と下弦の月

毎日を静かに、穏やかに生きていきたいと思う日々。
そのわりにはジタバタと暮らすワタクシの毎日を綴っております。

映像化。

2009-07-08 20:39:40 | tv&movie
「ノルウェイの森」をベトナム人の監督が映画化することになったという話をずいぶん前に聞いてびっくりしました。「1Q84」が200万部を突破したらしい村上春樹ですが、まさか「ノルウェイの森」の映像化を了解するとは思いもしませんでした。だって、誰がどういう映画にするにせよ、原作は日本一の大ベストセラー小説です。原作に忠実にするのか、全く別物として捉えるのか、いずれにしてもワタクシのように家の中を探せば文庫本が3~4組転がっている人間がブーたれるのは間違いない。キャストも、主人公のワタナベに松山ケンイチというのはまあ許せるのですが、直子が菊池凛子と聞いた時点で、ワタクシ的には「違う!」と思ってしまったわけで。別に菊池さん自体がどーのこーのというつもりは毛頭ないのですが、文章を暗記してしまうぐらい原作を読んだワタクシの中の直子は、もっとはかないイメージになってしまっているわけです。

もちろん、菊池さんはアカデミー助演女優賞にノミネートされるぐらいに演技力がある人なのは承知しています。が、芯が強すぎるような気がするのですよ。「ノルウェイの森」の直子は実のお姉さんやボーイフレンドに自殺され、徐々に精神を病んでしまい、ついには自殺してしまうようなキャラクターです。それに、菊池さんは実年齢が松山ケンイチより年上なので、お姉さんみたいに見えてしまうんじゃないかと。原作では自殺したボーイフレンドとワタナベ、直子は同級生なのです。本当に、村上春樹がよくOKしたなぁと思う。ベトナム人監督というのが映画化のミソではあるのでしょう。「ノルウェイの森」が売れまくっていた頃、国内のあらゆる媒体から映像化の話があったはずなのに、その時は頑として首を縦に振らなかったと思われます。それから20年近く経った今、ベトナム人監督が映画化することを了承したわけですよね。お金が欲しいわけではないだろうし、本だって出せば売れて売れて仕方ない状況なのです。新作を上梓するまでに5年も6年もかかりはするけど、その間だって村上作品は国内・国外を問わず読まれ続けている。それこそ、優雅な印税生活が送れてるだろうから、お金のためではないと思うのですよ。

劇場公開は来年になるらしいですが、ワタクシの座右の書である「ノルウェイの森」を見に行くかどうかということになると、かなり悩ましい問題ではあります。正直、怖いもの見たさ的な感覚がないわけではないのですが。これは村上春樹の小説とは別物だと100回ぐらいおのれに言い聞かせないと、なかなか受け入れるのは難しいのかもしれません。「ドラゴンボール」がハリウッドで映画化されたときに、これはマンガとは別物だと言い聞かせて見に行ったという方のブログを読みましたが、ほとんど同じ心境になることは間違いない。村上作品で一番リアリティがあるのが「ノルウェイの森」だし、他の小説では羊男とかその他もろもろ、次元の違う物事が出てくるので、映像化しようにも出来なさそうなのはよく分かります。そういう意味で、映像化するとしたら一番正しい選択ではあると思います。願わくは「世界の中心で、愛をさけぶ」みたいなお涙頂戴的な映画にはしないで欲しいものです。それにしても、村上春樹が何故この時点で映画化を了承したのかという、素朴ながらも根本的な疑問は最後まで残るんだろうなぁ。