日々雑感 ~写真と思い~

今日と言う日は、二度と来ない。 
だから今日を大切に・・そんな私のデジカメ散歩 

* お葬式 *

2011年01月23日 | 雑感



「お父さんを送ることになるか、先に私が送られるか、どっちか分からへんけど・・流す曲お父さん何がいい?」
「ハう・・・ん、ハード・タイムズ,(カム・アゲイン・ノー・モア)かなぁ、いやシェナンドウ・・・いややっぱりハード・タイムズやなぁ」
「稲葉さんの歌入り?」 「いや・・メロディーだけで」 「私は・・、アニー・ローリーかな」 
とっさに浮かんだのですが、どちらも2人にとって大変思い深い一生忘れられない曲なのです。

葬儀場に入ると耳慣れた曲が・・ボリュームを下げて流れていたのは、阪神タイガースの応援歌でした。
正面に掲げられた夫の親しい友人の遺影の写真の顔が、爽やかに微笑んでいました。
見た途端に涙が頬を伝います。
家族葬とは聞いていましたが、20名足らずの親族の方々と後は仲人をしてもらったと言う夫の親しい友人、
その友人との流れの中で、15年前くらいに知り合った私たちの3人です。

端の喪主席に着座された奥さまは深くうなだれたまま・・終始、一寸の動きもないままの姿でおられました。
ご焼香の時も、遺影に目をやることもなく手早にすまされ、また深々と頭をうなだれて座っておられました。
憔悴しきったような奥さまでしたが最後のお別れの時は「お父さん、何か言うてよ・・何か言うてよ・・」
号泣しながらその言葉を繰り返しておられました。 
静かな館内に奥さまの嗚咽が響きわたり、ご親族の方は更なる悲しみを増しておりました。
泣き崩れた奥さまは立っておれない状態になり、身内の方が身体を支えておられます。  
私たち3人も泣きながら、人数の少ない分、言われるままに何度も棺に花をたむけさせて頂きました。 
タイガースのシャツをかけられた友人、寝顔のような安らかな顔をして・・。
奥さまに重なり、声をかけられる身内の方が泣きながら、「なんであんたがおらへんようになるのよ」本当にそうです。
私たちもその言葉につきるのです。
出棺の時は、ボリュームをあげてタイガースの応援歌が流れていました。
その友人ご夫婦が京セラドームで観戦した日、私たちも同じドーム内で観戦していた事がありました、負け試合でしたが。

同じ妻の立場として、そして・・あんなにもいい人がこの世からいなくなるなんて、悲しく辛く涙がとめどもなく溢れます。
子供さんがおられなかったのですが、とても仲の良いご夫婦でした。 

最近は家族葬が多いです、出棺の時見送ったのは私たちだけでこんなに少ないのは初めてですが、
奥さまが崩れられた葬儀も初めてでした。
一般の参列の方が多ければ、きっと気丈にふるまわれたかも知れません。
夫に知らせた以外は恐らく電話もしておられないのでしょう。 もしかしたら律儀なご主人の遺言だったかも知れませんが。
身内だけの葬儀で最後の別れには奥さまのように思い切り泣き崩れてもいいかも知れない・・そう感じました。
私だったらどうするだろうと思います。 

「私の場合はほんまに身内だけでいいよ。 でもお父さんは友達いっぱいいるから賑やかに見送って欲しいしね、盛大になるね」
「今はまだ現役やし、そりゃぁ多いわな」 
「もうこの年になったらそんなこと決めておいてもいいかもね、突然なこともあるかも知れへんし」縁起でもないのですが。
「そうやな」 年の瀬にご主人さまが旅立たれたご近所の方がそうでしたから。
「私も写りのいい、お気に入りの写真があったら、置いとこ、曲はやっぱりアニー・ローリーやね」

夕方温泉一休に夫と行く道すがら、そんな会話をしていました。  ほんと縁起でもないのですが。
でも・・(こんな事は、まだずっとずっと先でありますように・・いつまでも夫婦でいさせて下さい・・)
心の中でそう祈っていました。