11時半頃引越し屋さんは来たらしい。
2台と言っていたが、12時前長女と行ったときには、結構運びこんでいて大きな食器棚やベッドやTVとか大物ばかりが残っていた。
最初は応援入れて7人、あとは4人で最後まで。 この4人で鹿児島まで行くそうだ。
専門職とはいえすごい技、あっと言う間にこなしていく。 1時にはすっかり何もなくなった。
ひとりお兄ちゃんが、ベランダのものを運ぶ時、「目の前にドームがあるんですね、すごいいい所ですね~」目を輝かせていた。
仕事に集中していて、目線も違うし気づかなかったのだろう。
それにしてもフットワークよろしく、常にきっちり声をかけあいながらプロだが手際の良さったら。
がっちりした人・・と思いきや太った人はいなくて、えらく細い人たちで運ぶのは力ではないことが伺える。
重い食器棚やベッド、重い荷物もタッタッタ・・。
その作業の状況は実に感動ものだった。
小泉さんではないが「感動した!」 そう言ったら若い子がにこっと笑って「有難うございます」と頭を下げた。
さすがアリさん・・気持ち良くまめにこつこつ働く。
引っ越しする家の男の子が「この子寂しがりやなんです」と、引っ越し屋さんにくまのぬいぐるみを見せるCMをご存じだろうか。
引越しやさんがそのぬいぐるみを乗せて笑顔で車を走らせているのがある。
荷物を運ぶとき、これはこう言う風にとか、色々降ろすときのことを踏まえ息子と言葉を交わしながら運んで行く。
そんな会話が鹿児島で降ろすときの気持ちに、繋がるのだろうなぁ。
ものを運ぶ仕事に添えて、依頼人の思いや思い出までも運んでくれるのだろう。
10年間の詰まったものたちが、1時間半であっという間に車の中に詰めこまれた。
「それではご主人と奥さんには明日鹿児島で」帽子をとって挨拶される。
息子がすかさず「奥さんは先に行っているんです、姉です」 お互いに笑いあったが、それも大事な繋がりになった。
10本ほど保冷バッグに入れていた飲み物を渡した。 この後フェリーで鹿児島へ。
明日は雨の予予報である。
「私は晴れ男なので・・。 泳ごうかと思ってるくらいです」リーダーの方が、そんな冗談を言う。
みんながいっそうに和んだ。
「よろしくお願いします、有難うございました」深々と頭を下げ2台の車を見送った。
沢山あった荷物がなくなり、がらんとした部屋。
3人で黙々と掃除をした。 この場所で過ごした様々な集まりの日々が思い出された。
かけつけてくれた不動産屋さんが、「とてもきれい使ってくれているから良かった」と言ってくれた。
明日にはハウスクリーニングが入り、夕方には次に住む人に引き渡しされる。
息子はあちこちの部屋を懐かしむかのように、くまなく写真をとっていた。
場所柄か自治会で話し合ってのことか、このマンションは住人でなくても出会う人とは大人も子供も必ず挨拶を交わす。
一緒にエレベーターに乗るとき、降りるとき「ありがとうございます」「さようなら」「お先です」
当たり前のように挨拶を交わす。 来るたびに気持ちが良く、品性を感じた。
今までこんなマンションに出合ったことがない。 いいマンションだった。
マンションの前の公園のビヨウヤナギの黄色い花が、さようなら・・と見送っている気がした。