箕面市の止々呂美地区は大阪府で唯一、柚子を生産しているだけでなく、良質なクヌギ材を用いてつくる「菊炭(きくずみ)」の生産地でもあります。
菊炭は、木材の断面の中心から外側に向かって放射状の細かい割れ目が入っており、菊の花のような美しい模様になるよう製炭された木炭です。その断面の美しさはもちろん、火つき・火持ちが良く火力があるうえに、パチパチとはじけたりせず着物に燃え移りにくいことから、高級炭として茶席などで重用されてきました。
昔はさかんに行われていた炭焼きですが、昭和30年代以降、電気・ガスの普及と生産者の高齢化などにより生産が減少し、市内で現役の炭焼き窯は現在1つのみとなっています。
今回取材させていただいた中上さんの炭焼き窯は「中政園窯(なかまさえんがま)」といい、直径約2メートル、高さ約1.5メートルのドーム型で、中は大人が4人ほど入ることができる大きな窯です。
炭焼きには、樹齢10年から20年のクヌギを使用します。これらは何度切っても再生される天然木で、伐採後の切り株から再び新しい芽が生え、8年程度で炭づくりに適した太さに成長するそうです。また、クヌギは伐採適齢期(7~8年程度)で伐採することによって、萌芽更新が促進され、里山林の循環を支える役割も果たしています。
1月に菊炭の材料となるクヌギを集め、2月下旬には窯に材料を入れて、火入れを行う「窯入れ」が行われます。その後、三日三晩かけて焼き、徐々に空気の入りなどを調整していきます。煙が青白い色に変わるタイミングで窯の入口を塞いで蒸し焼きにし、少しずつ炭を冷ましていくことで直径約5~10cm、長さ約70cmの美しい菊炭が完成します。
2月25日(火曜日)、中政園(大阪府箕面市下止々呂美10819)でとどろみの森学園6年3組の児童約29名が、地元の特産品を知る総合的な学習の時間の一環として菊炭づくりを体験しました。
とどろみの森学園では、約8年で成長するクヌギのサイクルに合わせて、校内に植えられているクヌギの伐採を計画的に行っており、その材木を用いて、毎年小学校6年生の児童が菊炭づくりの体験をします。
子どもたちは、窯から炭を取り出す係や炭を運ぶ係、炭を箱に詰める係に分かれ、全員が全ての役割につけるようにローテーションで作業に取りかかりました。
窯がまだ温かい状態で、子どもたちの作業が始まり、全身灰まみれになりながらも満面の笑みで菊炭を取り出していました。
菊炭づくりを体験した児童は「木の束を切ったり、窯出ししたりするのが楽しかったです。」や「木の長さを合わせて隙間ができないように並べていくのが難しかったです。」と話し、普段はできない体験を楽しんでいました。
市内唯一、現役で炭焼きを行っている中政園窯の中上さんは「昔から営々と行われてきた炭焼きも、平成11年頃には「最後の炭焼き職人」と呼ばれるようになりました。たまたま止々呂美小中PTA役員をしていた頃に、伝統を引き継いでいきたいという思いから、学校に働きかけると「伝統を受け継ぐ素晴らしいことだ」と、快く受け入れてくださいました。それからは一年も途切れることなく、毎年この時期に、とどろみの森学園の子どもたちに炭焼き体験をしていただいています。子どもたちに昔の話をしますが、実際どこまで伝わっているのかは分かりません。ですが、この伝統である炭焼きの工程の一部を体験したんだと、誇りに感じ楽しかったと思ってくれれば嬉しいです。」と話しました。
<お問い合わせ先>
みどりまちづくり部 農業振興室
TEL:072-724-6728、FAX:072-722-2466
<みんな楽しそうに菊炭をとりだしていたモミ~!