入院中にこの本を読んだ。
「ファイティング寿限無」。
立川談志の弟子。立川談四楼。
嘗ての部下の差し入れ。
面白かった。
師弟関係はかくあらねばならない。
人が人に惚れるには理屈はない。
弟子に惚れられて自信を持って言い切る。
人間としての在り方そのものを迷わずに伝える。
正しいか間違っているかなどは問題ではないのだ。
歯向かった瞬間でその関係は瓦解する。
信頼関係などと言う陳腐な契約ではないのだ。
理不尽が前提で師匠の言うがままのコトが実行して見せられるか。
それが芸へと結びつけられるかが勝負なんだ。
芸能に拘わらずすべての事柄で優劣が現れるのは何か?
やっぱり人間の差なんだと思う。
込められた思いがどれだけ強いかどうかで決まる。
主人公の「小龍」はボクシングが好きなわけではない。
あくまでどこまで行っても「落語」が好きなだけなんだ。
そして談志の落語が好きなんだ。
しかし、売れるためには目立たなくては勝負にならない。
その手段として選んだのがボクシング。ヤクザに間違って喧嘩を売ってしまい、
殺されかけて窮鼠猫を咬むがが如く放ったパンチが想像以上の破壊力を持っていた。
自分で信じられる能力にすがりつき好きでもないスポーツを利用しようとする。
でも、ボクシングは命がけのスポーツ。
人間誰しも必死になるのは生き死にがかかるときなんだ。
追い詰められないと何もしない人が居るけれど、追い詰められても何もしない人も居る。
この差はいったいどこから来るのだろう?
それは、たぶん、惚れている奴がいるかどうかなんではなかろうか・・・・
この馬鹿げた設定のもとに書かれた小説を読み終えて感じたこと。
惚れるコトの対象が人間であればあるほど
素直で純粋でいられる。
身体が圧倒的に弱っている時だからだろう・・・・
久しぶりに涙が出ちゃった。