たまたま今朝まで『ガダラの豚』を再読していたんだけれども、やはりケニア脱出行までは時間を忘れるほどの最高のエンタテインメント。なんだけど、最後のアレは描写だけが先走っていてもったいないやね。
それはともかく『ガダラの豚』(1996年)の中で現代の呪術として、物語の大きなキイワードになっているのが<情報>と<テレビ>だった。登場人物を次々と惨殺し、主人公たちを追い詰めるスプラッターの館と化すのが<テレビ>(局)だった。らもさんにそんな意識があったのかはわからないけれども、このブログのVIBE RHYMEで近田さんの言葉(1995年)を引用しているんだが、やっぱりその当時、心ある人たちにとって<テレビは敵>だったかもしれない。<呪術的>、<呪術敵>と言ってもいいかもしれない。
それから約10年ぐらい経った。目の前の小箱がテレビに取って代わって呪術的な存在になり、ネットはテレビに替わって呪詛し続けている。いや、テレビ(に出ている人を含めて)が呪詛の対象でさえある。ついさっきまで見ていたモニターでは、全国各地のシャーマンたちが<居酒屋にワインを持ち込んで断られた某作家が、著作で店長を罵り、自分たちの人脈を誇る様>を呪っていた。まあ、呪われる方も呪われる方なんですけど(もちろん呪術は呪いや祟りだけを指すものではないが…)。
ということで『ガダラの豚』という作品は実に今現在も有効なのだった。
一方『ガダラの豚』では舞台のひとつとなった呪術の故郷、ケニアでは…。
<【ナイロビ=共同】ギネスブックに世界最高齢小学生として認定されていたケニア人男性キマニ・マルゲさん(90)が14日、胃がんのため、卒業まで2年を残して同国内で死去した。ロイター通信や地元メディアが伝えた。マルゲさんは1950年代に英国からの独立闘争を戦った秘密結社の元戦士。家庭の事情で通学できず読み書きができなかったが、ケニア政府が2003年から義務教育を無料化したため、「聖書を読みたい。お金を間違えずに計算できるようになりたい」などとして04年1月から通学を始めた。>(中日新聞 8月15日付)
生前、マルゲさんは「大学を出て獣医師になるのが目標」と話していたそうだ。
それにしても、ものすごい人生だ。しかも50年代に秘密結社の戦士だったということは、その人生の半分以上はニュースには書かれていない「お金を間違えずに計算できない」人生を送っていた可能性がある。
しかし、それでも将来への夢がある。
驚くほど短い人生もある反面、太く、長い人生もアフリカにはある。
(追記)
ワインの居酒屋持ち込みはあり?(J-CASTニュース 8月17日)
浮世には融通や寛容といった「糊しろ」は必要だと思う。そして、確かに某作家が愚痴っているように、そういう「糊しろ」は失われつつある。ただ失わせたのは自分かもしれない。
簡単に「絶対」とか「許さない」とか言っちゃう人、増えたね…。
それはともかく『ガダラの豚』(1996年)の中で現代の呪術として、物語の大きなキイワードになっているのが<情報>と<テレビ>だった。登場人物を次々と惨殺し、主人公たちを追い詰めるスプラッターの館と化すのが<テレビ>(局)だった。らもさんにそんな意識があったのかはわからないけれども、このブログのVIBE RHYMEで近田さんの言葉(1995年)を引用しているんだが、やっぱりその当時、心ある人たちにとって<テレビは敵>だったかもしれない。<呪術的>、<呪術敵>と言ってもいいかもしれない。
それから約10年ぐらい経った。目の前の小箱がテレビに取って代わって呪術的な存在になり、ネットはテレビに替わって呪詛し続けている。いや、テレビ(に出ている人を含めて)が呪詛の対象でさえある。ついさっきまで見ていたモニターでは、全国各地のシャーマンたちが<居酒屋にワインを持ち込んで断られた某作家が、著作で店長を罵り、自分たちの人脈を誇る様>を呪っていた。まあ、呪われる方も呪われる方なんですけど(もちろん呪術は呪いや祟りだけを指すものではないが…)。
ということで『ガダラの豚』という作品は実に今現在も有効なのだった。
一方『ガダラの豚』では舞台のひとつとなった呪術の故郷、ケニアでは…。
<【ナイロビ=共同】ギネスブックに世界最高齢小学生として認定されていたケニア人男性キマニ・マルゲさん(90)が14日、胃がんのため、卒業まで2年を残して同国内で死去した。ロイター通信や地元メディアが伝えた。マルゲさんは1950年代に英国からの独立闘争を戦った秘密結社の元戦士。家庭の事情で通学できず読み書きができなかったが、ケニア政府が2003年から義務教育を無料化したため、「聖書を読みたい。お金を間違えずに計算できるようになりたい」などとして04年1月から通学を始めた。>(中日新聞 8月15日付)
生前、マルゲさんは「大学を出て獣医師になるのが目標」と話していたそうだ。
それにしても、ものすごい人生だ。しかも50年代に秘密結社の戦士だったということは、その人生の半分以上はニュースには書かれていない「お金を間違えずに計算できない」人生を送っていた可能性がある。
しかし、それでも将来への夢がある。
驚くほど短い人生もある反面、太く、長い人生もアフリカにはある。
(追記)
ワインの居酒屋持ち込みはあり?(J-CASTニュース 8月17日)
浮世には融通や寛容といった「糊しろ」は必要だと思う。そして、確かに某作家が愚痴っているように、そういう「糊しろ」は失われつつある。ただ失わせたのは自分かもしれない。
簡単に「絶対」とか「許さない」とか言っちゃう人、増えたね…。