<原発の代替になる「安全でクリーンなエネルギー」なんて、決まってるじゃない。「人力」だよ。そうでしょ? 早くそっちの方へ持っていかないとヤバイよ。(中略)今の若いやつは、「働く」ってことを知らないんだから。その意味を知らないでいやいややってたら、日本の産業が没落するのなんて、当然でしょ。原発作って「エネルギーだけはある」という状況を作り出してしまうってことは、実はそっちの方に日本を持っていってしまうということでもあるんだから。(中略)
「原発がなくなったらだれが一番困るのか?」の答は、病院の植物人間とか、足腰が弱った都市の老人だよね。自分からはなんにもしないで、全部を周りのエネルギーに頼っているんだから。膨大なエネルギーを必要とする人為的な「環境整備」を本当に必要としている人間がどれだけいるのかっていうの。今のエネルギーの「需要予測」っていうのはさ、そういう植物人間型の増大を前提に算出されてるんだよ。「便利」とか「快適」という名のもとにさ、ホントにみんな、植物人間になろうとしてるじゃない。「なるべく働きたくない……」という怠惰を前提にして、「快適」を作ろうとしてるじゃない。エネルギーを持って働いてる人を「キタナイ」「貧しい」「下層」ってことにして切り捨てて、「人間がもっと自力で動いたら、原発がなくてもやっていけるかもしれない」っていう試算は、誰もしようとはしない。人間関係が怖いから、人間に触れないようにして、とんでもなく無駄なエネルギーの使用を平然と「前提」に置いてるね。(中略)
要するに今みんなが求めているものは「何もしなくてもすむ老人のための快適生活」なんだよ。もっとも、その快適生活を享受しようとしてるのは、引退した老人じゃなくて、働き盛りのサラリーマンだったりはするけどね。なんというメンドクサガリ屋なんだろう。「無能」と「メンドクサイ」が「科学技術」と称するものの上に乗っかって近親相姦やってるだけだぞ。>
(橋本治『89』マドラ出版1990/「人工エネルギーで“快適”生活を」より)
'89〈上〉(河出文庫―橋本治コレクション)
<昭和が終わり、天安門事件が起こり、リクルート事件がピークを迎え、美空ひばりが死亡し、東西の壁が崩壊し、宮崎勤事件が発覚した一九八九年。さまざまな時代の亀裂を見せたこのとんでもない一年に真向からぶつかり、体を張ってラジカルに問いかけ、問題の中心をひっぱり出す。“いま”という歴史をどう読み解くかをすべての人に示してくれる恐るべき89年の総括。>
登録情報
文庫:323ページ
出版社:河出書房新社 (1994/01)
ISBN-10:4309404014
ISBN-13:978-4309404011
発売日:1994/01
商品の寸法:14.7x11.2x1.5cm
'89〈下〉(河出文庫―橋本治コレクション)
<男の子にも女の子にも、僕にも君にもあった1989年を総括し、“今”の生き方を問う。>
登録情報
文庫:391ページ
出版社:河出書房新社 (1994/01)
ISBN-10:4309404022
ISBN-13:978-4309404028
発売日:1994/01
商品の寸法:15.6x11.2x1.8cm
「原発がなくなったらだれが一番困るのか?」の答は、病院の植物人間とか、足腰が弱った都市の老人だよね。自分からはなんにもしないで、全部を周りのエネルギーに頼っているんだから。膨大なエネルギーを必要とする人為的な「環境整備」を本当に必要としている人間がどれだけいるのかっていうの。今のエネルギーの「需要予測」っていうのはさ、そういう植物人間型の増大を前提に算出されてるんだよ。「便利」とか「快適」という名のもとにさ、ホントにみんな、植物人間になろうとしてるじゃない。「なるべく働きたくない……」という怠惰を前提にして、「快適」を作ろうとしてるじゃない。エネルギーを持って働いてる人を「キタナイ」「貧しい」「下層」ってことにして切り捨てて、「人間がもっと自力で動いたら、原発がなくてもやっていけるかもしれない」っていう試算は、誰もしようとはしない。人間関係が怖いから、人間に触れないようにして、とんでもなく無駄なエネルギーの使用を平然と「前提」に置いてるね。(中略)
要するに今みんなが求めているものは「何もしなくてもすむ老人のための快適生活」なんだよ。もっとも、その快適生活を享受しようとしてるのは、引退した老人じゃなくて、働き盛りのサラリーマンだったりはするけどね。なんというメンドクサガリ屋なんだろう。「無能」と「メンドクサイ」が「科学技術」と称するものの上に乗っかって近親相姦やってるだけだぞ。>
(橋本治『89』マドラ出版1990/「人工エネルギーで“快適”生活を」より)
'89〈上〉(河出文庫―橋本治コレクション)
<昭和が終わり、天安門事件が起こり、リクルート事件がピークを迎え、美空ひばりが死亡し、東西の壁が崩壊し、宮崎勤事件が発覚した一九八九年。さまざまな時代の亀裂を見せたこのとんでもない一年に真向からぶつかり、体を張ってラジカルに問いかけ、問題の中心をひっぱり出す。“いま”という歴史をどう読み解くかをすべての人に示してくれる恐るべき89年の総括。>
登録情報
文庫:323ページ
出版社:河出書房新社 (1994/01)
ISBN-10:4309404014
ISBN-13:978-4309404011
発売日:1994/01
商品の寸法:14.7x11.2x1.5cm
'89〈下〉(河出文庫―橋本治コレクション)
<男の子にも女の子にも、僕にも君にもあった1989年を総括し、“今”の生き方を問う。>
登録情報
文庫:391ページ
出版社:河出書房新社 (1994/01)
ISBN-10:4309404022
ISBN-13:978-4309404028
発売日:1994/01
商品の寸法:15.6x11.2x1.8cm