ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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和田慎二『ピグマリオ』

2018-10-20 21:43:18 | 漫画
今回は、漫画についての記事です。

以前、さくらももこさんの訃報に関して書きましたが、今回は、少女漫画つながりということで、『ピグマリオ』という漫画について書きます。

『ピグマリオ』は、故・和田慎二先生が白泉社の『花とゆめ』という雑誌に連載していた漫画。

和田慎二先生といえば『スケバン刑事』が有名ですが、『ピグマリオ』は、その『スケバン刑事』よりもずっと前、学生時代から基本的な構想があったという作品です。
アニメ化もされていて、私はアニメでこの作品を知りました。そのアニメ版は、あまりクオリティがよくないということで打ち切りとなり、そのまま今にいたるまで封印されてしまっているようですが……しかし私は、そのアニメからコミックのほうを読むようになり、全巻読んでいました。小学校4、5年生ぐらいのことだと思いますが、そのころ結構はまっていた作品ですね。

内容は、メデューサによって母親を石にされてしまった王子が、母をもとの姿に戻すべく、メデューサを倒すための旅に出る……というもの。神々や魔物、ドラゴンなども出てくる、正統派のファンタジーとなっています。
『ピグマリオ』というタイトルは、“ピグマリオン効果”などで知られるピグマリオンの伝説からとられたもので、石化した人を生身の人間にする……ということで、こういうタイトルになってるようです。

原作の連載が始まったのはだいぶ昔で、もう私が生まれる前のことなんですが、ずっと後になって、メディアファクトリーというところから新装版のコミックが出ています。
今回、それを入手しました。



ひさびさに読み返そうとしたところ、かつて全巻そろっていたはずの白泉社コミックスが今どこに埋もれているのかがわからず……この新装版を買いました。

このメディアファクトリー版では、できるだけ連載時の形にしようということで、カラーページや二色刷なども再現。また、和田先生による書き下ろしの部分もあります。カラーページの再現があるだけでも、この版をゲットする価値はありました。ただ、原稿が紛失してしまっている部分もあるようで、カラーを再現できていないページもありますが……

最近、昔みてたアニメや漫画を見返すということをよくやってるんですが、やはり懐かしいですね。
とりわけ『ピグマリオ』は、私のルーツの部分に大きな影響を与えているんだな……ということを、今回あらためて認識させられました。


さくらももこさん、死去

2018-08-27 22:20:18 | 漫画
さくらももこさんが亡くなったというニュースが飛び込んできました。
がんだったそうで、まだまだこれからというところでの突然の訃報に、ただただ驚かされるばかりです。

『ちびまる子ちゃん』は、私はリアルタイム世代でした。
まあ、長くやってるアニメなのでリアルタイムもなにもないんですが……ちょうど自分が一番漫画やアニメに触れていた頃に始まり、人気を獲得していったという点で、リアルタイマーだという自負があります。
のんびりとしているようで笑いがあり、またときにはしんみりとくる。あの真似しようとしても真似できない雰囲気は、一つの新しいジャンルを開拓したともいえるんじゃないかと思いますね。

それから、さくらももこさんといえば、独特な感性でつづられるエッセイなども知られています。

このブログでたびたび名前が出てくる忌野清志郎と一緒に歌を作ったこともありますね。
詞:さくらももこ、曲:忌野清志郎の「宇宙大シャッフル」は、最高の曲で、歌詞も清志郎が書いてるんじゃないかというぐらいのセンスを感じました。

清志郎も60を前にして、やはりがんで世を去りましたが……
やはり、非凡な才能は神さまがそばに置いておきたくなるということなんでしょうか。
とにかく、冥福をお祈りしたいと思います。

サイボーグ009の日

2018-07-19 16:39:37 | 漫画
今日、7月19日は、“サイボーグ009の日”だそうです。

そんな日があったんですね。

タイトルに数字が入ってるんですから、その数字で記念日にしたいところですが……009では、それも難しかったということなんでしょう。
1964年に連載が開始された日付をもって記念日としたそうです。

以前『笑ゥせぇるすまん』についての記事で、何十年も前からやっていて今でもときどきアニメ化されるような作品はめったにない……といったことを書きましたが、009もそのわずかな例のなかに含まれるかもしれません。石ノ森章太郎も、藤子不二雄とはほぼ同世代のトキワ壮出身者で、漫画界のジャイアントですね。画面構成の斬新さなど、漫画を革新したという点では、手塚治虫と比肩される存在でもあるようです。

子供の頃、我が家には昔の名作漫画がいっぱいあって、009もその一つでした。
全巻そろっていたわけではないので読んでない部分も結構ありますが、子供心に燃えた作品でしたね。

私が読んだ中に、009をはじめとするサイボーグたちがベトナムへ行くというエピソードがありました。
ベトナム戦争の時代のことで、作者の問題意識を反映したものでしょう。昔の漫画は、少年向けであっても、そういう社会的なメッセージを込めたものが結構あったように思います。そのへんのところもふくめて、時代が変わったなあ、と感じさせられますね。

藤子不二雄A『笑ゥせぇるすまん』

2018-06-11 16:34:44 | 漫画
これまでこのブログでは、アニメ版の『笑ゥせぇるすまん』リメイク版と旧版について書いてきました。

ことのついでなので、ここで漫画原作についても書いておきましょう。



作者は、いうまでもなく藤子不二雄A先生。

今さらですが、作品の内容を紹介します。

セールスマンでありながらお金は一切いただきませんという怪人・喪黒福造が「ココロのスキマ…お埋めします」と称して満足を与える。しかし、それには条件があって、欲におぼれた客が約束を破ると、その報いを受ける……というのが、だいたいの筋書きですね。

人間の欲深さとそれに対する報い……が主題ということになると思いますが、しかし、そう単純にまとめてしまえるような作品でもありません。喪黒福造というのは、メフィストフェレス的な存在で、最初から破滅させるつもりでいるとしか思えないような場合もあります。
「あれほどいったのに……」みたいなことを喪黒福造はよくいいますが、そんなにいってたっけなあ、と思うことも少なくありません。
約束を破った場合でも、いや、この状況じゃしょうがないだろ……と思うこともあります。
でも、たとえいくらツッコミどころがあろうと、そんなことはおかまいなしに、有無をいわさずドーンとくる。
『笑ゥせぇるすまん』というのは、そういう作品なんですね。

先日読んだ青崎有吾さんの『体育館の殺人』という小説にも、喪黒福造の名前が出てきました。
あの作品に出てくる探偵役はアニメオタクで、いろんな現代アニメの話をしていて私にはさっぱりわからないんですが、そんな彼があるとき喪黒福造の名前を出し、そこだけわかるんです。もう、そういう世代を超えた存在になってるんです。

思えば、この漫画が『黒ィせぇるすまん』として最初に発表されたのは、1969年。じつは、かの『ドラえもん』連載開始とほぼ同時なんですね。
それが、ほとんど半世紀たった今なお新たにアニメ化される……こんな作品がどれだけあるかということを考えると、もうサザエさんとゲゲゲの鬼太郎、あるいはいくつかの手塚作品ぐらいしか思い浮かびません。ある意味、『笑ゥせぇるすまん』は国民的アニメといえるんです。

なんとなく暮らしている日々の中で、ふと、喪黒福造のあの笑顔に会いたくなる。
ココロのスキマを埋めてもらいたくなる。
『笑ゥせぇるすまん』は、そんな不思議な魅力のつまった作品なのです。

青山剛昌『名探偵コナン』

2018-03-09 16:05:47 | 漫画
先日ハイロウズの「胸がドキドキ」について書きましたが、その記事のなかで『名探偵コナン』の話が出てきました。

ついでなので、今回は『名探偵コナン』について書きます。

……といっても、あれこれいうまでもなく、誰でも知ってる作品ですね。
青山剛昌先生が描く、本格系ミステリー漫画です。

 

ハイロウズが原初的なロックンロールを目指しているとしたら、コナンは原初的なミステリーを志向してるんだと思います。

「ロックという音楽は時代によってさまざまに形を変えてきましたが、いつの時代にも奏でられる普遍的なスタイルはあります」とハイロウズの記事で書きましたが、これはミステリーについてもいえるでしょう。
ミステリーも、時代の流れとともにいろんなサブカテゴリーを生んできましたが、やはり普遍的なスタイルはあって、“本格”と呼ばれるジャンルがそれだと思うわけです。

殺人が起きて、刑事と探偵が出てきて、「これは……密室ですね!」となって、最後は関係者を一堂に集めて「犯人はあなたですね!」とくる。

これがミステリーってものだと思うんです。

世のみなさんも、そんな本格ミステリーを読みましょう。

……ということで、ここでむりやり自著の宣伝に着地します。

コナンみたいな、とよく評される、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』、よろしくお願いします。