ロック探偵のMY GENERATION

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『盲獣vs一寸法師』

2018-07-22 21:36:21 | 映画
今回は、映画関連記事です。

このブログでは、映画系記事としてvsモノをいくつか扱ってきましたが、その延長で、『盲獣vs一寸法師』という映画について書きましょう。



原作は、江戸川乱歩。
乱歩の「盲獣」と「一寸法師」という短編をミックスして一つの映画にしたものです。

「一寸法師」のほうは、このブログで一度言及しました。
乱歩自身はこの作品のできに不満で、一時的に休筆してしまったほどですが、世間的にはそれなりに評価されたようで、この作品は何度か映画化もされています。
また、盲獣のほうも過去に何度か映画化されてるみたいです。

しかしながら、現代にこれをやるのはある種のチャレンジですね。
時代の変化というものがありますからね。昔は特に問題にされなかったことが、今では問題にされるということがあります。

乱歩作品では身体障碍あるいはそれに類するものが描かれることは珍しくなくて、現在では“不適切”とされてしまうであろう表現が多々ありますが、2000年ごろでもこれは結構ギリギリだったんじゃないかと思えます。

内容については、単に2つの作品をミックスしただけではなく、内容にも若干変更が加えられています。特に、「盲獣」のほうはラストの部分がかなり変わっていて、どうしてこんなふうに変えたんだろうなと考えさせられます。

ちなみに、「vs」といってはいますが、盲獣と一寸法師が直接対決するわけではありません。
両者が、競い合うようにして犯罪を重ねていく……というような話です。原作だと、「盲獣」に明智小五郎は登場しないのですが、この映画では「盲獣」のほうも明智探偵が関与します。

その明智小五郎を演じているのは、塚本晋也さん。
この作品では、監督としてではなく、俳優として出ています。
そのほかにも、園子温さんなど、多くの映画監督が俳優として出演しています。
そして、ワトソン的立場の小林紋三役をつとめるのは、リリー・フランキーさん。これが映画初出演なのだそうです。

監督をつとめるのは、石井輝男さん。
この映画を見るまで私は知らなかったのですが、カルト映画の世界では巨匠なのだそうで。
石井監督にとっては、この作品が遺作となったそうです。

ほかにも、某女性政治家の先生が出演していて……といった、話の内容以外のことでいろいろと話題になった作品でもあります。

そういうもろもろを考えると、じつは結構すごい映画です。

しかしながら、画質というか、映像のクオリティに関しては、賛否両論あるようですね。

監督の主宰する映画塾のようなものの塾生が中心になって作った作品で、良くも悪くも自主制作っぽさが濃厚に出ています。
私もかつて自主制作映画の手伝いをやってたことがありますが、まさにああいう感じですね。そのスタイルで昔を舞台にした映画を作るのがかなり難しいこともよくわかります。見ようによっては、かなり苦しいシーンがあるのも事実でしょう。

とはいえ、カルト映画界の巨匠が監督というだけあって、そのカルト感はものすごいですね。
グロ系の演出はチープですが、こういう映画はむしろいかにも作り物というチープな感じのほうが味があっていいと思います。ただ、いくらインディー系とはいえ、画質はやっぱりフィルム画質にしてほしかったな……と、そこだけはちょっと残念です。