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ジョン・デンバー「カントリー・ロード」 John Denver, Take Me Home, Country Roads

2019-01-15 16:18:49 | 音楽批評
今回は、音楽記事です。

先日、金曜ロードショーで『耳をすませば』が放映されて、話題になってました。

そこで今回は、あの映画のテーマソングである「カントリーロード」について書こうと思います。

オリジナルは、ジョン・デンバーですね。

オリビア・ニュートン―ジョンのバージョンも有名ですが、作ったのはジョン・デンバーさん(と、何人かの共作者)です。

歌の中では、ウェストヴァージニア州のことが歌われてますが……実際には、ジョン・デンバーはウェストヴァージニアの出身ではありません。
どころか、この歌を作った時には、ウェストヴァージニアに行ったこともなかったそうです。
つまり、あの歌は完全にフィクションなわけなんですね。

まあ、名歌というのはそういうものかもしれません。

和歌なんかでも、歌人が各地の名勝を歌っていますが、ほとんどの場合、実際には行ったことがない場所のことを歌っているといわれます。
行ったことがないからこそ憧れを歌にするということであり、行ったことがないからこそ、それが豊かな幻想を生み出す……なまじ実際に行ってみたら、なんだこんなものか、とがっかりするかもしれません。
「カントリー・ロード」という歌も、そういう、ある意味では幻想を歌った歌ということなんでしょう。
それゆえに、歌詞のなかに出てくる地名のなかには、実際にはほとんどウェストヴァージニア州と関係ないものが含まれてしまったりもしているみたいですが、それはそれでいいんです。そこで歌われているのは、あくまでも一つのファンタジー世界であって、現実のウェストヴァージニア州とはまた別物なわけですから。
むしろ、そのことによって「カントリー・ロード」はある種の普遍性を持っているのではないでしょうか。
これがもし、実際に自分の故郷を歌っていたら、どうでしょう。それは、リアルではあるでしょうが、あくまでもその人個人の思い出にしかなりません。地元の人たちが集まって、地元出身者だけがわかるネタで盛り上がるみたいな話になるでしょう(別にそれが悪いといってるわけではありません)。

映画『耳をすませば』に使われている日本語版では、「カントリーロード」は、もう帰ることのできない道です。
それは、もう子供の頃の“ファンタジー”の世界には戻れない、戻らないという決別宣言であり、そういう意味で映画のテーマにもつながっていきます。
なにもかもが温かった世界……それは、人が心の中に持つ“幻想”の原風景です。
「カントリーロード」という歌は、幻想としての故郷を描くことによって、そういう普遍性を持ち得ているのではないでしょうか。