ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

Judas Priest - Johnny B. Goode

2020-08-01 20:05:36 | 音楽批評


今日は、音楽記事です。

今回とりあげるのは……なんと、Judas Priest。

最近またメタル方面に傾いてきているのでその流れということですが、ジューダス・プリーストは、前回とりあげたアイアン・メイデンと少なからぬ因縁もあります。

以前このブログではスラッシュメタル四天王の記事を書いてましたが……じつは、イギリスにもUK版BIG4といわれるものが存在しています。
その4つとは、アイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、ブラック・サバス、モーターヘッド。
アメリカ版に負けず劣らず強烈な面子です。
それぞれに音楽性がかなり違っていて、ひとまとめにするのをためらう部分もあるんですが、そのなかにあって、メイデンとジューダスは比較的立ち位置が近く、ライバル的な存在といえるでしょう。
活躍し始めたのはジューダスのほうが先で、メイデンが前座についたりしたこともありましたが、全盛期には互角の存在になっていたようです。



ジューダスは、ヘビーメタルの世界では草分け的な位置づけにある存在です。
結成されたのは1969年。もう半世紀以上活動していて、老舗といえるでしょう。

UK版BIG4は、メタルの枠を超えた存在が多いように思うんですが、ジューダスは逆に、これでもかというコテコテのメタルで、むしろヘヴィメタルというもののイメージを確立させたバンドともいえるんじゃないでしょうか。鋲つきの革ジャンを着てハーレーに乗っているという、北斗の拳的な“ヘビメタ”のイメージは、ここに源流があるようです。



こちらは、Ram It Down というアルバム。

代表作の一つ Painkiller の一つ前の作品です。

ぱっとしない成績に終わったものの、気合の感じられるアルバムになっています。
たとえばHeavy Metal という曲が収録されているんですが、このタイトルはそうそうつけられるものじゃないでしょう。ツェッペリンが Rock'n'Roll という曲をやったみたいな感じで、それ相応の自負がなければできないことです。それは、別の収録曲、I’m a Rocker についてもいえます。俺がロッカーだ、と宣言するのも、なかなかなことです。

そして、”自負”という部分をもっとも感じさせるのが、かのJohnny B Goode のカバー。

Judas Priest - Johnny B. Goode (AC3 Stereo)

チャック・ベリーの代表曲であり、不朽のロックスタンダードです。
それをカバーするというのも、自分たちこそが覇者だという自負の表れといえるんじゃないでしょうか。もっとも、その気合が空回りして商業的には失敗ということになったのかもしれませんが……



さて、そのジューダス・プリーストの中心人物が、ボーカルのロブ・ハルフォード。

人呼んで、“メタルゴッド”。

ジューダスの中心というだけでなく、メタル界を代表する不世出のボーカリストいえるでしょう。
意外にも初期メンではなく、途中抜けていた時期もあったりするんですが、それでもやはりジューダスといえばまずロブ・ハルフォードが思い浮かびます。



こちらは、3DCGでつくったロブ・ハルフォード。
ヒゲが黒かった頃のイメージです。ケリー・キングのようにも見えますが、側頭部のタトゥーでロブ・ハルフォードだと認識してください……

ロブ・ハルフォードという人は、こんな感じの強面キャラであるわけですが……彼はゲイをカミングアウトしていることでも知られます。
ゲイのミュージシャンは決して珍しくないでしょうが、ヘビーメタルの世界では結構レアかもしれません。ヘビーメタル自体は、やはりどちらかというと、ゲイに対しては「このオカマ野郎!」みたいな空気ではあると思われます。それはそれで偏見かもしれませんが……しかしロブ・ハルフォードの場合、カミングアウトしたことでビジネス面で支障が出てもいたようです。



最後に、もう一度BIG4の話に戻りましょう。

ロブ・ハルフォードは、かつてUK版BIG4の共演を構想していたそうです。
アメリカのスラッシュメタル四天王がステージで共演を果たしたのに触発され、UKでも同じことができないかと……

ただ、2015年にモーターヘッドのレミー・キルミスターが死去。
ブラックサバスも活動を停止し、この構想は実現不可能となってしまいます。
まあ、オジー・オズボーンのいないブラックサバスはありえても、レミー抜きでのモーターヘッドはありえないでしょう。
そんなわけで、UK版BIG4の共演は果たせぬ夢となったのでした。

ただ、そのなかにあって、以前も書いたようにアイアン・メイデンは健在です。メイデンとの共演はありうるかもしれません。

往時には宿命のライバルだった2組であり、「全盛期には互いを好きではなかったと思う」とロブ・ハルフォードは語っていますが……しかし、因縁をいうなら、メタリカとメガデスだって“和解”したわけです。アイアン・メイデンとジューダス・プリーストの共演というのは、じゅうぶんに可能なことでしょう。メイデンの“エド・フォース・ワン”にジューダスの面々が同乗して世界を飛び回る……そんな未来が、いつかひょっとしたらやってくるかもしれません。