ロック探偵のMY GENERATION

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2023年を振り返る ジャニーズ問題①日本型組織のカルト化傾向

2023-12-21 23:30:31 | 時事



2023年も、いよいよ残りわずかとなってきました。

去年のこの頃は、一年にあったできごとを振り返るという記事をいくつか書きました。今年もその例にならって、この一年のさまざまなできごとについて考えるというのをやっていきたいと思います。

で、今年の大きなニュースといったら何かといったら……ひとつはジャニーズ問題があります。

これまで陰でささやかれながら大っぴらには語れなかった問題が、ついに火を噴き、ジャニーズという看板が消滅する事態に発展しました。

正直ジャニーズそのものに私はさほど関心がありませんが……ただ、この騒動は単に一アイドル事務所の闇というのを超えて、日本という国の闇を垣間見せているようにも思えます。

その一つは、日本型の集団が抱えるカルト化傾向。

これは、統一教会の問題や、最近の宝塚問題なんかにもつながっているような気がします。
こういうと、それぞれから「一緒にするな」という反論が出てくるでしょうが……しかし、程度の差はあれ、これらの問題に共通するのは「外部の目から遮断された場所で内輪のしきたりが暴走していく」ということであり、それがつまりは、集団のカルト化ということではないでしょうか。
もちろんよその国にだってカルト組織は存在するでしょうが、日本型の集団というのはカルト化しやすい傾向を抱えているようにも思えます。
要因はいろいろあると思いますが……たとえばその一つは、以前ちょっと書いた「個の倫理」の欠如。外部の目が届かないところで組織のルールが暴走していくとき「それはおかしい」と異を唱えるには、「個人に内化された普遍的倫理」によるしかありません。それが機能しなければ、暴走は止められないでしょう。
そして、個人よりも集団が優先される日本型集団のあり方もあるでしょう。個人の自立という感覚が弱いがために、個人は集団に己のすべてをゆだね、集団の側もその構成員に絶対忠誠を求め、すべてを捧げさせるという関係が成り立ってしまう。結果、日本型の組織はしばしばプチカルトになってしまう……ということじゃないでしょうか。この観点でみれば、ブラック企業とか高額ホストクラブとかもプチカルトといえます。
では、この問題はいかにして克服されるのか。
それはやはり、自立した個人というあり方を涵養していくしかないと思います。
集団に自分自身を預けてしまわない。組織を己のよりどころにしない。なんの組織に所属していようが、自分自身は自分自身に帰属している、そういう己のあり方です。そのうえで、安易な相対主義に流されない普遍的な価値観という倫理をもつこと……
と、まあこうなると、だいぶ理想主義にはなってきます。
もちろん、すべての人間にそのような強い自己を求めるのは難しいでしょう。これは、割合の問題なのです。集団がカルト化しそうになるときに、それを止められる人間がその集団内に一定の割合で存在していればいいということです。日本の場合、その割合が極端に低いのではないか。そしてそのことが、組織のカルト化傾向を高めているのではないか……ジャニーズ問題をはじめとする今年のいろんなニュースをみていて、そんなことを思いました。

そして、ジャニーズ問題が垣間見せたもう一つの問題は、「マスメディアの沈黙」です。

これについては、またあらためて別の記事で書こうと思います。