前回に引き続き、音楽記事です。
前回はアリス・クーパーでしたが……同じくフランク・ザッパ関連アーティストということで、今回とりあげるのはリトルフィートです。
ザッパのバックバンドであるマザーズ・オブ・インベンションにアリス・クーパーが一時在籍していたという話でしたが、リトルフィートも、このマザーズから派生したバンドといえます。マザーズにいたローウェル・ジョージを中心として作られたバンドなのです。
リトル・フィートは、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャンといわれるようなタイプのバンドです。
一般受けはあまりしないものの、ミュージシャンの間ではリスペクとされているという……
バンド名の feat
というのは、「妙技」といったような意味ですが、「ちょっとした妙技」というのがまさにぴったりなバンドといえるでしょう。
例によって、「今年で50周年を迎える名盤」ということで、『ディクシー・チキン』。
リトルフィートの代表作といえるアルバムです。
元マザーズ組のロイ・エストラーダが脱退し、ケニー・グラッドニーを新ベーシストに迎えて制作したアルバム。
初期のアルバムは商業的にぱっとしませんでしたが、この作品でリトルフィートは注目を集めるようになりました。
その表題曲のライブ動画を以下に載せておきましょう。
Little Feat - Dixie Chicken (Skin It Back)
リトルフィートがミュージシャンたちから受けているリスペクトというのは、そのメンバーたちがほかのアーティストの活動に参加しているところからもうかがうことができます。
たとえば、私の敬愛するジャクソン・ブラウン。
ローウェル・ジョージとビル・ペインは、ジャクソン・ブラウンのアルバム『プリテンダー』に参加しました。
その二人が参加した曲
Your Bright Baby Bules です。
Your Bright Baby Blues
ローウェル・ジョージは代名詞ともいえるスライドギターを弾きつつ、コーラスもやっています。
ビル・ペインは、印象的なオルガン。
リトルフィートとはずいぶん毛並みが違いますが、ギターも鍵盤も、これはこれで聴かせます。
ちなみに、この曲では鍵盤としてピアノも入っていますが、こちらは、ブルース・スプリングスティーンのバックバンド、Eストリートバンドの鍵盤として知られるロイ・ビタン。
この『プリテンダー』というアルバムはとにかく参加アーティストが豪華で、他にもTOTOのジェフ・ポーカロやイーグルスのドン・ヘンリー、このあたりの西海岸人脈つながりでJDサウザー、後にリトルフィートに加入するフレッド・タケット、CSNからデヴィッド・クロスビーとグレアム・ナッシュ……といった錚々たるメンツが集まりました。リトル・フィートの二人も、こうした人たちに劣らぬ豪華ゲストなのです。
このアルバムが発表された3年後の1979年にローウェル・ジョージは死去しますが、その際ジャクソン・ブラウンはボニー・レイットとともに追悼コンサートを主催しました。
こうした経緯をみても、ローウェル・ジョージがいかにリスペクとされていたかがわかります。
もう一つ、別の例としてレッド・ツェッペリンを挙げましょう。
ジミー・ペイジは、最も尊敬するギタリストとして、ローウェル・ジョージの名を挙げています。
また、バンドとしてのツェッペリンも、リズムの面でリトルフィートに大きな影響を受けているといわれます。
そのリズム感がよほどツボなのか、ロバート・プラントはソロ活動でのドラムにヘイワードを起用しました。
ツアーに帯同するだけでなく、レコーディングに参加した作品も多数あります。
そのなかの一曲を載せておきましょう。
Trouble Your Money (2006 Remaster)
ヘイワードは、ほかにもセッションミュージシャンとして多くのアーティストのレコーディングに参加しています。
そのリストには、エリック・クラプトン、ドゥービーズ、ボブ・ディラン、ポール・ロジャーズ、トム・ウェイツ……と錚々たるアーティストの名前が並びます。これもやはり、いかにリトルフィートが大きなリスペクトを受けているかを示しているといえるでしょう。
そのリッチー・ヘイワードですが、2010年に死去しています。
バンドを50年以上もやっていれば、メンバーの死去ということも時には起きてくるわけで……2019年には、ポール・バレアが死去しました。
ローウェル・ジョージ、リッチー・ヘイワード、ポール・バレア……彼ら世を去ったメンバーたちへの敬意を表して、今年リトル・フィートは新たなMVを公開しています。
曲は、Time Loves a Hero。
Time Loves a Hero 2023 (Official Video) - Little Feat
「時は英雄を愛する」――まさに、ミュージシャンたちの尊敬を受けて半世紀以上やってきたバンドにふさわしいといえる曲でしょう。
リトルフィートはまさに、ウェストコーストにおける伝説の英雄なのです。