ロック探偵のMY GENERATION

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『モスラ対ゴジラ』

2020-07-18 20:44:23 | 映画


今回は、映画記事です。

このカテゴリーでは、ゴジラシリーズの作品についてずっと書いていて、最近は平成シリーズの話をしていましたが……前回『ゴジラVSモスラ』の話が出たところで、いったん時代をさかのぼり、昭和の『モスラ対ゴジラ』について書きたいと思います。
モスラは、キングギドラとはまた違った意味でゴジラ最大のライバルといえるでしょう。『モスラ対ゴジラ』は、そのモスラとゴジラが初対決した記念的な作品。この二者の因縁を語るには、はずせない一作なのです。

公開は、1964年。
ゴジラ・シリーズの4作目……ということですが、これはちょっと注釈が必要でしょう。

というのも、この作品は、その企画意図としては『モスラ』の続編であって、「『モスラ』の続編にゴジラが出てきた」という話なのです。タイトルが『ゴジラ対モスラ』ではなく『モスラ対ゴジラ』なのも、そのため。そういう意味では、ゴジラシリーズではなくモスラシリーズとでもいうべきなんですが……ただ、やはりゴジラのほうが東宝代表みたいになっていったので、ゴジラシリーズの一作とみなされています。

その予告動画です。


【公式】「モスラ対ゴジラ」予告 東宝の2大怪獣スター、ゴジラとモスラの初対決を描いたゴジラシリーズの第4作目。

ストーリーは、平成の『ゴジラVSモスラ』と重なる部分もかなりあります。

発見されたモスラの卵を、人間が見世物にしようとする。モスラをカネもうけの道具にしようとしたことで、怒りに触れる――という筋立ては共通しています。
モスラの卵を利用しようとした興行師たちは、インファント島の小美人から抗議を受けると、その小美人たちも見世物にしようとしますが、ここも『ゴジラVSモスラ』と重なります。
結局のところ、この興行師たちはカネをめぐる争いのすえに、殺し合いに発展。カネをもって逃げようとする大物興行師は、ゴジラの襲撃に遭って死亡……やはり、拝金主義批判というテーマがあるのです。

そして、環境問題というモチーフも共通しているでしょう。

この作品のゴジラは、工業地帯を建設しようという干拓地から出現します。

平成の『ゴジラVSモスラ』で最終決戦の舞台となる横浜みなとみらいも干拓地でしたが、もしかすると、そこは平成のスタッフも意識していたのかもしれません。

さらに、『モスラ対ゴジラ』におけるゴジラは、最初に四日市コンビナートを襲撃。
“四日市ぜんそく”で知られるあの四日市です。ここを襲撃するというのも、公害問題を意識していたかもしれません。ただし、この映画が作られた60年代前半には、まだ四日市のぜんそくはそれほど問題になっていなかったようなので、判然とはしませんが……

もう一つ、この作品のテーマとして指摘すべきなのは、ジャーナリズムについて。
本作では、新聞記者たちが主人公となっています。
彼らはペンの力で小美人たちを助けようとしますが、これがなかなか思うようにいきません。新聞には“裁く”力はない、メディアが権力になってしまってはいけない。しかし、いくら世論に訴えたところで、興行師たちの行動を直接止めることはできない、どころか、書けば書くほどむしろ逆にPRとなってしまうのではないか……そういう葛藤が描かれます。これもまた、現代に通じるテーマでしょう。


ここで、話をゴジラのほうに戻しましょう。

四日市コンビナートを破壊したゴジラは、さらに名古屋へ。ここでは、テレビ塔を倒壊させたうえ、名古屋のシンボルである名古屋城を破壊してしまいます。

こうして暴れまわるゴジラを倒すために、主人公たちは、モスラの力を借りるべくインファント島へむかうのです。

そのインファント島は、核実験のために荒廃しています。
かつては緑豊かな島だったのが、核実験の影響で見る影もなく荒れ果ててしまっているのです。岩肌がむき出しになった島は、あちこちに動物の骨が転がり、島民たちも苦しい生活を強いられています。

その島を統べる長老は、モスラの力を貸してほしいという主人公たちの頼みをはじめは拒絶。

「悪魔の火、もてあそんだ報いだ」と、酋長はいいます。

インファント島は、原水爆という「悪魔の火」の実験で大きな被害を受け、「平和な島」から「受難の島」となった。ゴジラもまた核実験によって誕生した怪獣であり、文明社会はその報いを受けている。そんな文明社会を助ける義理はないというわけです。

ここで、核の脅威というゴジラ第一作のテーマが顔をのぞかせます。やはり、モスラが出てくる映画はそういうメッセージ性を帯びるのです。


結論からいえば、モスラは日本にやってきてくれます。

『モスラ対ゴジラ』といっているわけなので、当然といえば当然ですが……主人公たちの誠意に応えて、モスラ(成虫)は来日。そして、そのモスラ成虫と、卵からかえった幼虫たちの力によって、ゴジラは撃退されるのです。

モスラのような頼りない怪獣がゴジラに勝つのはおかしいと思われるかもしれません。
風を吹き付けるとか糸を吐くといった打撃力に乏しい攻撃手段しかもっていないのに……
しかし、じつは、モスラという怪獣はゴジラシリーズ最強ともいうべき力を持っているのです。



昭和期ゴジラでは、ゴジラと戦って勝利した怪獣は、モスラのみ。シリーズ全体で見ても、怪獣同士の戦いでゴジラが敗れる場合は、なんらかのかたちでモスラが関与していることが多いです。
また、別の見方でみると、モスラがゴジラと敵対するかたちで登場した場合、100%モスラが勝っています。驚異の勝率100%を誇る、絶対的Gキラーなのです。

……というよりも、そもそもモスラは負けたことがないですね。無敗です。
モスラは必ず人類の味方の側で登場するので、負けるわけにはいきません。なので、必ず勝利する側にいます。(ただし、モスラ自身は無事ではないということもありますが)
そういう意味では、『モスラ対ゴジラ』は、モスラ不敗神話のはじまりでもあるのです。




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