ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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アマゾンオーディブル、ふたたび聴き放題へ

2022-01-19 21:24:05 | 日記


アマゾンオーディブルが、ふたたび聴き放題制に戻るということです。

アマゾンオーディブルとは、時おりこのブログで名前が出てきますが、音声朗読で本を「聴く」ことができるサービス。
かつては聴き放題だったのがコイン制というシステムに変更されたことは、だいぶ前にこのブログで一度書きました。
そこでも書いたように、コイン制に移行したことで、まあちょっとアクセスしづらくなった面があることは否めません。一か月一コインだけでやっていれば、聴き放題だったときと比べて聴ける量が著しく制限される。さりとて、オーディオブックは普通に買うと価格が高い。事実上聴き放題状態にできる裏技もあるけれど、それもためらわれる……そんなもやもやを抱えたユーザーは多かったでしょう。
私自身も、一時オーディブルを離れていました。最近復旧しましたが、やはりコイン制だと購入に慎重になってしまい、なかなか気軽に楽しめないというところは否めません。
おそらくは、そうしてユーザー離れ、あるいは新規ユーザーの伸び悩みがあったために、聴き放題制に戻さざるを得なくなったということだと思われます。
まあ、ユーザーとしては喜ばしいことですが、作り手側という立場で考えると複雑な部分もあり……ともかく、今回こういう展開にいたったということは、やはりオーディオブックという媒体はまだまだ発展途上なのでしょう。読書文化の裾野を広げるという意味では大きな可能性をもっていると思うので、頑張ってもらいたいところではありますが……



南こうせつ「愛する人へ」

2022-01-16 22:00:21 | 音楽批評



今回は、音楽記事です。

今日とりあげるのは、南こうせつさんの「愛する人へ」。

いつもながらの数珠つなぎ方式で、最近音楽関連のいくつかの記事で書いていたことからのつながりです。

直接的には、ちょっと前の音楽記事で出てきた伊勢正三さん。
いうまでもなく、こうせつさんと伊勢正三さんとはともにかぐや姫のメンバーでした。

もう一つ、これは私の勝手な印象ですが、この歌は、かぐや姫の「神田川」、あるいは、やはりちょっと前にこのブログで紹介した「上を向いて歩こう」とつながっているように思われるのです。
この二曲は、ともに安保闘争の敗北を背景にしている(「神田川」は70年安保、「上を向いて歩こう」は60年安保)ということを書きましたが、「愛する人へ」はその延長線上にある歌なのではないかと私は思っています。

とりわけ、「神田川」とはかなりダイレクトにつながりがあって、ある種「神田川」へのアンサーソングというか……そんな感じすらしています。

では、「神田川」と「愛する人へ」にはどんなつながりがあるのか。

まず作曲がこうせつさんということが共通しているわけですが……実はもう一つ共通点があって、それは木田高介さんが編曲を手掛けているということ。
木田高介といえば、伝説的なロックバンドJACKSのメンバーであり、日本フォークの草創期を象徴するアングラフォークともつながってくる人です。
これで作詞が喜多條忠さんであれば完璧なんですが……まあ、そこは違います。
「愛する人へ」の詞を書いたのは、岡本おさみさん。
しかしこの方もやはり、60年代フォークの系譜上に位置する人ではあろうと思われます。
この方が作詞した泉谷しげるさんの「義務」という歌を以前紹介しましたが、あの歌にはあきらかに60年代に起こった民衆の政治運動(と呼んでいいかどうかちょっと躊躇するんですが……)の残響がありました。同じ泉谷さんの「黒いカバン」なんかについても、それはいえるでしょう。「黒いカバン」は、強権的・高圧的な警察官を茶化す歌。そこには、私にいわせれば健全な反抗精神があありました。
しかし、その60年代「政治の季節」が過ぎ去った後、そこに何が残されたのか……ということです。
「神田川」は、社会参加の挫折を経て三畳一間に押し込められる若者の姿を描いていました。

「愛する人へ」では、こう歌われます。

  正義はまた空振りさ
  こんなところにも嫌なニュースが聞こえてくる
  街は病気だね
  毒が空を巡ってる

「正義はまた空振りさ」という歌詞に社会運動の挫折が読み込まれていると見るのは、無理な解釈ではないでしょう。
ここでいう「街は病気」「毒」という言葉は、表面上は公害問題のことをいっているようにとれますが、もっと広い意味に解することもできます。
社会に存在する「悪意」というか、若者の素朴な正義感を踏みにじる「世間」というか……それはつまり、あのヘドラの姿です。

その先は、次のように続きます。

  何にもできないから愛の歌を歌っていくよ
  言葉のままに生きて行けたら
  そいつは難しいな
  そいつは苦しすぎるよ

四畳半、あるいは三畳一間に暮していても、嫌なニュースは聞こえてくる。
しかし、それに対して何をする術もない、だから、愛の歌を歌う……学生運動の敗北を経て七十年代を生きる悲痛がここに表現されているんじゃないでしょうか。
コードの展開やオルガンを効果的に使用したアレンジも、その哀切を表現しています。それはニューミュージックの装いであり、そういった部分にも時代の変化を感じますが……しかしそれで、挫折と絶望だけで終わってしまうのではあまりにも悲しい。その挫折の先に、新しい希望のかたちがあってほしい……この国は、今にいたるまでそれを見出すことができていないのかもしれませんが。



オミクロン株、急拡大

2022-01-12 21:18:11 | 時事


 新型コロナ「オミクロン株」の感染が急拡大しています。
 世界では、1週間に1500万人が感染と、過去最多を更新。日本でも、かつてないペースで感染者が増加している状況です。
 この状況を受けて、岸田政権は昨日、新たな対策を発表しました。
 水際対策は当面延長、ワクチンの三回目接種を前倒しし、12歳未満の児童へもワクチン接種を進める――といったものですが、果たしてどうでしょうか。
 正直なところ、これまでと同様、「やらないよりはやったほうがいい」程度のものでしかなく、さほど効果はないようにも思われます。
 水際対策については、もはやオミクロンが国内にすっかりまん延している状態だとしたら、やろうがやるまいが関係ないような……まあ、「やらないよりはやったほうがいい」のでしょうが。
 ワクチンにしても、新型コロナへの対抗策としてさほど有効ではないんじゃないでしょうか。
 ワクチンだけでは対処できないというのは当初からいわれていたことですが、一年あまりかけてワクチンを広く打ってみて、そこははっきりしてきたと思います。はじめにも書きましたが、これだけ接種がいきわたっているなかで、世界の新規感染者数は過去最多を更新していて、日本でもかつてないペースのうなぎのぼりになっているわけです。三回目だ四回目だといっているのも、要は十分な効果が表れていないことの裏返しであって……ワクチンが感染そのものを予防する効果はきわめて限定的であり、結局のところ、現行のワクチンで新型コロナの感染を面で抑えることはできないというのが結論なのではないでしょうか。つまり、ワクチン接種も「やらないよりはやったほうがい」策の一つであって、コロナ対策の切り札にはなりえないと。
 新たな変異株が登場するごとに弱毒化しつつあるようにみえるのがいくらか希望ではありますが……しかし、新型コロナにはまだ当分のあいだ警戒し続けなければならないようです。




『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』

2022-01-09 21:10:21 | アニメ


今回は、ひさびさのアニメ記事です。

とりあげるのは、松本零士先生原作のアニメ『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』です。



なんで唐突にそんなものが出てくるかというと……これは、ちょっと前に書いた記事からのつながりなのです。

今年に入って、本格的なブログ初めということで、太宰治の『右大臣実朝』という小説について書きました。
そこで「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ」という実朝のせりふを紹介したんですが……私がこのセリフを知ったのは、じつは『キャプテン・ハーロック』をとおしてでした。アニメ版の最終回で、この言葉が引用されているのです。


一応説明しておくと、『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』は、先述したとおり松本零士先生の漫画をアニメ化したもの。
タイトル通り、宇宙海賊のキャプテン・ハーロックが主人公で、海賊船アルカディア号を駆って宇宙からの侵略者マゾーンと戦います。原作は未完の作となっていますが、アニメ版は最終的にマゾーンと決着をつけるまでが描かれました。

その第一話が東映アニメのYoutubeチャンネルで公開されています。
Youtubeに飛ばないと視聴できないようですが……

【公式】宇宙海賊キャプテンハーロック 第1話「宇宙にはためく海賊旗」 <1970年代アニメ>

なぜこのアニメに太宰の言葉が引用されているのかというと、これは作品のテーマに深くかかわってきます。

第一話で描かれているように、この作品における未来の地球は、まさに「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ」を体現する状態となっているのです。

物質的には豊かさの頂点に達し、政府が提供する娯楽に満足する民衆――まさに、パンとサーカス。虚栄に溺れ、頽廃し、活力をうしなってしまった地球人は、日々を遊び暮らすことに慣れてしまい、すっかりふやけてしまっています。危機が迫ってきても、見えぬふり、聞こえぬふりをきめこんで、昨日までと同じように遊び暮らすことしか考えていません。

そんななかで、いざ危機が迫ったときそれに立ち向かう力を持っているのは、無法者のハーロックなのです。

ハーロックは、亡き友の遺していった宇宙海賊船アルカディア号で果敢に宇宙からの敵マゾーンと戦います。

そのアルカディア号です。



今回プラモ作りというやつに挑戦してみたんですが……どうにもあまりうまいできではなかったので、大幅に画像加工してます。

 
  友よ 明日のない星となっても君は地球を愛していた
  この星 捨てて行きはしない

と、オープニングテーマでは歌われます。(ただし、テレビでは流されない二番)
まさに、これがしびれるところです。
ハーロックは、堕落しきった地球に絶望していますが、ただ己の信ずるところに従ってマゾーンと戦います。このハーロックという人物が、じつにかっこいい。ゆえに、ハーロックはほかの松本零士作品にもたびたび登場しています。また、最近ゲームの『スーパーロボット大戦』にアルカディア号が参戦したりもしているそうですが、これもやはりハーロックに魅力ゆえでしょう。

天才エンジニア大山トチローの手になるアルカディア号は、無敵です。
未来を失った人類の、最後の希望――
エンディングテーマでは、次のように歌われます。

 きみが気に入ったなら この船に乗れ
 いつかなくした夢がここにだけ生きてる

そして、このアニメでもう一人忘れてならない人物が、有紀螢。
私個人としては、森雪よりも、メーテルよりも、この人が松本零士ヒロインの頂点です。
こちらもやはり、プラモ制作し……画像加工を施しました。



これは、ハーロックの別のプラモについているオマケみたいなものなんですが、まあ、思ったよりも有紀螢感が出ていました。ただ、あの松本零士風美女の雰囲気が十分に再現できるとはいいがたいですが……




ジョージ・ハリスンの名曲を振り返る+α

2022-01-06 21:27:59 | 過去記事

George Harrison - All Things Must Pass

今回は音楽記事です。このカテゴリーでは以前ポール・マッカートニーについて書きました。そこからのビートルズつながりで、今回はジョージ・ハリスンについて書きましょう。ジョージ・ハリスン......


過去記事です。
ジョージ・ハリスンについて書いています。

今回も、プラスアルファとして関連動画をいくつか紹介しましょう。



まず、元記事で言及した曲を。

 I Want to Tell You。
ソロ活動期の、日本でのライブ音源です。ポールがつけた「へんてこなピアノ」もちゃんと再現しているのが律儀というか……

I Want To Tell You (Live In Japan, 1991 / 2004 Mix)



ジョージ追悼コンサートにおける Somethingのパフォーマンス。
ポール・マッカートニーがウクレレ弾き語りで歌い始めるという演出です。

Paul McCartney, Eric Clapton - Something (Live)


While My Guitar Gently weeps。
以前、ジョージ追悼コンサートの動画を紹介しましたが、こちらはそれとは別のロックンロール栄誉の殿堂におけるトリビュート。
プリンス、トム・ペティ、ジェフ・リン、スティーヴ・ウィンウッドという豪華な面子です。

2021 Remaster "While My Guitar Gently Weeps" with Prince, Tom Petty, Jeff Lynne and Steve Winwood



この手の動画でジョージ・ハリスン自身が出ているものはそう多くはないようです。

そのレアななかの一つ、ロックンロール栄誉の殿堂における、I Saw Her Standing Thereの動画を。
以前ポールの記事でも紹介したように、これはジョージの曲ではありませんが……

George Harrison, Bruce Springsteen, Mick Jagger, Bob Dylan and others -- "I Saw Her Standing There"


同じステージにボブ・ディラン、ミック・ジャガー、ブルース・スプリングスティーンとすさまじすぎる面子がそろっており、これはさすがにジョージが埋もれてしまっているといわざるをえません。ディランは後方でギターを弾いているだけであまり目立った動きを見せませんが、これは友人であるジョージへの配慮でしょうか。


せっかくなので、ジョージ自身のソロ曲のMVも一つ。

George Harrison - When We Was Fab

Fabとは、Fab4、すなわちビートルズのことを指しているととるべきでしょう。「俺たちがファブだったころ」というこのタイトルは、過去の栄光にすがっているようにもみえ……まあ、そういうところもあったのかもしれません。



ここからは、カバー曲を。

まずはじめに、オリビア・ニュートンージョンによる What Is Life。

Olivia Newton-John - What Is Life



ニーナ・シモンによる Here Comes the Sun。
ビートルズのジョージ曲といえば、Something と並んでこれが有名でしょう。


Nina Simone - Here Comes the Sun (Audio)



ジョー・ボナマッサによる「タックスマン」。
ロック方面でいうなら、これが私個人としては一番かもしれません。
スティーヴィー・レイ・ヴォーンのカバーも有名で、このバージョンはそっちに近いでしょうか。


Joe Bonamassa - "Taxman" - Live at The Cavern Club


エリック・クラプトンによる「愛はすべての人に」。
この曲は、クラプトンの記事でも紹介しました。彼がこの曲をカバーしたのは、ジョージへの追悼という意味合いでしょう。

Love Comes to Everyone


ビリー・プレストンによる My Sweet Lord。
最近公式MVが公開されて話題となりましたが、ここでは敢えてそっちじゃないほうを。

Billy Preston - My Sweet Lord (Live)