小諸 布引便り

信州の大自然に囲まれて、風を感じ、枝を眺めて、徒然に、社会戯評する日帰り温泉の湯治客です。愛犬の介護が終了しました。

Time for Outrage ! By Stephane Hesselを読む

2011年11月27日 | 書評・絵本
フランス語が、分からないので、英語版の30ページ程の小冊子をアマゾンで、購読した。著者は、1917年生まれの元フランスのナチに対するレジスタンス運動の闘士で、ゲシュタポに、2度に亘り、拘束された後、逃走し、戦後は、外交官として、国連を舞台に、人権活動を支援した経歴で、この著作を93歳で、著している。アウトレージというから、Takeshi Kitanoのバイオレンス・ヤクザ映画ではない。もっとも、そのバイオレンスに対する考え方には、停留では、決して、似て非なるものでも決してない。昨年の暮れに、フランスで、発表されて以来、60万部を突破したというから、その影響力は、特に、若者を中心に、この老闘士の遺言とも言える著作は、侮れない。とりわけ、9.11 以降のテロリズムや、イスラエルによるガザ地区の占領、パレスチナによる抵抗運動への論評は、その年齢に関係無く、考えさせられるものがある。必ずしも、テロリズムによる暴力を許容するものではないし、むしろ、非暴力主義による「希望」を行動の主軸に、置いていることは、著者の究極の理想であった男女平等・反貧困・自由・平等・友愛・人権擁護の立場からすれば、当然の主張であろう。むしろ、否定はしつつも、余りにも巨大な暴力(ナチズムであれ、何であれ)を前にした抵抗運動、「憤り」には、理解が出来るとするところは、多様な文化を許容しようとするフランスのこれまでの移民に対する政策を、垣間見ることが出来る。この辺は、テロリズムに対するアメリカ的な考え方とは、異なり、やはり、アルジェリアの独立運動や対独レジスタンス運動などを、経験したフランスならではの考え方であろうか。又、サルトルの引用では、私達が、60年代の後半に、影響を受けた、「抑圧と非寛容」等のレヴィ・ストロースとの「弁証法的理性批判」、実存主義と構造主義との論争を、想起させるものがある。いずれにせよ、私達の子供の頃、幼い子供心に影響を受けた、当時実在したインドのマハトマ・ガンジーや、ネルーの高い洗練された理想と哲学を有した「非暴力主義的抵抗」を、再び、想い起こさせる。NYでの反貧困・反差別デモ、中東での民主化デモ、を見るにつけても、日本の若者だけではなく、全世代を超えて、この老人の「若く、力強い精神パワー」を、ひとかけらでも、分けて貰いたいものである。To Create is to Resist, To Resist is to Create という最後の章での言葉は、何とも、重いし、又、マス・メディアに対する不信の念と新しいメディア媒体の興隆に対する期待は、興味深い。「連帯を求めて、孤立を恐れず、力及ばずして倒れることを辞さないが,力を尽くさずして挫けることを拒否する。」という言葉が、心の底のどこからか、ふと、溶け出してきた。レジスタンスのきっかけとなる動機とは、Outrageであると。 今や、現代は、まさに、Time for Outrage ! なのであると。「造反有理」である。中国では、一体、どう読まれるのであろうか?フランス映画の「影の軍隊」を、又、見たくなった。
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