seishiroめもらんど

流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

ハコモノ批判?

2009-08-06 | 文化政策
 たまに地方新聞のようなものに目を通す機会があるのだが、これが結構面白かったりする。
 8月5日付の週刊「新宿区新聞」がそうだった。
 この日記では政治がらみの話はしないのが原則だが、お許しいただくとして、そのコラム欄に次の一文があった。

「『アニメの殿堂』?税金の無駄ですね。だけどやめられない。なぜか?官僚が決めているからです。今の与党は官僚のいいなり。だから政権交代が必要です。」野党のある若手候補の演説マニュアルだそうだ。「政権交代」「脱・官僚」を言えば七面倒くさいマニフェストは不要だ。

 国立メディア芸術総合センター構想が、すっかり政争の具になっていることが鮮明に読み取れる。
 青木保文化庁長官は「アニメ・マンガから映像作品や工学的な技術とアートを結びつけるテクノ・アートなどメディア芸術は、その先端性と魅力ある作品で日本が世界に誇る文化芸術である」と言っている。
 そのうえで、アニメ・マンガ分野を継承する人材の問題など難題が多いことを指摘しつつ、創造性と発信性を維持発展させるためには常に対策が必要であり、メディア芸術の中心となるような施設・機能の設置も視野に入れるべきとしているのである。
 しかしながら、『国営のマンガ喫茶』なる言葉の前にそうした理念がすっかり霞んでしまって、まともな議論のできなくなっているのが現状なのである。

 同紙では、閉館された「新宿コマ劇場」跡地の問題がクローズアップされ、地元商店街の会長さんたちや新宿区長の座談会の様子が掲載されている。
 ある商店会長の言葉。
 「コマ劇場が閉鎖されて劇場には文化的な価値や、人を引きつける魔力があることを改めて再認識した。コマ劇場はやはり、歌舞伎町のシンボルだった。採算性から東宝は劇場について消極的だ。だが、私は劇場の雰囲気は大切だと思う。」
 このくだり、なかなかの文化論になっていて全部を引用したいくらい実に面白い。
 歌舞伎町の再生に向けての繁華街のあり方や風俗、文化、ギャンブル論など、さまざまな論点が出席者の議論によって展開されている。

 さて、ちなみにこの新聞が取材対象としている地区は今や最注目の選挙区であり、テレビ報道でも主要な二人の候補者の動向が特集されていた。
 その一方のK氏だが、政府の補正予算について「それこそバラ撒きの典型だ。ハコもの整備に3兆円、基金積み増しに4兆円と、これだけで補正の半分以上を占める」と手厳しい。その「ハコもの」にはメディア芸術総合センターも当然含まれているのだろう。
 だが、コマ劇場跡地問題についてK氏は、「歌舞伎座」をつくるのが一番だと思う、とのこと。
 あれあれ、これも「ハコもの」だとは思うのだが、選挙戦ではややこしいことをつべこべ言わないのが礼儀なのだろう。