NPO「コトバノアトリエ」の代表理事であり、今年3月に「日本中退予防研究所」を設立した山本繁氏の著書「やりたいことがないヤツは社会起業家になれ」(㈱メディアファクトリー)を読んだ。
同書によれば、山本氏が代表を務めるコトバノアトリエでは、これまでニートや元ひきこもり、フリーターの若者の成長や職業的自立支援、コミュニティづくりなどの実現に取り組んできた。
しかし、ニートの若者たちの支援を始めてから、彼らを対症療法的に支援することに限界を感じるようになった。
川で溺れた若者を川下で支援するのではなく、川上で予防するほうが効果的なのではないか、と考えるようになったのである。
そのうえで「何が若者たちを社会的弱者に転落させているのか」について調査したところ、この5年間で65万人にも及ぶ大学・短大・専門学校の中退者が存在し、しかもその6割に及ぶ40万人近い若者がフリーター・無職になっているという結果に行き着く。
社会経済生産性本部が行った調査でも、ニート状態にある若者の3割以上が中退経験者であるそうだ。
ニートやひきこもり、ワーキングプアの「川上」の一つには間違いなく「中退」があり、それらの問題を解決しない限り「川下」の問題が解決することもない、というのが、山本氏が「日本中退予防研究所」を設立する大きな動機づけとなっている。
私が山本氏の存在を知ったのは、氏が、漫画家の卵である若者たちに低廉な家賃で住居を提供し、デビューまでを支援する「トキワ荘プロジェクト」を推進していることが新聞等で報道されたことからだった。
面白いことを始めた人がいるなあと思ったものだが、廃校を活用して演劇の稽古場を提供する「にしすがも創造舎」のような実例や若い美術家にアトリエを提供するといった取り組みのアイデアはあっても、実際に「トキワ荘」を自分の力で再現してしまおうという人が現れるとは思わなかった。
しかも氏はこのプロジェクトをビジネスモデルとして安定的な運営ができるまでに育て上げたのである。今後は漫画家や編集者とのネットワーク作りや育成力の強化にも力を注いで、ソフト面を充実させたいと考えている。
さらには漫画以外の、映画、演劇、音楽、デザイン、ファッション、美術、写真にまでジャンルを広げ、展開することを検討しているとのことである。
これを若い31歳の社会起業家が実践しているのである。その挑戦に心からのエールを送りたい。
興味深いのは、氏の演劇人としての経歴である。
大学生時代、演劇サークルに所属して、学外の劇団「毛皮族」に客演したり、湘南にあった劇団の舞台に出演したりする。
そんなとき、思春期の子どもたちを対象としたユースシアターの仕事を手伝い、様々な問題を抱えた子どもたちが表現することで輝きを放ち始める瞬間に出会う。
「思春期の頃に、何かを表現したり、創作活動をする場を必要としている子どもたちがいる。僕は、自分で表現するよりも、彼らのためにそういった場を作っていく方が向いているのではないかと」氏は思うのだ。
世田谷パブリックシアターでのボランティアスタッフなどを経て、思春期の子どもたちの創作や表現の場を作ろうと考え、演劇ではなく、「文章教室」を開くために設立した団体が「コトバノアトリエ」である。
それがやがて、ニート出身の作家を育てた「神保町小説アカデミー」やニートやひきこもりの若者をインターネットラジオで繋いだ「オールニートニッポン」へと展開していくのだが、すべては失敗と模索を重ねる苦難の道だった。
そんな現在にいたるまでを衒いもなく正直に語るその口調に共感を覚える。
寺山修司がテレビインタビューで語った次のような言葉がある。
「政治というのは、大雑把に社会を変えることができる。でも僕は、演劇というのは生活の隅々まで変えることができると思っているんです」
この言葉に、山本氏はNPOや社会起業家も同じだと思ったそうだ。
私はまだ氏と会ったことはないけれど、いつか何らかの形で一緒に仕事ができればと考えている。その方法、アイデアは無尽蔵にあるだろう。
同書によれば、山本氏が代表を務めるコトバノアトリエでは、これまでニートや元ひきこもり、フリーターの若者の成長や職業的自立支援、コミュニティづくりなどの実現に取り組んできた。
しかし、ニートの若者たちの支援を始めてから、彼らを対症療法的に支援することに限界を感じるようになった。
川で溺れた若者を川下で支援するのではなく、川上で予防するほうが効果的なのではないか、と考えるようになったのである。
そのうえで「何が若者たちを社会的弱者に転落させているのか」について調査したところ、この5年間で65万人にも及ぶ大学・短大・専門学校の中退者が存在し、しかもその6割に及ぶ40万人近い若者がフリーター・無職になっているという結果に行き着く。
社会経済生産性本部が行った調査でも、ニート状態にある若者の3割以上が中退経験者であるそうだ。
ニートやひきこもり、ワーキングプアの「川上」の一つには間違いなく「中退」があり、それらの問題を解決しない限り「川下」の問題が解決することもない、というのが、山本氏が「日本中退予防研究所」を設立する大きな動機づけとなっている。
私が山本氏の存在を知ったのは、氏が、漫画家の卵である若者たちに低廉な家賃で住居を提供し、デビューまでを支援する「トキワ荘プロジェクト」を推進していることが新聞等で報道されたことからだった。
面白いことを始めた人がいるなあと思ったものだが、廃校を活用して演劇の稽古場を提供する「にしすがも創造舎」のような実例や若い美術家にアトリエを提供するといった取り組みのアイデアはあっても、実際に「トキワ荘」を自分の力で再現してしまおうという人が現れるとは思わなかった。
しかも氏はこのプロジェクトをビジネスモデルとして安定的な運営ができるまでに育て上げたのである。今後は漫画家や編集者とのネットワーク作りや育成力の強化にも力を注いで、ソフト面を充実させたいと考えている。
さらには漫画以外の、映画、演劇、音楽、デザイン、ファッション、美術、写真にまでジャンルを広げ、展開することを検討しているとのことである。
これを若い31歳の社会起業家が実践しているのである。その挑戦に心からのエールを送りたい。
興味深いのは、氏の演劇人としての経歴である。
大学生時代、演劇サークルに所属して、学外の劇団「毛皮族」に客演したり、湘南にあった劇団の舞台に出演したりする。
そんなとき、思春期の子どもたちを対象としたユースシアターの仕事を手伝い、様々な問題を抱えた子どもたちが表現することで輝きを放ち始める瞬間に出会う。
「思春期の頃に、何かを表現したり、創作活動をする場を必要としている子どもたちがいる。僕は、自分で表現するよりも、彼らのためにそういった場を作っていく方が向いているのではないかと」氏は思うのだ。
世田谷パブリックシアターでのボランティアスタッフなどを経て、思春期の子どもたちの創作や表現の場を作ろうと考え、演劇ではなく、「文章教室」を開くために設立した団体が「コトバノアトリエ」である。
それがやがて、ニート出身の作家を育てた「神保町小説アカデミー」やニートやひきこもりの若者をインターネットラジオで繋いだ「オールニートニッポン」へと展開していくのだが、すべては失敗と模索を重ねる苦難の道だった。
そんな現在にいたるまでを衒いもなく正直に語るその口調に共感を覚える。
寺山修司がテレビインタビューで語った次のような言葉がある。
「政治というのは、大雑把に社会を変えることができる。でも僕は、演劇というのは生活の隅々まで変えることができると思っているんです」
この言葉に、山本氏はNPOや社会起業家も同じだと思ったそうだ。
私はまだ氏と会ったことはないけれど、いつか何らかの形で一緒に仕事ができればと考えている。その方法、アイデアは無尽蔵にあるだろう。
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