この本を読むまで知らなかったが、日本の刑法には聾唖者(ろうあ
しゃ)に刑事罰を科さない(又は減刑)規定があったそうである。
「瘖唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ軽減ス。」(刑40条)
瘖唖者(いんあしゃ)は聾唖者を差す法律用語であり、先天的又は
幼少期に「耳」と「口」の能力を失った人のことである。
刑40条は、1995(平成7)年の法改正で既に削除されているが、
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今週、精神科の診察で軽い無気力感等を訴えたら、主治医から初めて、
発達障害(自閉症)の二次障害という見立てでの診断を得た。
主治医によると、うつ病を訴える患者のかなりの人々に、「発達」の
問題が関わっているそうである。
発達障害の二次障害は、ハッペという学者が「心の理論の過活動」と
いう言葉で説明をしている。この説明は以前にブログにも書いたが、
私なりの言葉で言い換えてみたい。
自閉症者は、障 . . . 本文を読む
小学校の低学年の頃、新幹線に乗って父の実家に初めて行ったとき、
父に「お兄さん」という人物が存在することに驚きと戸惑いを覚えた。
私にとって父とは、天からひとりで降ってきたような存在感だったのだ。
そのため、「父のきょうだい」という言葉の意味が分からなかった。
「きょうだい」というのは、自分や弟たちのことであり、
私は自分が「父のきょうだい」だと思っていたのである。
父が所有し、父のもとに帰属す . . . 本文を読む
キャスリン・スチュワートの『アスペルガー症候群と非言語性学習障害』(明石書店,2004)によれば、全米人口の約1%(270万人)がNLDであり、男女差はなく、学習障害の子供の10%がNLDだそうである。(NLDはDSMに公式に認定された臨床単位ではない。)
以下は、前掲書(p27~30)からの引用情報である。
NLDの機能不全の主要な分野として、
・情報処理と組織化・系統化スキルの障害
・視 . . . 本文を読む
私は車を運転できない。恐いのである。運転免許は持っている。20年前に会社命令で取らされた口である。だが免許取得後、運転どころか、ほとんど車を動かしたことはない。
何故出来ないかを考えてみると、運転席にすわると、フロントガラス越しに見える外の世界が、ただの映像のように見えて、現実感が持てなくなるのである。仮に人を轢いたとしても、事の重大性に実感がないように感じられるのである。精神医学的に言えば、心 . . . 本文を読む
自閉症論には「心の理論」と呼ばれる用語がある。他者の内心を察知する能力というような意味合いで用いられている。人は普通、相手の身振りや表情などの非言語的な情報、その場の雰囲気などで、他者の内心を推し量るものである。
自閉症スペクトラムにある人々は、「心の理論」がうまく身につかないために、相手の心を掴み損ねてしまうのである。そのために「マインド・ブラインドネス」(バロン=コーエン)とも表される。バ . . . 本文を読む
自閉症者あるいはアスペルガー障害にある人は、「人の心が読めない」とも言われる。
例えば、次の男女の会話を理解できない方はいらっしゃるでしょうか?
女性:私はあなたと別れます。
男性:彼は誰だい?
(サイモン・バロン=コーエン著『自閉症とマインド・ブラインドネス』(青土社)p62 . . . 本文を読む
昨日(5/12)の朝日新聞の投書欄に、アスペルガー障害当事者の方が意見を寄せていた。障害を個性として受け入れる寛容な社会であって欲しい、というものだった。読んでいて少し引っ掛かったのは、「それほど障害を細分化し、「健常者」と区別することが必要でしょうか。」という個所である。
確かに、広汎性発達障害(PDD)、高機能自閉症、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害(症候群)、学習障害(LD)、非言 . . . 本文を読む
一年程前、WAIS-R検査を受けた。
自分のアスペルガー障害を疑い、精神科の主治医に相談した処、
では、WAISをやってみようという話になった。
この検査は成人用の知能検査である。
言語性検査と動作性検査に分かれており、
言語性は、知識・数唱・単語・算数・理解・類似の六つの下位検査、
動作性は、絵画完成・絵画配列・積木模様・組合せ・符号の五つの下位検査から構成されている。
私の検査結果の成績は . . . 本文を読む
自閉症スペクトラムという言葉がある。
アインシュタインは4歳まで言葉を発しなかったというし、
マイクロソフトのビル・ゲイツも軽症のアスペルガー障害であるらしい。
両者はともに成功者ではあるが、自閉症スペクトラムに位置している人物である。
近年、アスペルガー障害(AS)に関心を持ち、関連書籍を渉猟してみた。
ウタ・フリスの『自閉症とアスペルガー症候群』(東京書籍)が一番面白かった。
ハンス・アスペ . . . 本文を読む